超新星爆発
ワープ航法とは何か!?
それは、ワープドライブを搭載した航宙艦と、その周囲を取り巻く宙域、またはその空間そのものを丸ごと前方へと押し出し・・スライドさせていく移動方法である。
航宙艦ではなく、その空間自体を移動させるため・・光の速度という制約をうけることなく、それ以上の驚異的な速度が可能となった。
そう、この航法こそ・・恒星間文明を支える技術であり・・銀河文明の象徴なのだ。
しかし、この技術には重大なリスクが潜んでいた。
周囲の空間に高重力の存在や、時空変動などが発生した場合、ワープ空間を保てなくなる。
しかも、それだけではない。
その航宙艦の船体構造に重大なダメージ、または破壊してしまう危険性もはらんでいたのだ。
そして、現在・・その危険な状態が現実となっている。
そう、あのガス惑星を破壊してしまうほどの超新星爆発が発生し、時空を大きく乱しているのだ。
さらに、高温圧と衝撃波が周辺宙域に広がり、既に5隻の航宙艦がその猛威の中で消滅した。
このままでは、この航宙輸送艦"ネェイルン"も破壊されてしまうだろう。
迫り来る破局・・高温圧と衝撃波! 時空も乱れている。
ワープ航法での脱出さえも危険とされていた。
どうすべきか!? 短時間で結論を出さねばならない。
ならば、やるしかない! スヴァルは即座に決断した。
「AI君! ワープの実行だ。危険だがこれしか助かる方法はない!」
『了解』と返答するやいなや・・運用AIは速やかに、ワープ準備に取りかかった。
艦橋内のモニターが一斉に稼働し始め、膨大な数値が次々と浮かび上がる。
ワープする方向は前方宙域・・・そこしか逃げ込める方向がない!
スヴァルは・・艦長席に腰を下ろした。
何もすることはない。運用AIが全てをやってくれる。
「私への了承はいらない。準備が整い次第、即座にワープを実行せよ」
『はい! ワープカウントダウン5秒前・・・4秒前・・・』
強い振動も、鋭い音もない。
ただ、淡々と流れるモニターからのメッセージによって・・ワープ航法に突入したことが分かった。
外部光景を映し出すモニターは・・まだその明るさを保っている。
ワープ航法といっても、いまだ加速中であり光の速度を超えていないからだ。
記憶を失っている私にとって、一応これが初めてのワープ体験であるものの・・・
航宙艦自体に揺れがないので、実感がつかめず、不思議な心地である。
モニターの映像に目を移すと・・異常な表示は見当たらない。
今のところ、順調のようだ。
どうやら"賭け"に勝ったのか!?
スヴァルはとりあえず一息、「ふぅ~」と・・ひと安心したところで、
あの問題のガス惑星が・・内側から破裂するがごとく崩壊・・爆発した。
「なっ・・・!!」
もちろん・・・轟音などしない。宇宙に空気はないからだ。
だが・・多少の揺れは感じた。
この艦の重力安定装置でさえ相殺できなかったということは、かなりの衝撃波だったのだろう。
そう、あの惑星は文字通りの爆散、粉々に砕け散り、虚空へと飛び散っていったのだ。
超新星爆発に匹敵するほどの規模、惑星がまるまる吹き飛ぶ・・大スペクタクル!
だが、その破片たちはいずれ重力によって再び集まり、新たな惑星として蘇るであろう。
・・・とはいえ、あの程度の爆発、酸素と水素の混合程度で惑星が破壊されるなど、絶対にありえない。物理的に不可能。
これは科学というよりも、ファンタジー、疑似科学・・・
そもそも、このガス惑星は恒星ではない。 超新星爆発を起こすなど、本来あり得ないのだ。
艦橋内のモニターから垣間見る壮大な光景・・衝撃波と炎、惑星爆発の圧倒的輝きを見た。
「なぜに!?」という疑問はあるものの、爆散したのだから仕方がない。
もしかすると、あの惑星に浮かぶ謎の浮島・・
そして、その浮島を構成していた希少金属"グラアスピア"がなんらかの原因だったのかもしれない。
"グラアスピア"の影響で核融合が発生した可能性も・・
しかし、それを証明する術はなく、すべてが謎のままだ。
などと・・悠長に考えている暇など、なくなったらしい
艦橋内で響き渡る警告音、モニター画面が赤く点滅し、状況の深刻さを示していた。
『 "倉庫W-4"が消滅しました。隔壁封鎖。消火剤散布中 』
そう、恐れていたことが起きたのだ。
ワープ航行中における時空変動の影響で、船体の一部が吹き飛ばされてしまったのである。
しかし、これは始まりの序曲にすぎない。
この事態に対して、スヴァルはなんの指示も出せていない。いや! 出さない方が良いだろう。
この艦を守る唯一の方法、それは全てをAIに任せることなのだ。
スヴァルは艦長席に深く身を沈め、ある種の覚悟を決めた。・・・そう、なるようにしかならないのだ!
死ぬときは死ぬ! ただそれだけ。
拳を握りしめ・・そして、目を瞑る。
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航宙輸送艦"ネェイルン"は、強力な時空波の影響を受け、ワープ航法はすでに解除されている。
現在、通常の宇宙空間にいるのだ。
問題のガス惑星は、今やはるか遠方・・数十光年彼方に位置していた。
ここは見知らぬ星間空間。静寂と暗闇が広がる中、ほぼ半壊した航宙艦がゆっくりと漂う。
幸いにも艦橋室に被害は及んでいないものの、モニターに映し出される深刻な損害状況を目にし、スヴァルは・・信じられない思いでいた。
一応・・艦内というか、艦橋室の大気だけは保たれている。重力安定装置も正常である。
しかし、ワープドライブエンジンは4基すべて破壊され、倉庫の半分は消失。
この航宙艦の船尾はガラクタと化し、原形すら留めていないのだ。
「もしかして・・私、生きているだけ儲けものなの!?」
スヴァルのその声には・・生き延びた安堵と皮肉な笑いが、微かに混ざっていた。
幸いにも・・"バイオマトン"たちは全て無事、損失0である。
そんなおかげで、この航宙艦の修理作業は彼らのお仕事になっていた。
「ありがたいことだ」
もちろん・・修理内容の詳しい指示などは、運用AIにおまかせしている。
ちなみに、スヴァルは何も手伝うことができない・・・動けないのだ。
そう、この艦艇内で唯一の生存区画は・・この艦橋室のみ
他の区画は真空! 全ての空気は抜けてしまったおり、有機生命体では生きていけない環境となっている。
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航宙輸送艦"ネェイルン"の状況は世間的にいえば大破・・プラズマドライブの破損で自力航行すらできないのだ。
しかも船体後部は・・見るも無残なゴミ?!状態。
外部カメラからの映像によって、スヴァルは・・艦の現状を知り愕然とした。
はたして修理など・・できるのか!? 不安である。
だが・・これは重要なことだ。
運用AIに問いかける必要があるだろう。
『主様、ご安心ください。この艦は輸送艦であり・・修理資材は倉庫に十分あります。時間はかかりますが修理可能です 』
この報告にスヴァルは・・少し安心した。
時間はかかるだろうが・・修理できるのなら"良し"としよう。
しかもこの宙域は・・恒星間空間のど真ん中!
敵などにめったに・・・発見されることはないはずだが・・・逆に言えば、遭難信号をだしても、望み薄ともいえる宙域なのだ。
宇宙は広い・・そして、時間はゆったり流れる。
急ぐ必要はどこにもないだろう。
艦長席に身をゆだね、天井のモニターを見上げる。
そこには・・果てしなく広がる星々の光と輝き・・それらを掴みたくて、私はそっと手を伸ばした。
もちろんのこと、掴み取ることはできない。
だが・・自由は掴み取れた。安全も掴み取れた。
奴隷のような身体・"バイオマトン"を投げ捨て・・"ヴィラルノイド"を手に入れたのだ。
それは人型有機媒体・・長い黒髪の少女の姿、間違いなく人間に戻れたのである。
スヴァルの頬に・・一筋の涙が伝う。
「自由は手に入れた! 命も助かった。さて・・これからどこにいくべきか!?」
そう・・これからの目的である。
ないことはない! いや! あるのだ。私の希望・・願望・・
一応・・自分を奴隷にした"ラアラ解放戦線"への復讐は忘れはしない! ・・のだが、それよりも気になることがある。
それは・・シズク!
この身体"ヴィラルノイド"を手に入れた時から・・興味をいだいていたのである。
ちなみに・・"シズク"とは、かつて地球と呼ばれていた惑星、人類の故郷、人類発祥の地。
今となっては、その場所すら忘れ去られてしまった神代の時代の記憶。
だが・・自分の身体"ヴィラルノイド"は・・その神話時代からやってきたのだ。
ぜひとも、シズクとやらに行ってみなければなるまい。
しかもこの身体に宿る・・オカルト的パワー"ESP"の謎を追求するためにも・・・
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P.S.(追伸)
惑星ナンバー"Pqdmwx@24875-58741-0005"
そう、あの巨大ガス惑星の崩壊、大爆発の瞬間を・・遥か遠方から目撃した者たちがいた。
それは5隻の航宙艦("ラアラ解放戦線")を追尾していた"ルネイス星域聯合"の偵察艦だった。
偵察艦の任務は・・敵のアジト、あるいは秘密基地の所在を突き止めること。
だが、そんな彼らが目にしたのは常識を超えた、想像を絶する光景!
たった一隻の船で・・巨大ガス惑星を破壊した狂気の存在・・・
これが初めて・・・スヴァル(この時点で名前は知られていない)の所業が、世間に広まっていく初めての出来事であった。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




