戦火のホリュム
"赤Ω社"の名を騙る宙賊の小型航宙艦を、撃破した我が輸送艦"ネェイルン"は、次なる目的地に向かってワープ航法に移った。
行先は、"ホリュム"星域。
ワープ航法が作動し、艦は銀河をまたぐ旅路へと消えていった。
銀河航路の詳しいデーターは、宙賊から奪ったもの。
出所は怪しいが・・多分、旅行本などからのデーターなので、間違いはないだろう。
そして目的地・"ホリュム"星域に無事ワープアウトした。
記憶がないとはいえ、初めて訪れる有人惑星。
自分の身体は・・・有機生命体"ヴィラルノイド"
はたして・・一般の人間たちの中に入りこんだとしても・・大丈夫なのか!? 違和感はないだろうか!? 不自然に思われないだろうか!?
すこし心配である。不安である・・・
だが・・そんな心配は・・いや! そんな心配など一瞬で吹っ飛んでしまったではないか!
モニターに映し出された周囲の情景は・・・閃光と爆裂、そして漂う無数の残骸。
そう、ここは戦場の只中・・・百隻単位の航宙艦と数千のドローンが入り乱れ、ビーム砲と実弾が飛び交っているのだ。
「な、なんと!」
スヴァルは思わず叫び、のけ反った。
"ホリュム"星域・・ここは立ち入るべき所ではない! それとも罠だったのか!?
後悔が頭をよぎる・・だが、もはや手遅れ。
「まずい! とにかく離脱! 逃げるのだ」
しかし、自分が命ずとも、すでに運用AIの独自判断によって航宙輸送艦"ネェイルン"は、即座に離脱をはかっていた。
だが・・その動きは鈍重だった。
全長1kmの大型輸送艦に速度など・・求められていない。
そもそも・・戦場で活躍する艦艇ではないのだから・・・
とにかく、この状況が不明だ。どうなっている!? 誰と誰とが・・・交戦しているのだ!?
眼前に広がる戦場の只中で、"ホリュム"宙域を司る管制ステーションに通信を試みる。
この混乱の中、はたして返答があるのか!?
・・という疑念を抱いたものの、すぐに返答が返って来た。
"我がホリュム防衛艦隊は宙賊集団と交戦中 民間人は直ちに避難せよ"
短くも明瞭なメッセージ・・宙賊集団からの襲撃を警告していたのだ、
たしかに宙賊はあちらこちらで出没はしていたが・・まさか、ホリュム星域にまで、跋扈し、しかも政府軍と交戦していたとは!
とにかく、今すべき事は・・目的地でもある惑星"ホリュム"に逃げ込むことなのだ。
間違っても、 "ホリュム"防衛艦隊と宙賊艦隊が撃ち合う激戦域に突入してはならない。
ちなみに・・ワープ航法は使えない。この宙域にばら撒かれた時空変動弾が、航行特性を大きく乱していたからだ。
青白く輝く6基のプラズマドライブエンジン
まだ宙賊の連中に・・我が艦の存在に気づかれていないようだ。
いや! 無害な輸送艦などは後回し・・戦闘を優先してるだけかもしれない。
そう、輸送艦に戦闘能力などない。しかも民間船・・・あとでじっくり拿捕する気なのだろう。
「気づくなよ! 気づくなよ!」
スヴァルは心の中で念じた。
だが・・・念じるだけではダメなのだ。
多少なりとも、戦闘の準備をしなければならないだろう。
電磁砲4門に近接戦闘用のビーム砲は・・まだ艦内に収容したままにしている。
宙賊たちに警戒されないよう、あえて隠しているのだ。
艦内にいる"バイオマトン"たちにも倉庫に保管している武器を持たせ・・戦闘態勢を命じている。
これは敵が艦内に侵入してきた場合への備えだ。
そして、先ほど手に入れた・・軍用ドローンたちも、いつでも出撃可能状態にしている。
準備だけは整えた。
しかし、それはあくまで防衛のためのものだ。
戦争できるほどの戦力など、"ネェイルン"にはない・・それが現実だ。
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我らの航宙輸送艦"ネェイルン"は、無害な商船、または・・ひ弱な民間船を装いながら航行・・・
戦場の縁をすり抜け惑星"ホリュム"へと急ぐ。
惑星圏内に入り込んでしまえば・・助かるだろう。
だが、そんなに上手くいくものではなかった。
戦場域を大きくずれているにもかかわらず・・宙賊軍のドローン部隊・およそ100機ほどの襲来をうけてしまったのだ。
それぞれの機体の全長は約2メートル、人間を一回り大きくしたようなサイズ。
だが、侮るなかれ・・奴らの機体には、れっきとしたビーム砲が搭載されているのだ。
「逃がす気はないという事なのか!?」
『主様、戦闘態勢にはいります』
運用AIの言葉を受け、スヴァルは即座に了承した。
敵ドローンに対しての対処は近接戦闘用ビーム砲10門・・・だが、これでは少なすぎる。
そこで、倉庫で待機してあった・・我らの軍用ドローン100機を投入することにした。
この軍用ドローンは敵のドローンと、ほぼ同じ大きさ、武装も同じくビーム砲だ。
"ネェイルン"付近では、双方のビーム砲が次々と炸裂していた。
もちろん・・"ネェイルン"は、プラズマフィールドを展開し青白く輝く。
ある程度の攻撃を弾く・・防御結界なのだ。
そして、その外側では互いにビーム砲を撃ち合い、まるで閃光のシャワーが虚空に降り注ぐ。
「これが戦争か!」
モニターから映し出される・・その美しくも恐ろしい光景に、スヴァルは思わず目を奪われた。
幾重もの閃光と爆裂、虚空を舞う互いのドローンたち。これが空中戦!? いや宙中戦!
性能によるものなのか!? 宙賊側のドローンに撃墜率がめだつ!
それに艦艇搭載・ビーム砲10門のおかげかもしれない。
「有利だ! 勝てる」
"ネェイルン"の防御結界・・プラズマフィールドも十分機能し、大半のビーム攻撃を無力化していた。 この時点で、被害はほぼゼロ。無傷のままだ!
だが、油断はできない。宙賊・ドローン部隊は、敵のごく一部に過ぎないのだ。
主戦場にて、ホリュム防衛艦隊と対峙している宙賊艦隊が、もしこちらに興味を持てば・・無傷では済まされないだろう。
「さすれば・・偽装工作だ! 被弾したように見せろ。爆発を演出する!」
スヴァルの指示に運用AIは、即座に反応した。
倉庫に眠っていた採掘用爆薬弾頭を宇宙空間へ射出・・
そして、それを自艦のビーム砲で撃ち抜いたのだ!
壁面モニターが一斉に閃光を映し出し、あたり一帯の宙域をまばゆい光が覆い隠す。
それはあたかも・・"ネェイルン"が轟沈したかのような・・壮絶な演出。
遠距離から見れば、完全に撃破されたと判断されるだろう。
狙いは成功。いまのところは・・・
よしいけ! この閃光が輝いているうちに惑星"ホリュム"に逃げ込むのだ。
わずかに残った敵・宙賊ドローンを排除しながら、損傷艦を装って航行を続ける。
あと少し・・あと一歩で惑星圏内へ届く。 そこまで行けば、防衛隊の庇護を受けられるはずだ。
だが、その時・・運用AIからの警告・・・
『主様、警戒してください。大型艦の接近!』
そう、壁面モニターに映し出されたのは、新たなる脅威・・・宙賊の大型艦の接近だった。
どうやら"ホリュム"防衛艦隊に追われ、余儀なく後退し、こちらへと向かってきているのか!?
・・・とはいえども、敵はかなりの満身創痍、いたるところが破壊され・・痛々しい。
中破といったところだろう!
さらに、防御結界・プラズマフィールドは解除され無防備状態となっている。
これは・・痩せ馬に鞭! 火事場泥棒!? かもしれないがあえて目をつむる・・チャンスなのだ!
「"ラアラ解放戦線"ほどの因縁はないが、ドローンで攻撃してきたのはあちらだ! これは正当防衛だ・・撃て! 電磁砲を撃て!」
スヴァルはある種の直感、ESPを感じたのだ。
今ここで引けば、逆にやられてしまうという危機感! 生き残る為には・・撃たねばならない!
または・・手柄を立てたいという本能めいた衝動!? そう、宙賊には高額の懸賞金がかけられていたのだ。
「撃て!撃て!撃て!」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




