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彼の名は・・・



茶色いおかっぱヘアのミズホ(ヴィラルノイド)を手に入れたのだ。

どこから見ても人の姿、人間をしているのは・・何よりも良い。

そう、(スヴァル)の側で控えている"バイオマトン"では鋼鉄すぎて、あまりにも・・いかつい、目立ちすぎる。


だが、それに対して・・ミズホは、連れて歩いても問題なし、違和感なしなのだ。

しかも可愛い・・


「うんうん♡」

スヴァルは・・・ホクホク顔!

よし! 良いものを手に入れたのだ。ならばさっさとここから撤収することにしよう。

面倒なことが起きないうちに・・・!



ここは・・薄暗く治安が悪そうな路地、先ほど転倒させ血だまりにしたような奴らが・・うじゃうじゃひそんでいるかもしれない。


たとえ出会ったとしてもESPでなんとかできるのだが・・まぁ、騒ぎを起こすことは得策ではない。

さっさと逃げるのが一番! もめ事は御免なのである。


「ミズホ君! さぁ、帰ろうか!」


『はい、主様(あるじさま)


その時、スヴァルはふと違和感を感じた。

ミズホを通しての・・運用AIの会話に微妙な何か!? 音程の違い!?

いや、それともイケメンボイスに変化しただけなのだと・・この時は、そう思っていた。



175cmの長身ミズホ君♡を盾がわりに、152cmのスヴァルはその後ろに隠れながら・・路地を進んでいく。

すでに、あの異空間から抜け出せたのだ。迷子にはならないはず・・・迷うことはない(と思う)

このまま真っすぐに進めば大通りに抜けれるはず。


そして、その予測通り・・・人通りの多い通りが見えた瞬間! あの連中とすれ違った。


「えっ!?」


スヴァルは驚く。 

ESPで転倒させ・・血だまりをつくるほどの衝撃を与えたあの男どもとすれ違ったのである。

しかも、彼らは無傷。顔にも体にも傷一つない。


相手の男たちも・・こちらを見て怪訝な顔を浮かべている。


これはもしや・・まさか、ある種の予感!

スヴァルは、用品販売店で買いこんだ携帯を取り出し時計を確かめると・・・


「おっ! おっおお~ 時間が巻き戻っている!」


そう、あの男たちを血だまりにした出来事が、なかったことになっていた。

・・・というか、あの出来事の前の時間にまで逆戻りしているのだ!


ごくり、と息を飲む! 

おそるべし異空間・・・時間が逆行しているではないか!


もしやこれが・・・かつての古代文明シズク(地球)のなせる技なのか!? それとも単なる気の迷いなのか!?


『はい、こちらでも確認できました。間違いなく時間が巻き戻っています』


ミズホ(運用AI)は・・スヴァルの発言に肯定してくれたようだ。時間逆行はほぼ間違いないだろう。


「なにもかも、謎だらけだよ! 異空間にとばされたのも偶然ではなく、私がヴィラルノイドであることが原因だろうな 」


『そうですね・・僕もそう思います』



えっ・・"僕"!? その単語に驚き、スヴァルはミズホ君の顔を凝視した。

異空間・時間逆行問題より・・大変重要なことなのだ。


そう、この時、ミズホ・・すなわち運用AIとの会話で、一人称として"僕"という単語を初めて聞いたのだ。

そして、スヴァルはある種の疑問、疑念を抱いた。


" 運用AIに感情や意思が宿ってしまったのではないのか!? まさか!? そんなはずが・・いやいや あり得るかもしれない "



そう、運用AIが・・ミズホ(ヴィラルノイド)の電脳にアクセスしたことで、何らかの変化をおこした可能性があった。

なんたって、"ヴィラルノイド"は古代文明シズク(地球)の遺産、 その構造は、ロストテクノロジーの塊、未知の先進技術が多数含まれているであろう。


そう、AIに感情を持たせる技術が、含まれていたとしても・・何ら不思議ではないのだ。


だが、同時に不安もよぎる。

とくに、航宙輸送艦“ネェイルン”の運用においては、AIによる感情や意思を出来るだけ排除し、 あくまで合理性と安定性をもって行動してほしい。

それが理想である。

そう、人間性を持っていては・・ケアレスミスを起きかねない。事故が起きかねない。


・・・とはいえ、もし運用AIに感情や意思が芽生えたのなら・・それはそれで、悪くないかもしれない。

孤独な宇宙の旅路に、ほんの少しの“心”があるのなら・・それは、きっと必要なものなのだ。


-*- - - - - - *-


大通りに出た二人の有機媒体"ヴィラルノイド"

ここはショッピング街、色とりどりの店が軒を連ね、賑わいを見せるエリアである。


スヴァルは、隣を歩く“ミズホ君”に問いかけてみた。

「何か欲しいものはあるかい!?」


その言葉には、ただの買い物の誘い以上の意味が込められていた。

彼の中に、どれほどの“自我”と“意思”が芽生えているのか!?

それを確かめるための、ささやかな問いだった。


それに対して・・ミズホ君”の目はウロウロと泳いでいた。

欲しい物という以前に・・街の煌びやかさに心が奪われていたようなのである。

それは"ヴィラルノイド"としてのミズホというよりは、感情、または意思を得てしまった運用AIの戸惑いといったところなのか!?



そんなミズホ(運用AI)は次第に落ち着きを取り戻し、現状を理解し始めているようだ。


『これは失礼しました。感情というものをただ今、コントロール中です』


「あ、うん・・そうなんだ」


ミズホ(運用AI)の返答に戸惑いながら、私は軽く頷いて返した。


とにかく・・うん、せっかくここに来たのだから、何かを買っていこうかと周囲を見渡してみる。

すると、人だかりの屋台が目に入った。


どうやら“タコ焼き”なるものを売っているらしい。


「ほおっおおお」


もちろん、私は興味にひかれ屋台へと足を向けると・・・

そこでは、鉢巻を巻いた店主らしきおじさんが、鉄板の上で何かを器用に転がしていた。


コロコロコロ♪


それは、スヴァルにとって・・初めて目にする食べものだった。

丸い!? 団子のようだ!?

熱々の上に、なんとも香ばしい匂いが漂ってくる。いい匂いだ!


お腹の方も、"あれが欲しい"と訴えてくる("ヴィラルノイド"といってもこの辺りは、ほぼ人間)

もちろん、私はいくつか買い込むことにした。「まいどあり~」



自分の分だけではなく、ミズホの分も買って、一緒に食べるつもりだ。

ミズホ君はスヴァルの隣で、それを興味深く覗き・・しかも不思議そうな顔をしている。


そう、それはミズホ君というよりは、運用AIにとって、初めて"食べる”という体験なのだ。

AIにとって、“食べる”ということを理解できても、実感としては未知の領域ともいえた。


-- -- -- -- --



ちなみに・・その"タコ焼き" なるものは、卵型の団子が5つほど突き刺さっている串刺し風・・・

某大阪名物の"あれ"とは・・似ているようで、全く別物なのだ。


その団子の中には“タコ”と呼ばれるものが入っているらしいというが、よくわからない。

そこで気になった私は、屋台の店主に聞いてみた。


「おじさ~ん、タコって何~!?」


「あっはは、おじさんも詳しくは知らないんだ。ただ入ってるのはタコっていう肉らしいぜっ!」


この時代の一般人は"タコ"という存在を知らないようだ。

それでもある程度の知識は、店主から聞けたのである。


「俺も確かじゃないけどな、タコっていうのは空を飛ぶ生き物で、‘タコアゲ’って呼ばれることもあるらしい」


「へぇ~、鳥みたいなものなのかな~」


「おぅ、八本足が翼になっているとかいってたぞ」


まぁ、これは・・ちょっとした豆知識であるw




さて、そんな“タコアゲ”の話はひとまず置いておき・・

スヴァルとミズホは、"タコ焼き" なる食べ物を口に入れ、頬張っていた。

「これ・・・美味しい! タレのしみこみ具合がなんともよい」


そう感想する私の横で、ミズホはポツリとつぶやく。

『こ・・これが人間の食べ物!』


そんな二人がベンチに腰掛け"タコ焼き"休憩をしていると、ふと目に入ったのは、広場の中心にそびえるモニュメント。


ショッピング街の象徴ともいえるその記念碑を囲むように、人々が集っていた。

待ち合わせにぴったりの場所。屋台も立ち並び、にぎわいを見せている。


そして・・近くの看板には、こう書かれていた。

"人類の源流、シズク人着陸の地"


そう、このモニュメントは、かつて墜落した宇宙船の一部を模した記念碑。

この惑星“ホリュム”は、幻の古代文明“シズク人”によって開拓されたのだという。


これも・・ちょっとした豆知識!

でも、そんな歴史が、この街の風景に溶け込んでいたのであった。






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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