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お隣さん



「ベツノセカイってなぁに?」



 数年前、僕が彼女の事情を聞いて、いの一番に上げた台詞がこれだ。



 当時3歳の僕はベツノセカイと言うのは何か美味しいお菓子かだと思っていた。



 因みに、彼女とはお隣さんの子供の事だ。決して女の恋人と言うわけではない。



 彼女と僕はほぼ同時期に生まれたのだが、占い師曰く彼女が生まれた時覇者の星とやらが出たそうだ。



 その占い師さんは年に一度、僕らの村の畑が豊作か凶作を占いに来てくれる。父さんが言うに良く当たるようだ。



 占い師はついでにその年に生まれた赤ん坊の運勢も見てくれるらしく、僕と彼女も見てもらった。



 スヤスヤと天使のように眠る彼女を抱いて、この子は世界を変える運命にある、


と占い師は酷く真面目な顔で言ったそうだ。


 僕はと言うと、この子は幸薄く、あんまり苦労は報われないだろうが最後の最後に幸せになると渋い顔で予言された。



 生まれたてホヤホヤな赤ん坊に対してその予言酷くない? 最後の最後に幸せになるってそれまでは不幸って事? 人生始まったばっかりなのに………



 悲しい事にその予言は当たってると僕は思う。



 お隣である僕は毎度彼女と比べられてきた。



 例えば、



 彼女は文字の読み書きをなんと3歳でマスターしたのだが、僕は7歳になって漸く追いついた。




 本来なら文字が読めるだけでも大きなステータスになるのだが、優秀な彼女と比べると僕は大分見劣りするらしい。


 他にも、僕の村では毎年武闘大会が開かれるのだが、下は五歳から上は五十歳まで幅広く


 尚且つ子供にも容赦ない大人げない大人がいる。



 にも関わらず、彼女は初出場からいきなり上位入賞、周りの大人達を驚かせた。来年には優勝するのではと噂されている。



 僕はというと、初戦から彼女にあたりボコボコにされた。



 泣いても容赦なく攻撃してくる彼女は悪魔だと思う。



 そんなこんなで、僕はよく彼女と比べられて馬鹿にされるのだが、そんなのはマシな事である。だって害ないし。


 最悪なのは、彼女の厄介事に巻き込まれる事だ。



 僕の他にも彼女と年齢が近い子供は沢山いたが、やはりお隣さんパワーで僕と彼女はセットにされる。



 それはいいのだが、問題は彼女の性格である。



 大人になればきっと美人になると言われる容姿と対照的に彼女は非常に男らしく短気だった。



 その結果、彼女の実力を妬む若者達(笑)に喧嘩を売られたりした。



 そして、何故か僕まで喧嘩をするはめになったりする。



 男は女を守るものだから一緒に来いと言う理屈らしい。(その理屈は若者達に説いて欲しかった)



 余談だが、彼女との喧嘩に負けた彼らが、翌週僕を人質にして彼女に卑劣な罠(誇張)を仕掛けたこともあった。



 勿論、彼女は彼らの卑怯な手段に屈せず若者達をギタギタにした………僕ごと。



 他にも村の大人が、魔法使いや神様の存在について話をしていたる時も彼女は、



「何、そのファンタジー?」


 と言って存在を全否定していた。



 ファンタジーってなんだか分からないけど、

 神様を信じないって凄いな~と当時は思っていたが、

 今考えると相当罰当たりである。



  まぁ、それを聞いた彼女の両親に当然の様に怒られたのだから、罰はちゃんとあたったと思う。



 けど、なんで僕まで怒られるのだろうか。



 この様に僕の人生は、この超人的な彼女に振り回されている。



 そんな彼女に僕はある日聞いたのだ。



 なんでそんなに何でもできるの? と、


 今思えば馬鹿な質問をしたものだ。それは鳥に何故空を翔べるか聞いたようなものだ。



 出来るものは出来る、それに説明は不用だ。



 そんな恥ずかしい質問に、彼女は一瞬ポカンとしたものの、笑ってこう答えた。



「私はね、多分異世界から来たの」



 そして、冒頭のセリフとなる。



 他にもウマレカワリだとか、ニポンとか言っていたがチンプンカンプンだ。


 そしてその同時に、彼女の全てを理解する事など、平凡な僕には一生掛かっても不可能だと悟った。



 分かんない、と言った僕に彼女が悲しそうな瞳をしたのが酷く印象的だった。



 文武両道、天から二物を与えられた女の子、天才、神童………



 彼女の名前の頭に様々な呼ばれ方があるが、僕にはたった一つの形容詞で十分だ。



 お隣さん―――



 これが、それ以上でも以下でもない僕らの関係だ。


これは、僕とお隣さんの朗らかで慎ましやかな物語だったらいいなぁである。



 

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