第9話
れいが悪阻に襲われている。アキが背中を摩っている。父上はオロオロしている。私は弟の栄二を抱っこしている。
栄二も難儀だと思う。齢0才にして義理の子供がいるのだから。まだ産まれてないけど。
「れいは大丈夫ですか?」
深谷さんはれいを気遣って度々来てくれる。
「ああ、悪阻なんですか。確か柑橘類がいいと同僚から聞いたので、ミカンなど柑橘類を見繕って持ってきました」
「あらあら、れいさん。みかんとか食べられそうですか?」
「爽やかな香りとか落ち着くわ。食べれらるかはわからないけど」
結局、柑橘類を食べる事は出来た。とにかく今は食べられるものを口にした方がいいらしい。アキがそう言ってた。
数か月後にれいは女の子を出産した。
「まぁ、れいさんに似てさぞかし美しく成長しそうなお顔立ち!」
私にはシワシワにしか見えないのに、アキには何が見えているの?
「そうか。それは将来が楽しみだな。あの小僧に似た男の子とかじゃなくて良かった」
うちの遺伝子強いんだろうか?特に母上!
父上は溺愛し、店から玩具をいっぱい持ってきた。
「こっちは舶来品でなぁ?これは国産だけど限定品なんだ」
「父上、まだ何もわかりませんよ?栄二だって与えて玩具をヨダレまみれにしてるじゃないですか!」
「それとは別腹だ」
「あ、舶来品と言えば舶来品の人形を与えるのは止めて下さいね」
私は舶来品の人形が夢に出てきて、怖かった。大量の舶来品の人形に襲われる夢。れいは何でもないみたいだけどさぁ。私は怖いよ。
栄二はヨダレまみれにした後、使用人がせっせと拭いていることを知らないんだろうなぁ。その後また口に入れてもいい消毒液で消毒してるんだけど。
「ところで深谷将校!私の事は越前屋殿じゃなくて、義父と呼んでほしいなぁ」
「いや、しかしまだれいさんと結婚したわけでもありませんし。烏滸がましいです」
「謙虚だなぁ。南郷元帥も義父と呼んでほしいなぁ」
「元帥閣下に直接言ってください!義父上。これでよろしいですか?あぁ、私はれいさんと正式に結婚できるだろうか?」
「できるだろう?」
「軽く仰らないで下さいよ~。まだ求婚もしてないというのに!」
「そうだったのか…。無理強いをしてしまったな」
などと父上と深谷さんの間で話されていたなど思いもよらなかった。
「良一さんが正式にうちに来たいと話がありました」
「うちならいつでもいいぞ」
父上、いつ仕事をしているのですか?子供の玩具を手にして言ってもなんだか威厳みたいなものがありません。
そういうわけで、良一さんが休みの日にうちに来ました。
「お嬢さんと結婚させてください!」
「いいよ~」
父上、軽いです。実に軽いです!
「いやぁ、南郷元帥にも義父って呼んで欲しかったんだよね」
「深谷将校は既に義父と呼んでいるのですか?」
「求婚もまだって人間に無茶を言ってしまったよ。反省しなければ。れいは求婚を断らないと思うけどね」
確率が100%と99%じゃ、全然違うのですよ!
父の威厳……。




