脱出の奴隷惑星
壁面全体をぐるりと覆う巨大モニターには、外の景色が映し出されていた。
ここは・・・航宙輸送艦"ネェイルン"の艦橋。
そして、いつの間にかw・・・黒髪の少女となってしまっていた私。
見た目は悪くないので "ノープロブレム"なのは良いが・・・以前の身体、鉄の塊"バイオマトン"に比べて、なんとなく動きづらい。
「慣れの問題かもしれないが・・どうしても違和感がなぁぁ」
そんなどうでもよいことを呟いていると・・・この輸送艦の運用AIが声をかけて来た。
『主様の身体スキャンが終了しました。次に、この輸送艦の所有者登録を実行いたします。主様のお名前をお聞かせください。』
あっ・・・・うっ!
そうか、名前が必要だったのだな!
自分の名前ね~
"バイオマトン"に改造される以前の記憶を・・完全に消失しているため・・思い出せない。
そもそも、私に名前なんてあったのか!?
「・・・・・これは困った。良き名前を考えないとね!」
とりあえず・・何かを適当に検索してみるか!
私は新しき身体"ヴィラルノイド"に搭載されている電脳システムに問いかけてみた。
【 〆>> 私の・・この身体の名称を教えてほしい!? >> 】
するとその答えが・・電脳ウインドに表示される。
【 << 製品名・・スヴァルIV号機、商品登録番号082573、製造元・越後屋社中2458 << 】
ここに書かれている・・社中とは製造企業のことだろう。
"2458"と数字が打たれているのは、紀元前に使われていた何らかの暦らしい
そして、私の意識(魂)が乗り移っているという"ヴィラルノイド"機体の名前が・・・
「そうか! スヴァルIVという名前なのだな!」
私にとって、初めて耳にする名称だった。
しかも商品登録番号までついているとは驚き!
どうやら量産型のようだ。大昔の時代には・・流行っていた機体なのかもしれない。
興味が湧き、電脳システムにもう一度尋ねてみた。
【 〆>> スヴァル・・この名前の由来を教えてほしい >> 】
すると即座に返答が返ってくる。
【 << スヴァルとは、かつての地球から見えた散開星団の名前・・古い呼び方ではすばるです。 << 】
「おっおお!」
私は思わず感嘆した。その響きには、遠い星のきらめきを感じる。なんとも素晴らしい名前だ。
よし、決定した。
「私の名前は・・"スヴァル"、この名前でこの艦の所有者登録をしてほしい」
その発言に応じた運用AIは・・・『了解』と短く返答の後、再度の確認を経て了承した。
これで正式に、この航宙輸送艦"ネェイルン"は私・・スヴァルの所有艦となった。
「うん、満足! これでこの船は私のものだ! よしよし計画通り・・・」
なんて呟いた直後、そんな行為を非難するがごとく警告音が鳴り響く。
・・・それは運用AIからの警報であった。
『 主様、5隻の航宙艦がこちらへと向かってきています。フリゲート型4隻に准航型1隻 』
私は驚く・・なんと! しかもこんな時に!
ここは辺境の地、人に知られていないはず・・・ならば
「忌々しきあの連中・・解放戦線が戻って来たのか!?」
『はい、その可能性が高いです。ただし、現時点で彼らはこちらの状況を把握していないでしょう』
運用AIの冷静な返答を受け、私は即座に指示を下す。
やることは一つなのだ。
「逃げるよ! AI君、発進準備に取り掛かれ・・」
・・と発言したものの、一瞬の沈黙・・訂正した。
「いや待て! その前にこの浮島の"バイオマトン"たちを回収しなければ・・・なるまい」
私は勢いよく腕まくりし・・・作業を始めた。
(電脳による作業なので腕まくりする意味はないのだけど・・ね)
まず、彼ら"バイオマトン"たちを効率よく制御するために
この浮島のAIシステムが持つ全ての権限を、航宙輸送艦"ネェイルン"の運用AIに譲渡させることにした。
これによって・・“バイオマトン”たちへの指示は、より容易に、より正確に伝達されることになるだろう。
ついでに・・・不要になったこの浮島のAIシステムは・・きれいさっぱりクリーンアップし、完全に空っぽ状態とする。
その上、念には念を入れ、AIシステムのコンピューターをドカーン!・・・と爆破した(採掘用の火薬使用)
これで、後から来るであろう"解放戦線"の連中に私の情報が洩れる心配はないだろう。
「ふっふふふ」
スヴァルは命じる、かつて自分と同じ存在だった意識(魂)なき"自動人形"たちに・・・
「さぁ 急げ! この輸送艦に乗り込むのだ。新天地に向かうぞ。我らの希望の地へ」
"バイオマトン" たちを全て回収し・・この浮島から"おさらば"しようではないか!
ついでに・・運べる資材も忘れずにな!
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「AI君、時間的に余裕はあるのか!?」
すこし興奮、気持ちの高ぶり!? または焦りとなっている私とは違い・・冷静に状況を報告する運用AIだった(コンピュータ―ですからね)
『 5隻の航宙艦がここに到着するまで、およそ3時間ですが・・相手に気づかれず脱出できる時間はおよそ1時間です 』
「そうか計算・・ありがとう! よし1時間だな! 間に合いそうだ」
鉄の塊" バイオマトン"たちは続々と・・この輸送艦へと乗り込んで行く。
その数は100体ほどになってはいるが・・倉庫の空きスペースにはまだまだ余裕あり。
ついでに・・浮島の資材もできるだけ回収させている。
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かつて私を縛り上げていた悪の元凶が、こちらへと向かってきていた。
しかも敵は5隻の武装航宙艦! 小さくともフリゲート・・間違いなく軍艦なのだ。
それに対して・・こちらはたった一隻の輸送艦でしかない。
勝負にもならない! 逃げの一手だな!
『この航宙輸送艦は非武装といえども多少の武装はしております。上下に電磁砲4門、さらに近接戦闘用のビーム砲が10門搭載しています』
・・・と運用AIは告げてきたが・・これではダメだ。
敵のフリゲート艦の武装は最低でも電磁砲10門は装備しているからである。
それが5隻もいる! 合計50門
戦えば・・間違いなく全てが終わる! 負けてしまう。
さっさと逃げるのが・・もっとも現実的だ。
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『主様、バイオマトンを全て収容しました。準備完了、いつでも発進可能です!』
運用AIの報告に、スヴァルは力強く頷く。そして即座に命じた。
「よし、発進だ! ここから逃げ出すぞ」
航宙輸送艦"ネェイルン"は静かに離陸すると、ガス惑星の濃密な大気にその身を隠した。
敵の索敵範囲外、惑星の裏側へと慎重に航行し、そこから大気圏外・・つまり宇宙空間へと躍り出たのである。
敵の視線から逃れ、惑星の影を縫うように突き進む輸送艦"ネェイルン"。
その加速には、張り詰めた緊張感、そして希望が入り混じっていた。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




