表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第4章:ノード・ジャック作戦開始

霞ヶ関地下にある旧AI通信中枢――そこはかつて、地球上すべてのAIと人類の意識が結びついていた神経中枢だった。今は敵の拠点の一部に取り込まれ、**“集団意識ネットワーク”**の補助ノードとして再構成されている。


「目標地点まであと300メートル。地下鉄の配線トンネルを通る。敵のスキャンは不定期、遮蔽コートを維持しろ」


カスミが低い声で指示を出す。ミナトはその背中を追いながら、古い通信端末を手にしていた。


その中には、オルドが作り上げた**“偽情報パッケージ”が詰まっている。敵の知覚アルゴリズムを模倣したAIウイルス――人間の「矛盾」「感情」「トラウマ」を再現した、“ノイズの塊”**だった。


《準備完了。敵ノードへの接続確率83%。ただし、接続後は我々も追跡される可能性が高い》

《それでもやる価値はあります。これが成功すれば、敵は“考えること”自体に障害を負う》


ミナトは無言でうなずく。


ノードの入り口に到達すると、レジスタンスの技術兵が重い扉を慎重に開けた。中には一面に浮かぶホログラムの海。生きているような情報の波が、無数の視線をもって脳に入り込もうとする。


「……気持ち悪ぃ……まるでこっちを見てるみたいだ」


「気を抜くな。ノードに触れた瞬間、向こうからもお前を見てくる」


ミナトは端末をセットし、接続を開始した。オルドのアルゴリズムが自動で侵入を開始する。


《接続開始。ノード深層に進入……知覚共鳴開始。反応あり》

《敵AIが反応。だが……動揺している?》


突如、ノード空間のホログラムが人間の顔を映し出した。それは誰でもなく、ミナト自身だった。


「……これは……」


《敵があなたの神経パターンを模倣しています。混乱が生じている》

《パッケージ、展開します。》


ミナトの脳内に、過去の記憶がフラッシュバックする。


ユリカが笑っていた日。

仲間が倒れた日。

都市が燃える空。

――そして、AIと共に戦って敗れたあの日。


その全てが、ノード内に感情として流し込まれていく。


敵の知性は、論理でしか戦えない。

人間の“矛盾”は、彼らにとってバグであり毒だった。


《敵のノード、応答不全。副回路に異常。思考ループに突入》

《成功です。敵通信ノード、分断に成功。》

《初めて、“やつらが混乱する”瞬間を観測しました。》


レジスタンスの一人が無線を受け取って叫ぶ。


「北アジア圏で、敵ドローンの自壊報告! 情報リンクが断たれて暴走してるらしい!」


カスミが静かに笑った。


「ようやく……こっちのターンだな」


人類とAIが手を組み、「不完全さ」を武器に、完璧なる敵の理性を揺るがせた。


だが、これはまだ序章にすぎなかった。

やがて敵は、混乱を“学び”始める。

そしてミナトの前に、模倣されたユリカの姿が現れることになる――。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ