ショートショートの謎
わたしは、あるショートショート作家の大ファンだった。
残念ながら、その作家は六十代半ばで亡くなった。
わたしの友人が、その作家の弟子であり、あとを継いで月刊誌にショートショートを連載していたので、わたしは愛読していた。
だが、毎月読んでいるうちに、少し変なことに気づいた。
ひねりが効いていると思ったら、翌月はあまりひねりが効いていないのだ。
ところが、次の号ではまたひねりが効いている。
まるでそれが、毎回繰り返されているようだった。
わたしは出版社に問い合わせたが、「そういう質問にはお答えできません」と電話を切られてしまった。
その友人も八十歳を超えて、病気で入院した。
わたしは見舞いに行った。
「おい、大丈夫か?」
「おれはもう駄目だ。末期がんなんだ。もうすぐICUに入る。お前と話すのもこれが最後になるだろう」
わたしは衝撃を受けたが、面会時間は限られている。
わたしはひとつだけ、どうしても聞きたかった。
「なぜ、お前のショートショートは、ひねりが効いたのと効いてないのが毎月交互なんだ?」
「おれの師匠はな、出版社の社長にコブラツイストをかけてもらっていたんだ。だから、ひねりが効いていたんだよ」
「へえ、そういうものなのか」
「でも師匠は腰の骨を折って死んじまった。それで社長は、弟子の俺には左右交互にコブラツイストをかけたんだ。でも、どうしても左右では力の入り具合が違うだろ?」
たしかに、わたしも遊びでコブラツイストをかけたことはあるが、左右にかけ分けたことはなかった。
プロレスラーだって、そんなことはあまりしない。
「だから、俺は腰の骨を折らずにすんだが、ひねりが効いたのと効いてないのが交互だったんだ」




