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EP 6

「……やれやれ、朝から賑やかだな」

俺はルナミスキングのテラス席で、新メニューの『ゴールデン人参パンケーキ』を突っついていた。

だが、のどかな朝の空気は、地響きと共に現れた三つの軍勢によって切り裂かれた。

北からは、重厚な鎧に身を包んだルナミス帝国の騎士団。

南からは、禍々しい魔力を放つワイズ皇国の魔導兵士。

東からは、野性味溢れるレオンハート獣人王国の騎獣部隊。

三国の徴税官たちが、武装した護衛を引き連れてポポロ村の広場に集結していた。彼らの目的は一つ。この村に突如として現れた「富」――すなわち、俺の財布だ。

「この村の管理権は、歴史的に我がルナミス帝国にある! 謎の魔導建築ルナキンおよび貴金属はすべて没収、未納の税として徴収する!」

「笑わせるな、人間風情が。この地は魔王ラスティア様が睨みを利かせるワイズ皇国の版図。魔石の反応がある資産はすべて我らのものだ」

「ガタガタうるせぇ! 力が強い方が獲る。それが獣人の掟だ。あのウサギ(キャルル)ごと、この村を買い叩いてやるよ!」

広場の中央で、キャルルがダブルトンファーを握りしめ、全身から青白い闘気を噴き出させていた。

「……ふざけないで。ここは三国の緩衝地帯、どこにも属さない平和な村よ。力ずくで奪おうって言うなら、私の『流星脚』で全員まとめて宇宙そらまで蹴り飛ばしてあげるわ!」

「おっと、キャルル。物騒な真似はやめろって」

俺は飲みかけのメロンソーダを置き、あくびをしながら割って入った。

「なんだ貴様は! 部外者は下がっていろ!」

ルナミスの徴税官――金ぴかの鎧を着た、いかにも小物そうな男が剣を突きつけてくる。

「部外者? いや、俺はこの村の『オーナー』だよ。……さて、税金だったな。お前らの国、いま財政難なんだろ?」

俺は視界の端で【マーケット】を高速検索した。

【お買い物リスト:国家買収編】

ルナミス帝国発行・長期国債(全発行分):購入価格 8兆円

ワイズ皇国・魔導予算不足分補填&王宮修繕費:購入価格 5兆円

レオンハート獣人王国・全兵士の未払い給与代行:購入価格 3兆円

「……ポチっとな」

確定ボタンを三連打。

その瞬間、徴税官たちが持っていた魔導通信石が一斉に、悲鳴のような音を立てて光り出した。

「な、なんだ!? 皇帝陛下から緊急連絡!? ……えっ? 我が国の国債が……たった一人の個人によって買い占められた!? 我が国は、実質的にその者の『私有地』になっただとぉ!?」

「こ、こちらもだ! 魔王様から……『今月からお前の給料は、そこの男から振り込まれる。失礼のないように』との神託が……!?」

「俺たちの給料……さっき、三倍に増えて口座に振り込まれてるぞ!? 雇い主の名前は……タナカ・ケンジ……!?」

徴税官たちの顔から、さーっと血の気が引いていく。

さっきまで剣を向けていた俺が、今この瞬間から、彼らの国の「オーナー(雇い主)」に変わったのだ。

「お、オーナー様……! いや、大株主様!? 失礼いたしましたぁ!!」

金ぴか鎧の徴税官が、マッハの速さで土下座を決める。他の二国の代表も、武器を投げ捨てて地面に額を擦り付けた。

「分かればいいんだよ。税金なら、俺が直接それぞれの王に『一〇〇年分先払い』しておいたから。……で、お前ら。せっかく来たんだ。手ぶらで帰すのもなんだし、仕事バイトしていけよ」

「は、はいっ! 何なりと仰せ付けください!」

「ちょうど、ルナが魔法の練習で壊した家屋の修繕と、マンドラの捕獲作業が溜まっててさ。……あ、リーザ。お前、こいつらの監督役やってこい」

「えっ! 私が、この強そうな人たちのボスですかぁ!? いいんですか、ケンジさん!」

リーザが、鼻に五円玉を詰めたまま(まだ詰まってたのか)、偉そうに胸を張る。

「おい、お前ら! 私の歌に手拍子しない奴は、給料天引きですからね! 五円! 五円! 御縁! ハイ!」

「「「ハイ!! お嬢様!!」」」

三国の精鋭兵たちが、涙目で人魚のアイドルのバックダンサーをしながら、村の掃除を開始した。

「……ケンジ。あんた、本当に無茶苦茶ね」

キャルルがトンファーを収め、呆れ半分、感心半分といった溜息を吐く。

「金で買えないものはないって言ったろ。……さて、キャルル。お前も働き通しで疲れてるだろ。ルナキンに『一時間一〇〇万円の貸切サウナ』を追加しといた。ルナと一緒に、ゆっくりしてこいよ」

「一〇〇万のサウナ……? ……ふん、あんたの奢りなら、入ってあげないこともないわ」

耳を赤くしてそっぽを向くキャルル。

だが、そんな平和な光景を、はるか上空から見下ろす巨大な影があった。

俺が買い取った『天上都市アヴァロン』のレーダーが、異常な熱源を感知する。

「……おいおい、今度はなんだ? 『はぐれ飛竜ワイバーン』の大群か」

空を埋め尽くす黒い影。

それは、三国の徴税官すら恐れて近づかなかった、この地域最大の脅威だった。

俺は飲み干したメロンソーダのストローを噛み締め、不敵に笑った。

「ちょうどいい。一億課金した『対空魔光砲』、初撃ちの相手が必要だったんだ」

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