突破せよ!
所属不明の航宙艦5隻・・おそらくは"ラアラ解放戦線"の連中だろう。
「あれは・・奴らなのか!? 私を奴隷にしていた憎むべき敵ども」
惑星マーズでラアラ解放戦線は壊滅した。だが全滅したわけではない!
少数の残党たちは生き延び・・ここに現れたのだ。
しかも、ある程度の戦力をもって・・・
こんな輸送艦では、まともに戦えないだろう。
ゆえに逃げる!
静かに・・慎重に逃げる。これしかない!
敵の視線が通らぬように、航宙輸送艦"ネェイルン"は、ガス惑星の影を利用しながら、できるだけ、敵から離れようと航行していた。
・・・・のはずなのだが! どうやら敵に、こちらの存在を悟られたらしい。
『主様、相手側からの通信を受けました』
運用AIからの報告に、スヴァルは立ち上がり・・モニターを凝視する。
「わずかな時空変動で・・この艦の存在を嗅ぎ取られたのか!」
なんてこった!・・・胸中に広がるのは重い落胆。
覚悟を決めるべき時・・・いや、違う!
まずは時間を稼がなければなるまい。逃げる時間を・・・
「AI君! とにかく、相手には通信の不具合だと思わせるんだ!」
『了解!』
運用AIによる偽装工作をしている間に、なんらかの策を考えねばならなかった。
幾つかの通信、情報から・・彼らは、やはり"ラアラ解放戦線"であることが判明した。
幸いなことに、相手側は自分たちを味方だと思い込んでいるようだ。
その誤解が、状況を有利に運ぶ鍵になるかもしれない。
ただし・・相手側から繰り返し送ってきているのは、"極秘指令2556"という謎のフレーズ。
その意味は未だ不明のままだ。
もしかすると、一種の暗号通信かもしれない。
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航宙輸送艦"ネェイルン"の広い艦橋に、一人立つのはスヴァル。
音一つない空間で思案を巡らせる。
この艦に乗る人間は自分だけ。相談できる相手などいない。
唯一の頼りといえば、AIのみ・・・
そして、そのAIは相手側からの通信に対し、不具合や通信不良をよそおい対応していた。
淡々とした時間稼ぎをしている。
逃げ切る方法の一つとして・・・光の速度を超えた超時空航法、いわゆるワープで他の恒星系にジャンプする。
だが・・この宙域での超時空航法は、極めて危険な行為であった。
そう、付近には巨大なガス惑星が存在し、その影響で時空が不安定となっている。
さらに、敵側からによる意図的な時空変動攻撃・・・ワープ阻止を企んでいる可能性もあった。
これでは逃げきれない! 逃亡できない!
通常航行能力でも負けている。この大型輸送艦に速度など期待できないからだ。
だからといって・・降伏など考えられない。
再び捕らわれ、奴隷にされるわけにはいかないのだ!
しかも奴らにハッキングを仕掛け・・"ラアラ解放戦線"に大打撃を与えている。
そんなことが知られたら・・間違いなく殺されるよな!
「ふっ・・」
ならば・・戦うしかないのだ!
・・となると武器は!? 兵器は!?
スヴァルは叫びながら問いかける。
「なんでもいいから、倉庫に武器はないのか!?」
その言葉を受け、運用AIは即座に検索を始めた。
倉庫に保管されているものといえば・・
"バイオマトン"たちに、採掘装置、航行用などの各種燃料、食料、日常品、そして希少金属の"グラアスピア"
採掘用の火薬はあるが、宇宙での戦闘では非力だ。
作業用のドローンはあるが戦闘用ではない。
運用AIも・・的確な答えを出せずに困っているようだ。
だが、その時・・スヴァルはモニター越しから見えるあのガス惑星から・・何かしらのヒントを得ることができた。
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ガス惑星の主成分・・・それは水素だ!
そこに酸素という名の調味料を注ぎこんでいく。できるだけたっぷりと・・ね!
そして、火で炙るのだ。美味しくこんがり・・ドカーンと爆破するぐらい。
「ふっふふふ」
この程度では、核融合はおきないであろう。
だが、そのかわりに、派手な爆発になるに違いない。
そう、宇宙に咲き誇る壮大な花火となって・・・明るく染まるはずだ。
しかも、それは奴ら"ラアラ解放戦線"に対しての妨害行為となる。
目くらまし、センサーなどを狂わせ、不調を引き起こし・・動きを封じ込めるのだ。
そして・・その隙を突いて、我らは姿を消し、逃亡を図る。
うまくいけばワープ可能宙域に逃げ込むことも可能だろう。
「よし急げ、準備開始だ! ドローンに酸素生成装置を積めこませよ」
あのガス惑星・・運が良いのか悪いのか!? 大気の10%に水が含まれていたのである。
そう・・水から酸素を生成させて・・火をつける! しかもかなりの酸素量を生成できるだろう。
「これは面白い! 見ものだ。とんでもないことになるだろう」
運用AIの指揮のもと、作業は急ピッチで進行していった。
"バイオマトン"たちは休む間もなく倉庫を駆け回り、作業用ドローンに酸素生成装置を次々と組み込んでいく。
(可哀そうに・・自我がないので、主人が変われども、働かされるのです)
そして、その作業を終えるや否や、ドローンたちは・・また一機、また一機と発艦していく。
そう、それは片道切符・・・彼らが戻ることは、決してないだろう(人間じゃないですからね!)
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




