ノスタルジーな異世界
私と、お供の"バイオマトン"二体でいく・・・魅惑の旅、地下都市“カイロン"訪問
まずは散策、観光というわけで・・市内を一周することにした。
大通りには、けやき並木と街路樹が整然と並び、そのわきに流れる小さな水路には、鯉たちが優雅に泳いでいた。
わずかに古びた建物が立ち並び、街全体にどこか懐かしい風情が漂う。
心がゆったりとするような、そんな光景・・・
「うん、地下都市とは思えないほど・・いいとこだね!」
『はい、本当に驚きです』
"バイオマトン"を通して、運用AIが答える。
しかし! そんな風情の中を、場違いオーラを放つ存在(本人たち)が歩いていた。
黒髪の少女と、その後を追う鋼鉄の二足歩行ロボ。
威圧感すら漂わせながら、街の中心を堂々と進むその姿。
護衛か、荷物持ちか・・どちらにせよ、あまりに異質だった。
そう、ここでは、このような二足歩行ロボは大変珍らしく、街の風景から浮きまくっていたのである。
行き交う人々からは距離をおかれ・・犬には吠えられ・・子供たちは興味津々で後を追いかけてくる(子供はロボットが好きですからね!)
警官から職務質問を受けることもしばしばあったが、身分証を提示するや否や、すぐさま敬礼される始末
これはちょっと、目立ちすぎかと、反省をする。
「ありゃぁぁぁ」
そんなこんなで・・・とりあえず、航宙関連の用品販売店に向かうことにした。
まずは物資の補給が目的だ。
その店は大通りに面した広々とした店舗。
青い山高帽をトレードマークとし、店の外観も一面青色。
銀河全域に展開する有名店だという。
店員とのやり取りは、例によって"バイオマトン"を通じて運用AIが担当している。
店員も驚きのようであった。
まさか鉄の塊のようなロボットと交渉するとは、夢にも思っていなかったのだろう。
一方のスヴァルはというと、そばの席に優雅に腰を下ろし、店員さんから差し出されたジュースを静かにすすりながら状況を眺めていた。
航宙艦の航行は全て運用AIにまかせているので、スヴァルはあまり口をはさめないのだ。
なにやら、大量注文をしているらしい。
各種部品に各種ドローン、燃料に予備部品・・ etc.
分類するのも面倒なくらい、あらゆる資材がリストに書かれていた。
資金については問題ない。
“ホリュム政府”から、十分すぎるほど頂いているのだ(口止め料としてw)
そして、これら注文した資材類は、輸送ドローンによって航宙輸送艦へと届けられるそうだ。
便利なサービスである。
これだけの資材のお持ち帰りは、無理だからね!
その後、精算する際、私の身分証を提示すると、一瞬・・後ずさる仕草!?
この勲章には、そんな破壊力があるのか!?
それとも、私の容姿とのギャップが原因か!?
その場の空気は妙な緊張感に包まれていた。
他の店員が端末を使って何かを調べているようだ。
その視線が私を二度、三度と確認する。おそらく身分証の偽造を疑い、当局に問い合わせたのだろう。
しかし、その結果を知った後、店員の驚きはさらに増しているようだった。
「ふっ、ふふふ」
ちょっと勝ったような気分
スヴァルは・・わりと性格が悪いのだ。
その後、店員たちが一斉に一列に並び、深々と礼をされながら、スヴァルは販売店を後にした。
「本日のご利用、誠にありがとうございました。またのお越しを、スタッフ一同心よりお待ち申し上げております」
仰々しすぎるというかなんというか・・・・居たたまれない気持ちになった。
しかも、この販売店の制服は、派手過ぎるほどの青い服! まるで仮装大会のようだ。
周囲の通行人たちからも・・注目されまくっていた。
「うぬっ!」
-*- - - - - - *-
それにしても、目立ちすぎたかもしれない。
いや、"バイオマトン"を二体連れている時点で、視線を集めるのは仕方ないとして・・・
どうやら何者かに尾行されているようである。
私のESP・直感力がその視線を感じ取っていた。
加えて、"バイオマトン"・運用AIも、すでに状況を察知しているようだ。
視線の主は、販売店を出た直後あたりから、私の背後10メートルほどの距離を保ちながら追尾している。
一体、何者なのか?
“ホリュム政府”の関係者が、スヴァルを監視している可能性もあるだろうが・・・
とはいえ、歩き方、歩数がバラバラなので、訓練を受けた正規の軍人という線は薄い。
それでも、もしプロのスパイや諜報員であるのならば、民間人らしい動きを装う可能性もあった。
・・・・いや! だいたい常識的に考えれば、町のチンピラというのが妥当だろう。
ああいう輩は、どこにでもいるものなのだし・・・スヴァルは、あまりにも目立ちすぎた。
どちらにしろ面倒を起こすわけにはいかない。穏便に立ち去ってもらうのがセオリー!
そう、ESPによる初の実戦! 念動力による足止めを行うつもりだ。
絵画を描く際に鍛えた・・手を触れずに筆を動かした念動力を人に向けて放つ!
戦術としてのESP力を見せてやろうじゃないか! 初めての実戦!
スヴァルは静かに、路地へと入り込む。 わずかな隙間しかない狭い通路。
“バイオマトン”一体が、ぎりぎり入れるほどの幅しかなかった。
そして、その背後を・・視線の主たちが数名・・追ってくる。
足音、影、視線・・
路地に入ってきた彼らの気配など、簡単に察知できた。
どうやら、まっとうな者たちではないようだ。
その風貌、その動き、その目つき。
奴らは、こちらを標的にして動いている。
静かに私は立ち止まり振り返る。そして、指先に念を込めた。
「初めての試し撃ち・・やらしてもらうよ」
そう、いきなりの先制攻撃だ。宣戦布告なし。
相手方の言い訳、理由など必要ない。聞く必要もない。
どうせ、“少女だから”・・あるいは“金目のものでも持ってそうだから”
そんな程度の理由なのだろう。
だからこそ、迷いなく、躊躇なく、最初の一撃をスヴァルは放ったのである。
-- -- -- -- --
そう、その瞬間・・・路地の時が止まったのだ!
私に向かって迫ってきていた奴らの足が、突如として硬直、動けなくなる。
そして、全員が一斉に、"バシャン"、"ドシャン"と・・豪快にこけた。
「うぎゃぁぁぁぁぁ」
「ぐぅぁぁあっあああああっっ」
薄暗い路地に、男たちの悲鳴がこだまする。
かなりの痛がりようだ!
見事なぐらい顔面から地面に激突し、鼻の骨が砕け、唇が裂け、赤い血が路面に広がっていく。
まるで何かの殺人現場のごとく・・
「よしっ!」
彼らはスヴァルの念動力によって、足の動きを封じ込めた。強制的に歩行を止めたのだ。
もう動けない・・だが慣性の法則は働く!
彼らはわけも分からず、硬直したまま地面に激突してしまったのであった。
防御態勢をまったく取れず、無防備のまま激突したため、かなりの打撃を受けたはず。
骨が折れている可能性もあるだろう。
ふむ! これぞ・・ESPの底力!
ただし、相手の動きを封じ込める時間は、たった数秒のみ、だが・・それで十分なのだ!
そして私は、何事もなかったかのように、その場を静かに立ち去る。
まるで他人事のように・・・
これ以上の関わり合いは避けるべきなのだから!
-*- - - - - - *-
スヴァルは足早にその場を後にした。
だが、駆け抜けるように進んだせいなのか・・気がつけば迷子、道に迷っていた。
通常なら、大通りに出れるはず!
まっすぐ進めば、必ず通りに抜けられるのだ。 しかし通り抜けられない。
入り組んだ狭い道、複雑に絡み合う通路。 まるで都市そのものが、迷路のようだ。
そう・・この空間は、まるで“九龍城”のごとく・・
「あれっ おかしいな!? こんなところで迷うなんて・・」
しかも、妙なことに誰ともすれ違わない。人気がない。気配がない。
あまりにも、静かすぎるのだ。
まるでこの一角だけが、世間から切り離されたような不自然な空間。
さらに、頼みの綱であるGPSまでもがバグを起こし、現在地すら表示されなくなっていた。
『航宙輸送艦"ネェイルン"との通信はとれていますが、現在地、方位、時間すら不明です』
"バイオマトン"を通して、運用AIが答えた。
「おいおい・・どうなってるのだ!? 町の中で遭難って・・!?」
スヴァルはあらためて周囲を見渡した。
入り組んだ細い通路。ひっそりと咲く花壇、時の積層を感じさせる古びた建物。
そこに広がっていたのは、どこか懐かしい・・・ノスタルジックな街並み。
その情景は奇妙に懐かしく、しかし不明瞭で、頭の片隅をかすめるような・・・思い出。
かつて・・このような町に住んでいた気がする。
楽しく、がやがやと多くの人達とともに・・
「これは、私の記憶なのか・・!?」
"バイオマトン"にされ・・記憶を奪われたとはいえ、全てを失っているわけではない。
断片的に、わずかな記憶程度は思い出せるのだ。
この懐かしき風景を眺め、感慨にふけり、そして涙が頬をつたう。
特に私の目を引いたのは・・不思議な看板だった。
古びているが、どこか惹かれるデザインをしており、その下には駄菓子屋のような店が佇んでいた。
「ごくり!!」
唾を飲み込む音が静寂の中で響く。
スヴァルはその駄菓子屋のような店構えに・・何かを感じたのだ! 何かを察したのだ!
(ヘンテコな暦が書かれているカレンダーにポスター、見たことない裸電球に蛍光灯・・ついでに電信柱にダイヤル式公衆電話)
自分自身の直感、いやESPが、とあることに気づく。
そう、この場所は・・今世、現実の世界ではない。
別の空間、または過去の世界、それとも天国、はたまた地獄か!?
「まずい! ここは・・時空の狭間。人ならざる世界に迷い込んでしまった!」
鼓動が速くなる。
重い空気に飲み込まれるように、恐ろしい予感が心を締め付けるのだが、それと同時に・・ある種の好奇心も芽生えてきた。
あの駄菓子屋風の店を覗いてみたい!
スヴァルはおそるおそる近づき・・駄菓子屋の中へ足を踏み入れた。
そこにはやはり、誰もいない・・・無人だった。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




