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宙を舞う念動力


果てしなく続く赤い砂漠に、どこまでも澄みわたる蒼い空・・惑星ホリュムの風景を、モニター越しに眺めていた。


そしてふと、スヴァルは思いを巡らせる。この星の“大気”について・・


そう、ここは・・無慈悲で過酷なガス惑星とは違う。

地表はしっかりとした岩盤に覆われ、大気には酸素が含まれている。

生物が生存しうる・・可能性に満ちた空気なのだ。


なんと、素晴らしき環境! 胸の奥で好奇心が湧き出してくる。

私は感じたいのだ!

この鼻で、この肌で・・酸素という天然の大気を・・



だが今は戒厳令下、地上に降り立つことは禁じられていた。

そこで、この航宙艦の上層部にある“展望デッキ”に、向かうことにした。

そこなら・・外に出たことにはならない。艦内という扱いだからだ。


それに・・この“展望デッキ”の高さなら、遥か彼方の地平線まで見渡せる。

そして何よりも、この惑星の風、この惑星の大気を、直接感じることができるのだ。

それだけでも、今は十分に価値があるとスヴァルは思った。





・・・熱い。 空気が肌を刺すような熱さだ。

外部気温は40度を超え、暑苦しさが口の中にまで入ってくる。


これが惑星の大気なのか!?

記憶を失っているため、それ以前のことはわからない。

けれど、この空気の感触は・・この人生(記憶)で初めて感じる天然由来の空気!


そこへ・・優しく柔らかな風が吹き・・黒髪をなびかせる。

その強烈な熱さと・・涼しき風!?

その入り乱れた肌感覚に、スヴァルは戸惑った。


「これが・・天然の自然・・・えっ!?」



一筋の涙が、頬をつたう。

込みあげてくる想い・・懐かしさ、切なさ、あたたかさ。

ある種の感情のすべてが、胸の奥から溢れ出していた。


それは、忘れさられていた記憶の断片・・

いや! 記憶を失う以前の・・・一部が蘇ったのかもしれない。



そう、かつて(スヴァル)は・・このような暑さの中、何かの修行に・・・明け暮れていた。

誰かと・・ともに・・山野を走り・・空を翔ける日々。

その情景だけが、確かに心に残っている。


だが、名前も顔も思い出せない。

ただ、ひとつだけ・・私の根源を告げる・・とある言葉だけは、思い出せる。


それはシズク。 私は“シズク人”だ。

このシズク(地球)を故郷とする者たちの末裔にして、“語り部”と呼ばれる存在。


・・・確かに私は思い出した! “語り部”という謎の単語

だが、よく分からない。理解もできない。記憶が断片すぎて・・意味不明だ。



後に、私は運用AIに尋ねてみたが・・・AIの知識ベースに“語り部”の該当項目はなく・・

そして、私のこの身体・・ "ヴィラルノイド"の電脳システムにも同様の質問してみた。

だが、結果は変わらなかった。



それでも、ひとつの確信が芽生える。

この“ヴィラルノイド”は、シズクにて製造されたもの・・

そして、私はシズク出身らしい。

それゆえに、この身体との相性が極めて高かったのであろう。


さらに、私がこの身体と出会えたこと自体・・何者かの意志に導かれた結果なのではないか!?

直感力・ESPが、私にそう・・囁きかけてくるのだ。


そして、さらなる鍛錬を要求してくる。

ESPを鍛えろと・・・



そうだな! 失われた記憶や、シズクの謎を追求するためにも、この力・ESPが必要となるであろう。

それに面白そうだし・・・なによりも暇だ!

戒厳令ゆえに、外に出られない。退屈を持て余しているのだ。

ならば! 今こそ鍛える時、ESP訓練だね!


私の記憶の片隅、記憶の断片に残る・・最も効率的なESP訓練。

それは・・絵を描くこと。すなわち・・絵画! 芸術なのだ!


筆をとるたびに、インスピレーションは研ぎ澄まされ、 内なる感覚が静かに目覚めていく。

そして、絵画に魂が宿るその時・・見えざる力が形となり、 ESPが身体にやどるという。


・・と、自分で言っておきながら、怪しすぎる文言なのだが、それはそれ♡



-- -- -- -- -- -- -- -- -- --



スヴァルはこの“展望デッキ”内に画材・キャンバスを持ちこみ、そして・・ここから見える景色を題材にして、絵筆を走らせた。

ただし・・自分の作風は前衛的芸術だったりする。

これこそESPの根源、内なる魂、情熱を描き出すのだ~




"" 燃え上がる砂漠に水を浴びせるような太陽。その熱を受け止められず、怒り狂うように噴き上がる砂嵐。

そして、踵落としのように力強く降り立つ入道雲 ""


そう、この風景画はまさにカオス。 すべてが渦を巻き、混沌と化す壮大な絵巻w




--閑話休題♡--

自分で描いた絵が・・ものすごく上手くみえてしまう錯覚がある。

そこで、すこし時間を置き・・冷静に自分の絵を見ると、バランスと構図が明らかにおかしいことがわかる。

だが!! あえて見なかったことにした。

「それがアーティストだぁぁぁぁ~」



・・・というかESP訓練に絵の上手さは関係ない! 描き続けることこそ重要なのだ! 修行なのだ!


スヴァルは、そう決意する! 筆は止まらない! 次々と描きまくり・・・“展望デッキ”がキャンバスの山と化すのはご愛敬


「芸術は直感力だぁぁ~!!!」


ちょっとハイテンション、いっちゃってる感じ!?

まるで水を得た魚のように、私は覚醒した。


興奮は限界突破、髪を振り乱しながら、筆は宙を舞う!


色彩は爆ぜ、幻影が渦巻き、前衛と先鋭が入り混じる・・・・キャンバスは、もはや現実を超えた世界を描き殴る。


「あっはっはははは〜」


もはやハイパートリップ! 笑い声がこだまし・・超常現象を巻き起こす。


そう、スヴァルは気づかぬうちに・・無意識のまま筆を宙に浮かべ、絵を描いていたのだ。

この瞬間、私のESPは次なる段階へと進化を遂げた。

念動力は・・物理法則を超え、意志の力で物を動かす。


ワープ航法が当たり前となった・・この恒星間時代においても、念動力は非科学的なものであり、オカルトだったのだ。


だが、目前に浮かぶ筆を見つめ、しばしの沈黙、そして、全てを受け入れた!


「そういうこともあるのだよ! だって・・ESPだもん」


そう、これはまだ始まりにすぎない。

ESPのほんの一端、まだ初級にすぎないのだ。修行はこれから・・・


かつて・・この銀河を制覇したシズク人の真髄、ESPを取得するのだ!



-*- - - - - - -*-


それから・・数日間、いまだに戒厳令が解かれていない。

完全に宙賊を撃滅しきれていないとのこと。


とくに・・地上降下した宙賊の討伐に手こずっているらしい。


まぁ・・どちらにしろ暇なので、スヴァルはもちろんESP訓練・・・一般人に理解し難い前衛絵画を描きまくっていた。


「あっはははは~!」


念動力で筆を動かし、摩訶不思議な世界を次々と描く。今までにない斬新な絵画だ。


そんな夢中な時間の中、ふと目に飛び込んできたのは、上空で光を放つ謎の物体。


"なにあれ!?"・・などと呑気に思った瞬間、艦内で鳴り響く警告サイレンに・・運用AIの声が鳴り響く。


主様(あるじさま) 艦内にお戻りください。敵らしき物体・・こちらへ向かってきています』


その一言で現実に引き戻されたスヴァルは、即座に危険と感じた。

もちろん迷う事なく・・“展望デッキ”に散らばる絵画を放棄し、全速力で艦内へと駆け込んだ直後・・背後で重厚な音が響く。

エアロックが作動し、外環との接続が完全に遮断されたのだ。


私は息を切らしながら艦橋へと駆け走り、状況を確かめ、そして息を呑む。


モニターに映し出されていたのは、宙賊艦隊の一隻・・超大型航宙艦であった。

分類としては戦闘に特化した超ド級の戦航艦(俗に言うバトルシップ・大和級戦艦)


前回、たまたま撃破した戦航艦よりはるかに巨大・・全長2キロを超える黒鉄の巨艦が、火を噴きながらクルクルと回転し、マッハ30の猛スピードで落下していた。

もちろん、その船体はすでに満身創痍。

装甲は裂け、艦橋は崩れ、推進機関は完全に沈黙している。

ホリュム防衛艦隊によって撃破された宙賊艦のなりの果て、残骸なのだが・・・

それでも、巨艦は巨漢!

よりによって、運の悪いことに、この場所へ・この場所へと吸い込まれるように落ちてきていたのである!



もし、あれが地表に激突すれば、 深さ100メートル、直径2キロにも及ぶ巨大クレーターが出現するであろう。

しかも、その地域、その直下の地下都市をも巻き込み・・・数万の住民とともに吹き飛ばされる。


「うっ! なんてことだ」


最悪な未来予測が脳裏をかすめた瞬間、とある通信が割り込んできた。

ホリュム政府からの緊急連絡だ。


『我々には、あれを即座に迎撃する手段がない。住民を逃がす時間もない! たのむ! 貴殿の戦力だけがたよりなのだ。たのむ・・!!』

通信の声は震えていた。泣きがはいっている女性の声だ。

まさに藁をもつかむような無茶な頼み事。


こんな民間輸送船に、迎撃できるような兵器など・・普通は積んでいない。


おそらくは、あちらこちら、少しでも可能性のありそうな所に手あたり次第の通信を入れているのだろう。

・・・地下都市と、その住民を守るためなら、どんな小さい可能性でも賭けるしかないといったところか!


う~ん、こちらとしては、助ける義理はない。

この艦を緊急発進さえすれば、自分だけは逃げられるのだが・・・しかし!



「この地に愛着などないが・・一応、やるだけのことはやってやろう!」



空から迫る黙示録のラッパ。それは、すべてを飲み込む破滅の鐘。


それに対して・・航宙輸送艦"ネェイルン"は・・・浮上を開始するとともに・・主力兵器でもある電磁砲4門がせり上がっていき展開される。

ターゲットは落下していく宙賊艦のなりの果て・・・しかし、その巨艦ゆえに破壊力は甚大だ。

それは、ある種の物量兵器ともいえる。



電磁砲は、運用AIの判断によって・・・・即座に攻撃を開始した。

照準は完璧。誘導装置によって精密に導かれていく。


弾頭は亜光速で空気を切り裂き、周囲に凄まじい衝撃波を生み出す。

そのサイズは極小・・しかし、その内部には反物質が封入されている。


それはつまり、核兵器に匹敵する破壊力を秘めているということ!


しかし・・・有効的な打撃を与えることができなかった。

目標の装甲を貫通できなかったのだ。


「なんと、効かない!?」


その様子を艦橋内モニターで見ていたスヴァルは驚く! まさかの出来事!

相手は・・プラズマフィールドなどの防御結界を張っていない・・にも関わらず貫けなかったのだ。


やばい! やばいぞ!




大気圏内での電磁砲は、やはり威力が半減するのか!?

いかに亜光速で撃ち出したとしても、 空気抵抗によって瞬く間に減速し、破壊力が削がれるのだ。

理論上は完璧でも、現実は非情!


このままでは、地下都市は壊滅してしまう。

自分だけでも離脱すべきか・・ならば、今すぐに動くべきなのだ!


そんな自己保存の法則が働いた時、鋭い直感が自分を貫いた。

それはある種の第六感、ESPというべき感覚だった!




--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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