略奪は蜜の味
スヴァルは・・敵に対して容赦のない人物だった。
長きにわたる“バイオマトン”としての奴隷生活、人間扱いされていなかったゆえなのか・・・
何よりも束縛を嫌い、自由への強い渇望を心に刻み込んでいたのである。
特に・・宙賊のような存在、金品を奪い、身柄を押さえ・・人身売買するような存在など、決して許しはしない。
「宙賊に遠慮はいらない。一撃で撃破だ」
航宙輸送艦"ネェイルン"に搭載された4門の電磁砲が、静かに姿を現した。
その砲門は敵・航宙艦にターゲットロックしている。
しかし敵は・・まだこちらの動きに気づいていない。
そう、いきなりの奇襲攻撃で一挙に始末するのだ。卑怯もへったくれもない。
それに・・もし一撃で決めなければ・・こちらが圧倒的に不利になるであろう。
電磁砲に電流が流れ始め、ローレンツ力が加えられる。
これは別名、レールガン、または電磁加速砲
そして、その弾頭には反物質を使用しているのだ。命中すればかなりの破壊力が期待できる。
運用AIが全てを采配し、最も有効な位置から4門の電磁砲が放たれた。
発射音はしない。振動すらなかった。
弾頭が放たれたことを認識できたのは、モニターに映し出されたメッセージのみ。
その弾頭はターゲットに向かって亜光速で突き進む。
"赤Ω社"と称する小型航宙艦は、緊急退避行動を試みるが・・時遅し、虚空の闇を背景に巨大な光が閃いた。
-*- - - - - - *-
艦橋壁面に埋め込まれたモニターに映し出される残骸、それはかつて航宙艦だった物のなりのはて
スヴァルは静かに息をついた。
これで、脅威は消えたのだ。
「よし!」
拳を握りしめる。達成と安心の表れ・・・後悔などしない。
長きにわたる奴隷生活が非情な性格にしてしまったのだろう。
あるいは、狩りの本能が、静かに目を覚ましたのかもしれない。
そして・・その狩りの獲物、残骸は、貴重な資材、再生の糧となるのだ。
さぁ、略奪をはじめよう
運用AIからの指示のもと、倉庫のハッチがゆっくりと開き・・そこから"バイオマトン"たち数十体が船外へと飛び出していった。
彼らは・・鉄の身体を持つ自動人形、かつて"ラアラ解放戦線"による非道な行いによって、自我を奪われた悲しき存在。
「・・・・・」
自分もかつて、"バイオマトン"の身体にされていたゆえなのか・・
彼らにこのような任務を課してしまうことに、後ろめたさを感じてしまう!
しかし、彼らが役に立つ以上、その力を活用しない選択肢はない。
モニター越しに彼らの資材集めを見守りつつ、ふと気づけば・・指が長い黒髪を弄っていた。
この身体は"ヴィラルノイド"として再生した生身の我が身、自らの幸運に感謝しなくてはならない。
残骸から見つかる乗務員の死骸・・どう見ても"赤Ω社"の関係者とは思えない服装をしていた。
しかも・・違法薬物類も発見してしまったのだ。間違いなく反社組織・宙賊の連中だな!
「ふぅ、一安心」
これで犯罪行為ではないと証明された。
"赤Ω社"とは無関係だったのだ。
それに・・これは正当防衛! 正義の証!
宙賊を討伐したに過ぎない。
一方、"バイオマトン"たちは使えそうな資材をあさっていた。
さすが、宙賊なのか・・軍用ドローン兵器が多い。しかもかなり強力のようだ!
これをバラまかれると、この"ネェイルン"・・簡単に撃沈していたかもしれない。
「おそろしや! おそろしや!」
もちろん回収です。これら軍用ドローンは、このスヴァルが有効活用させてもらいますよ!
-- -- -- -- -- -- -
これら目に見えるアイテム、物資の回収だけではなく・・宙賊たちが持つ情報・・システムファイルもそれなりに重要だった。
とはいえ・・ほとんどのファイルは消失していたものの、それでも一部、読み取りに成功したのである。
それは最新の銀河航路図、そして周辺諸国のデーターなど・・・
(これは・・ある種のガイド本なのか、または旅行本かもしれない!?)
もちろん・・運用AIはこれらを即座にインプットし・・データー取得に成功したのであった
『 主様最も良きものを手に入れることができました。今後の活動方針の指針になりましょう』
そう、このファイルデーターから・・次の目的地を探すのだ!
私のような根無し草、生まれも育ちも不明・・身分書を持たぬ者でも、受け入れてくれる国を探すのである。
すると・・運用AIは即座に答えを出してくれた。
『惑星国家"ホリュム"がよろしいかと考えます。小さな国ではありますが、貿易が盛んで、短期間での入国であれば、身分書の提出も必要ないようです』
「ほう・・!」
さらにAIが朗報を続ける。
『加えて、この"ホリュム"では多額の税を支払えば、身分書の作成も可能だとのこと』
・・・ある種、金さえあれば、なんでも可能という拝金主義的な国かもしれない。だが、今の私にはこれが救いなのだ。
「決まりだな! 次の目的地は・・・"ホリュム"だ」
どれほどの税を要求されるのかは不明だが、しかし、倉庫には貴重な金属"グラアスピア"があり、さらに先ほど撃破した宙賊の資材や資金も手元にある。
そう、問題なしだ。
"赤Ω社"の名を騙る宙賊の小型航宙艦・・その残骸がこの宙域を漂い続けるのは、色々な意味で好ましくない。
ならば、やるべき事は一つ、証拠の隠滅をはかろう。
そう、この宙域では・・何も起きなかった。事故も、戦闘も、最初から存在しなかったのだ。
そして、私は何もしていない。
あくまでも私は・ごく普通の輸送艦の艦長・・そういうことになっているのだ。
だからこそ、あの宙賊・・あの残骸の軌道を変更し、近くの 恒星へと落下させ、消滅させる。
すべてを沈黙させ闇へと帰すのだ。
「ゴミはゴミ箱へ・・・そして、私たちは次なる目的地へまいる!」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




