戦士たちの休息
航宙輸送艦"ネェイルン"は半壊状態。特に船尾部分の損傷は目を覆いたくなるほどの惨状だった。
しかし、運用AIの報告によると、修理は可能だという。
ただし、その修復には相応の時間を要するとのこと・・
「まぁ良い! 再び動けるようになるのなら問題なし」
スヴァルは艦長席に身を委ね、静かに目を閉じ、心を落ちつかせる。
航宙艦の管理と修復は全て運用AIに任せることにした。それが最善であろう。
そうなると・・この暇な時間を利用して、この身体"ヴィラルノイド"の出所というべきか製造元、つまり人類の発祥の地・・"シズク"に関する調査をすることにした。
そう、シズクを知りたければ・・自分の身体に聞くのが良いであろう!
なんたって製造元がシズクであるのだから・・それなりの情報は持っているはずである。
歴史から消え去り忘れ去られた・・人類の故郷、発祥の地に関する歴史と真実を・・探り出してみようではないか!
スヴァルは今! この身体"ヴィラルノイド"に宿る電脳システムに対して・・いくつかの質問を問いかけてみた。
【 〆>> 人類の故郷、シズクは如何なるものなのか!? どこに存在するのか!? >> 】
それは、好奇心を紐解くチャット形式の問いかけ・・はたして答えは!?
【 << シズクの位置は銀河座標α000axc000、シズーラ星系第三惑星、半径6400km、衛星1、酸素濃度20% 窒素78%・・・ << 】
電脳システムからの返答は、基本的な情報に留まった。
それでも、銀河座標が分かったことは上々とも言える。
位置情報さえ知れれば、訪れることは可能だからだ。
願わくば、そんなに遠くでなければよいのだが・・・
その後、スヴァルは運用AIにシズクの位置、すなわち・・"銀河座標α000axc000"について尋ねてみた。
しかし、返ってきた答えは予想外!
落胆せざるを得ない内容であった。
『銀河座標という尺度は存在しません』
「えっ」
スヴァルは・・おもわず声を上げた。驚愕の事実だった。
今の時代、銀河座標はすでに廃れた古い尺度であり、もはや誰も使わなくなっている。
それどころか、その尺度が持つ本来の意味すら、忘れ去られてしまっていたのだ。
つまり、銀河座標ではシズクの位置を特定することはできない。わからないのだ!
その存在事態を幻、伝説とされ、シズクの実在性事態・・常に懐疑的な目で見られてきていた。
やはり、この探求は簡単には進まないのだろう。
それでも・・スヴァルは探し続ける!
間違いなくこの身体、長き黒髪の少女は・・シズク製なのだから!
それに自分の直観力・・ESPが、自分自身を誘っているのだ。シズクに来るのだと・・
( オカルト的には、何かに取り憑かれている状態なのかもねw )
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バイオマトンたちの尽力により、航宙輸送艦"ネェイルン"の修理は順調に進んでいた。
ただし、資材の関係上から、元の姿に戻すことはできず、多少というか(あれな姿)・・別の航宙艦のような姿になってしまっていた。
「性能に問題がないなら、見た目なんて気にしないよ!」
あ~それに! この航宙輸送艦の姿を変えていたほうが、なにかと都合がよいかもしれない。
何せ、この航宙艦の元所有者は“ラアラ解放戦線”なんだからね!
(盗んじゃいましたw 言い訳としては・・慰謝料としていたたきました)
虚空に広がる深宇宙・・無数の星々が輝く中、不格好ながらもたくましく浮かぶ一隻の航宙艦があった。
その姿はどことなく不器用で、取ってつけたような印象を与えるが、そこには確かな存在感・・・老練ともいえる無骨さが滲み出ていたのである。
新生・航宙輸送艦"ネェイルン"・・ここに誕生する。
「うん、修理完了なのですね!」
『はい、主様 プラズマドライブ、ワープドライブエンジなど全て修理完了いたしました。後は試験航行だけです』
運用AIによる最終確認を終え、プラズマドライブの稼働試験が始まる。
青白いオーラのように輝くドライブエンジンが、その力強さを静かに示していた。
宇宙航行に問題なし・・・予定通りの速度を出し虚空を疾走する。
そして、次なる稼働試験は最重要項目でもあるワープテスト
目的地は100光年先に位置する無人恒星系だ。
航宙輸送艦"ネェイルン"はその地をターゲットに定め、ワープ試験を開始した。
モニターに浮かび上がる"正常"の文字、計器類にも異常の兆候は見当たらない。
『全て順調です』
運用AIのお墨付きを受け、スヴァルはひと安心、艦長席に深く身をゆだねた。
「よしよし、いいね!」
壁面モニターが輝くように青く光を放った後、やがて何も映し出さなくなった。
そう、光の速度を超えると、景色はすべて消え去ってしまうのだ。
だが、そのかわりにと映し出される数値は速度計・・・それは光の速度の2倍、3倍・・・10倍
艦橋内は静まり返り、揺れも振動もない。もちろん、不安も感じない。
スヴァルは自動ポットから差し出されたコーヒーを一口飲み、サンドイッチを味わいながら静かなひと時を過ごしていた。
ちなみに、パンに挟まれている具材は鳥肉、というか合成肉?! 培養肉!?
でもでも、おいしいですよ。コーヒーとのコラボも最高!
口の中に甘味がじんわりと広がる。
「最高ね!」
スヴァルはニッコリ、デリシャス♡
そんなこんなで、しばらくのティータイムの後、目的地に到達したというモニター表示。
ワープ航法は解除され、試験航行は無事に完了したようだ。
真っ黒だった壁面モニターに映し出されていたのは・・クレーターで覆われた一つの惑星。その姿が、目前に広がっていた。
ここは無人星系・・人が住んでいないゆえに、ちゃんとした名前は付けられていない。
惑星ナンバーとしては・・"Pqjbdt@3477-18643-003"
大気もない・・荒涼とした小柄な惑星である。
だが、ここでスヴァルは、艦長席をけり上げるがごとく・・立ち上がった。
感じるのだ! 直観力が・・ESPが・・!
「何かが来る! 遠くから来る! 殺意! 襲撃!」
スヴァルは即座に運用AIに命じ、周囲警戒の体制を敷かせた。
さらに武装も準備させる。 とはいえ、その武装というのは、電磁砲4門とビーム砲10門を備える程度のものだ。
民間船よりは強いが、軍用航宙艦には及ばない仕様である。
航宙輸送艦"ネェイルン"の遠距離センサーが何かを捉えたようだ。
それはまだ点のような存在だが、徐々に形がはっきりしてくる。
艦首には赤いΩのマークが刻まれていた。
それは、全銀河規模で人道支援を行う組織"赤Ω社"の象徴なのだ。
医療支援、災害救助、難民保護などを担う国際組織。
だが、こんな宙域に"赤Ω社"がいるはずがない。
十中八九・・あれは偽物だ。おそらく宙賊だろう!
"赤Ω社"を装い、襲撃を企てているに違いない。
「だよな!?」
スヴァルは・・・運用AIに尋ねてみたところ、『この距離では不明です。もっと接近しなければ判明できないでしょう』との返答だった。
だが・・・これ以上接近を許せば、この鈍重な航宙輸送艦では逃げ切れないし・・ワープ航法も間に合わない
相手は、小型だが高速の航宙艦・・素早い動きで追尾し、接舷した後、宙賊どもが侵入してくるだろう。
この世界は・・非常だ!
"疑わしきは罰せず"・・なんて甘い原則は通用しない。
少しでも疑えあれば・・それ相当の対処をする。
「遠慮はなしだ! 電磁砲4門を稼働・・・一撃で仕留めよ」
これは完全なアウトレンジ攻撃! 相手の射程外から強力な一撃だ葬る!
この艦の見た目がアレすぎて・・侮られているうちに、敵を撃破するのだ。
もし!? 普通の"赤Ω社"の航宙艦だったら‥どうするのかだって!?
こんなとこで"うろうろ"してる方が悪い! 運が悪い!
それに・・1発目なら誤射だ。これは事故なのだよ
まぁ、とはいえ・・ほぼ間違いなく"赤Ω社"ではないだろう。
自分のESP・直観力によって 奴らからの殺意、危険性を感じとっているのだから・・・
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




