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キス  作者: 川木
12/31

考える私

「好きです」


 沙耶のやけにもったいぶった告白に、私はようやく合点がいった。

 なるほど。つまり沙耶は不良の私に憧れてたのか。それで不良なので舐められたら認めてもらえないとか考えてのあの妙な態度からの急変。なるほど、はーー、わかるわけないだろ。


「そうか、なら不良やめない方がよかった?」

「う、ううん。どっちの明菜さんも、好き」


 う、ううん。どうにも、調子がでない。そう明け透けに好きだ何だと言われたことはないし、何より沙耶は顔は可愛い。普段化粧をしないし、芹香たちもほとんどないような程度だ。なのに沙耶はほとんどばっちり決まっていて、そういう可愛さは新鮮だ。まして沙耶は化粧をしてないお風呂上がりや寝起きも十分に可愛い。

 そんな沙耶なので、さすがに照れる。先日思わぬところで好きと言われた時も返事に困ってしまって、聞こえないふりをしたし。


「そ、そう」

「うん……あの、明菜さんは、どう思ってるの?」

「あー…」


 別に私も好きだよと言えばいい。家事ができて顔がよくて、まして最近は態度も可愛いのだから、嫌う要素はない。

 でもなんだか、妙に沙耶が照れて顔をあかくしてるし、段々顔が近づいてきてるし、私も照れくさくなってきた。


「まぁ、沙耶は、いい子だよ」

「…それだけ?」

「か、可愛いし、まぁ、す、好きだよ?」

「ほ、本当に?」

「あ、ああ、うん。沙耶は本当に、欲しかった、理想の妹というか……」

「……ち、違います」

「え?」

「……あ、あたし……明菜さんを、こ、恋人にしたいんです。キスきたいです。この前された時、凄く、ドキドキしました。え、えっちなことも、したい。そういう、好き、なんです」


 思考回路がとまる。

 突然の言葉が脳みそで理解されずに上滑りする。上気した可愛らしい顔をに気をとられて余計に頭が回らなくなる。

 恋人にしたい? キスとかえっちなことも? 恋愛感情だって?


 ………い、意味が、わからない。ええ? おかしくない? いや、女同士だし。ていうか……いや、ううん? …恋人だとどうなるの?


「……」

「……な、なんとか、言って」


 黙っていると、沙耶は涙目になって不安げに上目遣いになって私を見つめてくる。

 なんだかぞくぞくする。今まで怯えられたことはよくあるけど、沙耶みたいに好意でもってこんな目を向けられたのは初めてだ。


「…キス、したいの?」

「へ? あ、えっと…うん」


 恥じらう沙耶が可愛くて、私は笑いながら、沙耶を顎に手をかけて顔をあげさせ、そっとキスをした。

 前にしたただ口をふさぐだけじゃない、別の意味を持つキスだから、妙にドキドキしてしまった。顔にはださないようにして、唇をはなす。


「……」

「あ、明菜さん…」

「いいよ」

「え?」

「恋人とかはわからないけど、キスするくらいなら、いいよ」

「ほ、本当に?」

「…はっきりしない答えでごめん。でも恋人とか、よくわからない。沙耶のことは、好きだけど」

「……じゃあ、とりあえず」

「ん?」

「もう一度、キスして」

「うん」


 おやすいご用とばかりに、私は沙耶にキスをした。本当は結構ドキドキして、夢中になりかけてたのは、秘密。









 自分で自分がわからない、という状態は初めてだ。というか今までは自分のことなんていちいち考えなかった。いいことは嬉しくては悪いことはむかつく。くらいしかなかった。好きか嫌いか二つに一つ。今までそれでなんの問題もなかった。


 だけど今回はそうもいかないだろう。好きは好きなので、とりあえず沙耶の感情を肯定するけど、恋愛感情かと言われるとわからん。キスをするのはイヤではないが、ぶっちゃけると別にキスくらい気にならない。飲み物を飲み回すのとどう違うのか。

 まあ、確かにさっきしたキスは何だかドキドキしたけど。なんだ、意識してるのか?

 うーん……わからん。とりあえず、えろいことすればわかるのだろうか。でも、したことないだけで、本当は私が別に誰とでもできる人なら結論はでない。さすがにそこまでしてしまってから、やっぱなしとは言えないだろうし。


「……」

「…、な、なに?」


 じっと見ていると視線に気づいた沙耶が顔をあかくして、視線を泳がせながら聞いてくる。

 可愛いと思う。素直に。うーん……よし、考えてもわからないし、実験するか。


「沙耶、後片付け終わったら、部屋にきて」

「え、あ、うん」


 沙耶が片付け終わるまでまだ時間はかかる。先にお風呂にはいっておくか。


「明菜さん、お、お待たせ」

「いや、大丈夫。いつも任せて悪いね」

「全然、気にしないで」

「よしよし、こっちおいで、頭撫でてあげる」

「う、うん」


 沙耶は素直に私の隣に座った。頭を撫でるとはずかしそうにはにかむ。可愛い。髪も柔らかい。


「沙耶、質問していい?」

「なに?」

「私のどこが好き?」

「え? えと…び、美人だし、優しいし、格好いいし、大人だし」


 え、誰それ。

 美人はまあ、個人の主観だからおいておくとして、優しい? ……確かに正義の味方ごっこしてたけど、だれてくるまではあくまで喧嘩がしたいがための大義名分のためだし。自分でいうのもなんだけど、精神年齢は小学校で止まってる。

 私って我が儘だし自己中だし、人の気持ち考えんの苦手だし。大人とは程遠いだろ。

 まあ、格好いいはわからなくない。私って結構強かったし。んー、でももう不良やめてるし、格好よさ半減だよね。


「じゃあ、どれくらい好き?」

「えっと、宇宙くらい?」

「……」


 すごい漠然としてて微妙。宇宙って何光年? うーん。


「あ、明菜さん、さっきからなんの質問なの?」

「ん? テスト」

「テスト?」

「沙耶がどれだけ私のこと好きかテスト」

「…合格したらどうなるの?」

「……私も好きになる?」

「頑張る!」


 それは冗談としても、沙耶がどれくらい私を好きなのか気になる。私の何が好きで、どう好きで、どうなって恋愛感情となってるのか知りたい。

 それを知れば、私も恋がなにかわかるかもしれない。















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