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赦すも処すも、生者次第 #加害者を許すな  作者: ヨウカン
最終章 旅路の果てに、未来は在って…
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68話 例の事件 その後

 今にして思えば——

 この出来事こそが、すべての始まりだったのかもしれない。


 俺が高校に入学したばかりのことだ。


 姉ちゃんが殺されてから、すでに何年も経っていた。

 けれど、その傷が癒えることはなかった。塞がるどころか、時間とともに少しずつ広がり、深くなり、気づけば膿んでいた。


 夕飯を食べていると、今でもふと考えてしまう。

 バイトで帰りが遅くなった姉ちゃんが、「ただいま」とひょっこり玄関を開けるんじゃないか、と。


 姉ちゃんの部屋の前を通るたび、無意識に扉を見てしまう。

 帰ってきていないか。

 まだ、そこにいるんじゃないか。


 俺の中では、朝比奈 真昼は——まだ死んでいなかった。


 気がつくと、スマホを開いている。

 検索履歴は、いつも同じような言葉で埋まっていた。


 死者蘇生。

 魂の交信。

 降霊。

 呪術。


 別に、オカルトが好きだったわけじゃない。

 その根源は、全部、姉ちゃんだ。


 頭では分かっていた。無意味だと。馬鹿げていると。

 それでも、縋らずにはいられなかった。

 だから、ネットの書き込みを片っ端から漁った。

 噂話も、怪しげな儀式も、真偽不明の体験談も。

 読むだけじゃない。当時の俺にできることは、できる限り試した。


 「柊夜……もうやめて」


 ある日、母さんが泣きながら言った。


 「真昼は……お姉ちゃんは、もう帰ってこないのよ」


 母さんは泣いていた。

 オカルトにのめり込み、怪しげな行動を繰り返す俺を見て——泣いていた。


 今なら分かる。

 壊れていく俺を、見ていられなかったのだろう。


 だが、当時の俺に、そんな余裕はなかった。



 *****



 「……姉ちゃん……」


 姉を呼ぶ声は、闇に溶けて消えた。

 返事が返ってくるはずもないと分かっていても、呼ばずにはいられなかった。


 夜が嫌いだった。

 周囲が静かになると、姉ちゃんを失ったという事実が、容赦なく心を蝕んでくる。


 昼間はまだいい。

 人の話し声や、車の走る音、街の雑音がある。

 それらはきっと、考えずに済むための救いだったんだ。


 夜になると、それがすべて消える。

 静寂の中では、悲しみが輪郭を持って迫ってくる。

 忘れたふりをしていた感情が、逃げ場を失って胸の奥に溜まり続ける。


 夜は長い。

 ただでさえ長い時間が、さらに引き伸ばされる。

 時計の針は進んでいるはずなのに、まるで止まっているようだった。


 この闇から早く解放されたい。

 ただそれだけを願って、俺は目を閉じる。


 「……眠れ……眠れ……」


 そう念じるたびに、皮肉なほど頭は冴えていった。

 考えたくないことばかりが浮かび、振り払おうとするほど絡みついてくる。


 失われた姉ちゃんの記憶。

 もう戻らない日常。

 何もできなかった自分。


 悲しみと虚無が、何度も何度も胸の中を往復する。


 息を整え、目を閉じたまま、ただ耐える。

 考えるのをやめたくても、やめられない。


 そうして、長い夜の底で、記憶と喪失にすり減らされながら——


 いつの間にか、意識だけが静かに落ちていった。


 

 *****



 放課後、俺は街を意味もなく彷徨っていた。


 部活はしていない。

 やる気が出なかった。

 家にも帰らない。帰れば嫌でも、姉ちゃんのことを思い出してしまうから。


 その日は、気づけばゲームセンターに入り浸っていた。

 耳を叩く轟音。点滅する光。途切れることのない電子音。

 鼓膜を強く刺激するこの空間では、悲しみも苦しみも輪郭を失う。

 空いた心を、音が埋めてくれる気がした。


 中でもリズムゲームが気に入った。

 無心でボタンを叩いている間だけは、考えずにいられる。


 ——ここだ。

 最高の居場所を見つけた。

 これからは、ここに入り浸ろう。


 そう決めた、その直後だった。


 ドン、と鈍い衝撃。


「——っ……す、すみません……」


 肌に触れたのは、汗とタバコが混じったような、場違いに生々しい匂いだった。喉の渇きを覚えて買ったドリンクを片手に歩いていた俺は、背の高い、がっしりした体格の男とぶつかった。


 「いってぇな。気をつけろよ、クソガキ!」


 男は吐き捨てるように怒鳴り、そのまま立ち去ろうとする。

 だが、その背後にいた仲間の一人が声を上げた。


 「安西さん、ちょ……服、ベショベショっすよ」


 「うわ、こりゃ酷ぇな。弁償モンじゃね?」


 そう言って笑った二人——橘と桐谷。

 たかがちょっと服を汚しただけで大騒ぎする、煩わしい不良。この時の俺にとっての認識は、その程度だった。

 当時は知らなかった。

 目の前にいるこいつらが、数年前、姉ちゃんを地獄に突き落とした連中だということを。


 ——“例の事件”の、加害者たちだということを。


 男——安西(後の真田 誠)は、仲間の言葉でようやく自分の服が濡れていることに気づいたらしい。


 次の瞬間、俺の胸ぐらが乱暴に掴まれた。


 「おいコラ。ちょっと来いや」


 「わっ!? ちょ……す、すみません……!」


 謝罪の言葉は、すぐ隣で鳴り響く爆発音のような電子音に、かき消された。俺を救ってくれていたはずの轟音は、今、俺を邪魔する壁になった。


 そのまま俺は、安西たちに引き摺られるようにして、店の外へと連れ出されていった。



 *****



 ガッ——。

 ドカッ——。


 裏路地に、乾いた殴打音が響いた。


 「ぐっ……うぶっ……」


 安西の拳を何度も受け、俺は地面に伏せた。

 抵抗はしなかった。下手に動けば、もっと酷い目に遭う。

 三人に囲まれている以上、逃げ道もない。


 ただ殴らせる。

 相手の気が済むまで、耐え忍ぶ。


 「安西さん、こいつ……たったの二千五百円しか持ってねぇよ……」


 桐谷が俺の鞄を漁り、真っ先に財布を引っ張り出す。

 悔しさと屈辱で胸が焼けるが、抵抗はしない。

 ここで逆らって病院送りになれば、治療費の方が高くつく。


 ——必要経費だ。

 そう自分に言い聞かせるしかなかった。


 「しけた額だが、まぁいいだろ。これでもう一遊びして帰ろうぜ」


 「ちょ、安西さん。服びしょびしょのままでいいんすか?」


 「あぁ? 帰って着替えるのダリィし、いいわ」


 三人の表情に、満足げな笑みが浮かぶ。


 (……やっと、解放される)


 胸の奥で、小さな安堵が芽生えた、その瞬間だった。


 「——あ?」


 桐谷が、声を上げた。


 「こいつ……これ」

 視線が、俺の財布へと集まる。


 (俺の……学生証?)


 安西と橘が、吸い寄せられるように覗き込む。


 「朝比奈……柊夜? ……誰だよ、それ」


 安西は、心底どうでもよさそうな顔をしていた。

 だが、橘が思い出したように口を開く。


 「安西さん、忘れたんすか?

 朝比奈 真昼っすよ。ほら、目元そっくりじゃないっすか。弟……多分」


 ——電流が、背骨を貫いた。


 (……なんで、姉ちゃんの名前を?)


 友達?

 違う。そんなはずがない。

 あんな連中と、姉ちゃんが関わる理由がない。


 「真昼……あぁ」


 安西が、ようやく思い出したように言った。


 「思い出したわ。

 俺らが、うっかり殺しちまった……あの女な?」


 ——世界が、音を立てて壊れた。

 この瞬間、俺は知った。

 こいつらが、姉ちゃんを殺した連中だということを。

 だが、それ以上に——

 安西のその“無神経な反応”が、俺を打ち砕いた。


 "忘れていた"。


 あれだけ弄び、嘲笑い、壊し尽くして殺したくせに。

 姉ちゃんの命を、たったそれだけの重さで扱っていた。


 (……俺の、この数年間は何だった)


 毎晩、眠れずに苦しんだ日々。

 胸を抉られるような後悔と喪失。

 壊れていく家族を見てきた時間。


 ——全部、無意味だったとでも言うのか。


 この時の安西の言葉は、今も俺の魂にこびりついている。

 それはもはや記憶じゃない。

 呪いだ。


 「……お前らぁっ!!」


 気づいた時には、俺は地面を蹴っていた。

 理性は、もうどこにもなかった。


 怒りだけが、俺を突き動かしていた。


 踏み出した、その瞬間だった。

 足元を、不自然に払われる。


 「——っ!」


 桐谷の足が俺の脛に引っかかり、体勢を崩したまま、無様に地面へ叩きつけられた。息を整える暇すらない。


 「動くな」


 次の瞬間、安西の体重が背中にのしかかる。腕を乱暴にねじ上げられ、顔を地面へ押し伏せられた。


 「っ……離せ……!」


 必死に身をよじるが、びくともしない。

 こうして、身体の自由は完全に奪われる。


 その様子を見て——橘が、楽しそうに笑った。


 「せっかくだ。見せてやるよ」


 軽い調子でそう言いながら、橘はスマートフォンを取り出す。

 ためらいも、躊躇もない。


 画面が、俺の目の前に突きつけられた。


 そこに映っていたのは——

 腫れ上がった顔。

 塞がりきらない無数の傷。

 殴られ、蹴られ、踏みにじられた痕が残る身体。

 乱れてボロ切れのようになった衣服。

 そして、涙でぐしゃぐしゃになった——姉ちゃんの顔。


 「……っ」


 声が、出なかった。


 「どうだ? 懐かしいだろ?」


 橘の口調は、まるで自慢話でもするみたいだった。


 「こいつさ、可愛い顔して汚い悲鳴あげるから、うるさかったんだよね」


 俺の背に乗ったまま、安西が続ける。


 「でも最終的にはちゃんと静かになったぜ。

 本当は気絶させる程度のつもりだったんだけどさ、殺しちまった」


 その言葉に、身体が震えた。

 気づけば、涙が勝手に溢れていた。


 「いやいや、殺すつもりはなかったんだぜ?

 あの女が急に抵抗するからさ。仕方なかったんだよ。

 つまり——あの女が悪いってことで、俺らのことは恨むなよ?」


 顔を見なくても分かる。

 今この男が、どんな醜悪な笑みを浮かべているか。


 ——この時、理解した。

 こいつらの底知れない悪意を。


 こいつらの行為はただの思いつきでしかない。

 たまたま目の前に現れた被害者の弟がどんな反応をするのか。


 泣くのか。

 喚くのか。

 それとも——壊れるのか。


 その程度の興味で、ここまで残酷なことができる。


 橘は悪びれる様子もなく、画面をさらに近づける。


 「ほら、弟クン。よく見ろよ。お前の大好きな、あの姉ちゃんだぞ?」


 その声に、罪悪感は微塵もない。

 むしろ——

 “わざわざ見せてやっている自分は優しい”

 そんな軽薄な自己満足すら滲んでいた。


 「懐かしいだろ? ちゃんと覚えてるかと思ってさ」


 笑いながら言う、その態度が——

 俺の胸を、何度も何度も踏み潰す。


 殴られるよりも。

 金を奪われるよりも。


 姉の最期を、見世物みたいに扱われたこと。

 それが、何よりも痛かった。


 画面から目を逸らしたかった。

 閉じたかった。

 実際に、俺はきつく目を閉じた。


 ——それでも。


 瞼の裏に、焼きついた映像は残ったままだった。

 姉ちゃんの腫れた顔も、歪んだ涙も、傷だらけの身体も、闇の中でより鮮明に浮かび上がる。


 逃げ場は、どこにもない。


 姉ちゃんの最期が、光景として、焼き付いた像として、何度も叩きつけられる。


 ——無理だ。


 理解した瞬間、頭の奥で何かがぷつりと切れた。

 悲しみも、怒りも、恐怖も、ひとつに溶け合い、重すぎる現実となって俺の意識を圧し潰す。


 「……あ……」


 声にならない息が漏れたきり、視界が傾いた。


 音が遠ざかる。

 重さが消える。

 暗闇が、優しく——残酷に、俺を包み込んだ。


 それからどれくらい、時間が経ったのか分からない。

 瞼を開いた瞬間、最初に目に入ったのは——空だった。


 夕暮れとも夜ともつかない、濁った暗い色の空。

 建物の隙間に切り取られたそれが、やけに遠く感じられる。


 身体が、重い。

 背中が、冷たい。


 起き上がろうとして、ようやく理解した。

 俺は——裏路地に、そのまま放置されていた。


 人の気配はない。

 声もない。

 あるのは、さっきまで確かに存在していたはずの現実が、まるで嘘だったかのような静けさだけ。


 ……いや。


 違う。


 あれは、夢なんかじゃない。

 胸の奥に沈んだ、ぬぐえない重みが、それを否定している。


 ——そして、この夜からだ。

 俺の中で、“ある感覚”が、静かに歪み始めたのは。



 *****



 安西たちから暴行を受けた、あの日を境に。

 俺の内側で、何かが確実に変わった。

 姉ちゃんを失った悲しみや、守れなかった後悔。


 それらは時間とともに薄れるどころか、形を変え、次第に“憎しみ”へと収束していった。


 ——奴らへの、明確な憎悪。


 皮肉な話だが、行き場のない悲嘆に沈み続けるよりも、

 誰を、何を、憎めばいいのかがはっきりしている方が、心は楽だった。


 その憎しみは、やがて復讐心へと形を変えていく。

 だがそれも結局は叶うはずもない、行き場のない復讐心。

 吐き出す先を失ったそれは、俺の内側で澱のように溜まり、ついには——俺自身の意識や肉体から切り離されるようにして、俺の一部でありながら独自の意思で動く“別の存在”として動き出していた。


 当時の俺は、まだそれを自覚していなかった。

 それが後に、生き霊となり、俺の憎しみそのものとして現れる存在——エグゼの原型だったことを。


 けれど。


 すべてが外に出ていったわけじゃない。

 安西たちが見せつけた、あまりにも残酷な光景。

 姉ちゃんを使い捨ての玩具のように扱った言葉と笑い声。

 それらの記憶は、復讐心とは別の形で、

 俺の心の奥深くに沈殿していた。


 それは、怒りにもならず、憎しみにもなりきれない。

 ただ静かに、確実に、時間をかけて心を侵していく“毒”だった。


 そして、季節は巡り。

 あの出来事から、数ヶ月が経った頃——。


 高校生活にも、すっかりと馴染んでいた頃だった。


 「朝比奈くん……少し、いいかな」


 放課後、見知らぬ女子生徒に声をかけられた。

 クラスも違う。接点もない。

 俯いたまま視線を合わせず、指先を落ち着きなく動かしている。耳まで赤い。


 ——察しは、ついた。


 校舎裏まで連れられ、人気のない場所で、彼女は小さく息を吸う。


「あの……私、朝比奈くんが好きです。

 よければ……お付き合い、してください」


 唐突で、まっすぐな言葉だった。


 彼女のことは、よく知らない。

 好きも嫌いも、判断できるほどの情報はない。


 けれど、部活もしていない。

 友達も多くない。

 断る理由は、思い浮かばなかった。


 ——学生らしい日常に足を踏み出すのも、悪くない。

 そう考えた、その瞬間だった。


 彼女の手想いに応えようとした刹那。


 脳裏が、一瞬で真っ白になる。


 瞼の奥に、あの日の映像が叩きつけられた。

 涙で歪んだ姉ちゃんの顔。

 腫れ上がった頬。

 必死に声を押し殺していた、その表情。


 「……っ、う」


 喉が、引き攣る。


 その引き攣りから逃れるように、続いて浮かんだのは、姉ちゃんの死を“事故”のように語った安西の声。

 嬉々として画面を突きつけてきた橘の笑顔。

 少し離れた場所で、他人事のように笑っていた桐谷。


 ——ああ、そうだ。


 あいつらを突き動かしたもの。

 姉ちゃんを壊し、殺した理由。


 それは——

 今、目の前に立っている彼女が向けている感情と、根源だけ見れば同じ種類のものだった。


 もちろん、分かっている。

 全くの同じではない。

 彼女に悪意がないことも、頭では理解している。


 それでも。


 "好き"という感情そのものが、

 俺の中で、歪んだ形で結びついてしまった。


 ——そんなものがなければ、姉ちゃんは死ななかった。

 "好き"は、悪だ。


 「朝比奈くん……大丈夫?」


 顔を上げた、その瞬間。


 吐き気が、込み上げた。


 俺に向けられる視線。

 好意という名の、期待。

 触れようとする意思。


 ——すべて汚れている。

 理屈じゃない。

 判断でもない。

 それは、もはや理性で制御できる領域ではなく、 ただ、生理的に、受け付けなかった。


 視線を落とす。

 胸の奥が、ざわつく。


 (気持ち悪い)


 心配そうに伸ばされる、その手が、近づく。


 (気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い)


 分かっている。

 彼女は、何も悪くない。


 ——それでも、無理だった。


 パシッ、と乾いた音が、校舎裏に響く。


 弾き飛ばしたのは、彼女の手。

 そして同時に、俺の中にわずかに残っていた"正常な感覚"だった。


 何も言わず、俺はその場から逃げ出した。


 振り返らず。

 説明もせず。


 ただひたすら、遠ざかるように。


 ——この日を境に、俺は理解することになる。


 俺はもう、誰かに向けられる「好意」を、まともに受け止められない人間になってしまったのだと。



 *****



 俺が憎しみから解放されても、観衆による断罪は終わらない。

 そして、心の奥に沈殿した“毒”は、今もなお、静かに俺を内側から蝕み続けている。


 姉ちゃんの魂がこの世から解放されれば——

 この時に芽生え、育ってしまった憎しみの名残も、すべて消えてくれるのだろうか。

 そうであってほしいと願う一方で、時折、どうしようもない不安が胸を締めつける。


 明日は、事件現場となった空き家の所有者に挨拶をする予定だ。


 その名は、桐谷 郁子。

 加害者の一人であり、姉ちゃんの尊厳を踏みにじる“場”を与えた男——

 桐谷 翼の母親。


 霧子さんに無理を言って、俺も同行させてもらえるようお願いした。

 彼女に会えば、何かが分かる気がしたからだ。 桐谷 翼という人間が生まれ、育ち、あのような行為に至るまで、その背後にあったものを、この目で確かめておきたかった。


 今もなお、俺の中に残り続けている。あいつらの悪意が植えつけた毒と、消えきらない憎しみの痕跡が……。

 それがどこから流れ込んできたのかを、知っておきたかった。


 それに備えて早めに布団に入ったものの、過去の出来事が次々と脳裏を巡り、意識は冴えたままだった。


 結局、眠れないまま。

 夜は白み、朝を迎えることになる。

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