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EP 11

「……暑苦しいな。ここは地獄の入り口か?」

俺は、最高級魔法リムジンの窓から外を眺めて呟いた。

目の前に広がるのは、マンルシア大陸の地下深くに築かれた鋼鉄の要塞――地下帝国ドンガン。

無数の煙突から黒煙が上がり、至る所でハンマーが鉄を叩く音が響いている。ここは、世界中の戦争に武具を売り捌く「死の商人」ドワーフたちの本拠地だ。

「ケンジ様、ここが大陸最高の鍛冶技術を誇るドワーフの国です。……ですが、彼らは極めて排他的。特に人間を『ひ弱な金貸し』と見下す傾向にありますな」

ヴォルフガングが、熱風でネクタイが歪まぬよう整えながら説明する。

リムジンが帝国の正門に到着すると、髭を蓄えた屈強なドワーフ兵たちが、巨大な戦斧を構えて立ち塞がった。

「止まれ、人間! ここは戦士と職人の国だ。金と贅沢に溺れた軟弱者が来る場所じゃねぇ。帰ってママのミルクでも飲んでな!」

「失礼な! ケンジさんはミルクじゃなくて、ルナキンのメロンソーダが好きなのよ!」

リーザが窓から身を乗り出して反論するが、説得力はゼロだ。

俺は溜息をつき、車を降りてドワーフの王――ドンガン三世の謁見の間へと向かった。

「……ほう、貴様が噂の成金か」

玉座に座るドンガン三世は、黄金の髭を震わせて俺を睨みつけた。

彼の背後には、一本で小国を滅ぼせると豪語する『魔剣ドラゴン・スレイヤー』が並んでいる。

「この魔剣は一本一〇億円だ。貴様のような人間に扱える代物ではないが……どうしても欲しいというなら、跪いて三回回ってワンと鳴けば売ってやらんこともないぞ? ガハハハ!」

ドワーフたちが一斉に嘲笑の声を上げる。

キャルルがトンファーを握りしめ、闘気を爆発させようとしたが、俺は片手で彼女を制した。

「いや、剣なんていらないよ。振るの疲れるし。……それより、ここに来たのは『湯』の相談だ」

「……湯だぁ?」

「この地下帝国には、伝説の『大火竜山の湯』があるんだろ? 源泉は最高だが、配管がボロボロで温度調節もクソもない。俺の究極リゾートには、ここの源泉が必要なんだ。だから――」

俺は、ショップの【インフラ・買収】カテゴリーを全速力でスクロールした。

「――この国の『下水道』と『熱源管理システム』、ついでに『全ドワーフの労働組合』を丸ごと買い取る」

【本日のお買い物リスト:地底サウナ革命編】

地下帝国ドンガン・全水道&魔力パイプライン所有権:購入価格 2兆円

最新式・全自動温度管理サウナシステム(ロウリュ機能付き):購入価格 5,000億円

ドワーフ国債・全額一括返済&利権取得:購入価格 3兆円

「ポチっとな」

俺が確定ボタンをタップした瞬間。

ドワーフ王の足元から、地響きのような音が鳴り響いた。

彼らが何千年も守ってきた「伝統の鍛冶場」の火が、一瞬にしてブルーのスタイリッシュな魔導炎へと切り替わり、ボロボロだった配管が最新式のチタン合金製へと再構築されていく。

「な、なんだ!? 我が国の誇る大溶鉱炉が……勝手に『全自動ジャグジー』に改造されていく!? それに、この手元の魔導書状は……なっ、『国債完済。本日より全ドワーフは田中リゾートの専属配管工とする』だとぉ!?」

ドワーフ王が玉座から転げ落ちる。

そこへ、アヴァロンから転送された「特製サウナハット」と「ヴィヒタ(白樺の枝)」を手にしたヴォルフガングが歩み寄った。

「ドンガン王。もはや貴殿らは死の商人ではない。今日からは、ケンジ様のために最高の“整い”を提供する、リゾートスタッフでございます」

「バ、バカな……! ワシら誇り高きドワーフが、サウナの番人など……」

「……あ、これ気持ちいいですぅ!」

背後の広場では、すでに最新式サウナを体験した女ドワーフたちが、頬を赤くしてタオル一枚で「整って」いた。

「王様! 武具を打つより、アロマを仰ぐ方がよっぽど楽しいです! お給料も日本円で三倍になりましたし、福利厚生でドリンクバー無料券も貰えました!」

「……な、何だと? 三倍……? ドリンクバー……?」

ドンガン王の髭がピクピクと震える。

彼は、俺が差し出した『ルナキン・プレミアムドリンクバー・パスポート』を震える手で受け取り……。

「……整ったぁぁぁぁぁ!! 今日からワシは、熱波師・ドンガンとして生きていくぞぉ!!」

こうして、地下帝国ドンガンは「死の武器工場」から「世界最高のスパ・センター」へと生まれ変わった。

俺はアヴァロンと地底を繋ぐ『超高速・真空リニア・エレベーター』を三兆円で開通させ、一瞬で温泉へ通える環境を構築した。

「ふぅ……サウナの後のメロンソーダは最高だな」

「ケンジさん、次はマッサージチェアを五万台くらい並べましょうよぉ!」

リゾート計画は着々と進む。

だが、その快適な「ぬるま湯」を凍りつかせるような影が、世界樹の森から忍び寄っていた。

「……ルナ、いつまでそんな男の元にいるのです。森が、お前を呼んでいますよ」

世界樹の意思を代行する、冷酷なエルフの長老たちが、ついに動き出す。

ヤンデレ世界樹の暴走。

俺は、植物相手にどう金を払えばいいんだ?

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