出発
4月9日――今日は、俺が盟立館高校に転入する日。晴れ晴れとした天気とは相反し、俺の気分は実に沈んでいた。
(今日から寮生活か……上手くやれるだろうか)
俺は元来、思った事をすぐ口にするタイプだ。その事で人間関係でもよく衝突したりする。なるべく揉めないようにしようとは思っているが、上手くいく気がしない。
「ハッ、今更考えてもしょーがねぇ。ウチに居るよりはマシなんだから気持ち切り替えて行くか!」
ネガティブな思考に喝をいれ、頬をパンパンと叩く。そうして寮生活に必要な荷物をまとめた鞄を肩に掛け、我が家の玄関を勢いよく開け放った。
「うっ、眩しい……」
外に出ると、照りつけるような太陽の光が俺に降り注ぐ。顔をしかめつつ一歩踏み出したその時……。
「京君、僕に黙って行っちゃうんだね~」
背後から間延びした鬱陶しい声が聞こえた。
「……いちいちアンタに言う必要無いだろ、兄貴」
俺がそう返事すると、背後の声の主――兄貴の翔が腕組みをし、玄関の柱にもたれかかりながら俺を見据えていた。相変わらずの胡散臭い笑顔付きだ。
「酷いなぁ、今日から君は寮生活なんだよ?つまり僕とは暫くの間会えないんだよ?もう少し別れを惜しんで欲しいなぁ~僕は京君と離れるなんて例え一時の間の事でも寂しいよ、寂しすぎて胸が張り裂けそうだよ」
兄貴は相変わらずの早口でまくしたてると口元を抑えた。あれで悲しみを表現しているつもりだろうか。
「ハイハイ、茶番はいいから。急ぐし、もう行くからな」
俺は兄貴から視線を外し、もう一歩踏み出そうとした時――
「ちょっと待った」
また兄貴から静止の声が掛かった。
「何だよ、アンタの茶番に付き合ってる暇なんて俺にはねぇよ」
「京君は冷たいなぁー今のは僕の本心なのにさ、まっいいや。コレ持って行って」
そう言って兄貴は小さめの箱を俺に放り投げた。
「うわっ…と、危ねぇ。物投げんなよクソ兄貴が!……つうかコレ何だ?」
兄貴から放られた箱をしげしげと眺める。両手にすっぽりと収まるサイズの箱だ。しかし重量は外見に反して意外と重い。
「それはね、まぁ僕の大事な物。盟立館に行って思い出した時にでも開けてよ」
「大事な物って、今開けちゃダメなのか?」
「今はダメ。あっちで……そうだなぁ、京君が疲れた時にでも開けてみてよ。きっと君を癒やしてくれるさ」
「何だそれ。まぁ分かった。……アンタの大事な物なんだろ?大切にするよ」
そういうと兄貴は満足そうに笑った。
「そういって貰えると助かるよ、ありがとう……やっぱり京君はツンデレだね」
「うるせぇ、ツンデレじゃねぇよ、バカ!」
「ハハッ、ゴメンゴメン冗談だよ。もう時間だよね、引き止めてゴメンね」
「別に、じゃあ行ってくる……それと」
「ん?」
一瞬言葉を詰まらせると、兄貴は怪訝な顔で俺を見た。
「……アンタが寂しそうだからしょーがねぇし、たまには電話してやるよ」
俺がそう言うと、兄貴は驚いたように目を見開いて、その後すぐ嬉しそうに目を細めた。
「……ありがとう。電話待ってるからね」
いつもの張り付けた笑みと違う、兄貴の心からの笑顔と言うやつを久し振りに見た気がした。俺はその視線がくすぐったくて、
「……おぅ」
と短い返事を返すのが精一杯だった。
「じゃあ、行ってくる!」
そういって今度こそ我が家を後にする。両手に抱えた小包を鞄に仕舞って、意気揚々と歩き出す。朝から感じていた憂鬱な気分はとうに吹き飛んでいた。
久し振りの投稿です。相変わらずの亀更新ですが、ぼちぼち書き進めて行こうと思います。
誤字脱字等御座いましたら、ご報告して頂けると大変有り難いです(*・ω・)
駄文ですが、もし気に入って頂けましたら幸いです(*´-`)




