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エンゲブラ的短編集

メフィストファイルス

作者: エンゲブラ

彼を見つけたのは、ほんとうに偶然であった。

あの図書室で、あの天井ない牢獄で。

黙々と、ただ本を()()()し続けるだけの少年を。


(そんな読み方をして、何がわかる?)


疑問の答えはすぐに明らかとなった。

……カメラアイ?

なんだ、その面白い能力は。

だが、こんな所にいては、何にもならない。

君は、何者にもなれはしない。


彼の周囲の人間たちも、同様であった。

ただただ、彼の才能を惜しみ、尽力もした。

しかし、それらは徒労に終わった。


私は、彼らに触れることが出来なかった。

手助けすることが出来なかった。

そもそも、私と彼らとでは、存在の階層(レイヤー)自体が違うからだ。


私から彼らを見ることは出来ても、彼らから私を知覚することは出来ない。

彼らから私に祈ることは出来ても、私から彼らに触れることは出来ない。


私はただ、その少年を見守ることしか出来なかった。

そして案の定、少年は()()()()()()()()()()()()、ありふれた最期を遂げた。


私は彼を、かつて私がいた世界に送ることにした。


生前の彼には、触れることが叶わなかったが、魂の存在となれば、私の領域。

私以外にも、彼の魂に目を付けていた、この階層の存在たちは多数いた。

だが、彼の魂との()調()()は、幸運にも、私が一番近しかった。


私は、()()()()()()()()()()、私がかつて生きた、あの世界へ彼の魂を送る。

彼の魂がもたらす、あの世界の発展を祈りながら。

彼の行く末を見守ることは叶わないが、それは未来でもあり、過去でもある。


()()()なら、私以外にも無限に存在する。

彼の者らの目を楽しますべく、新たに生まれ直す世界の物語を。

私の魂と引き換えに、少年の手に委ねることとす。


挿絵(By みてみん)

連載作品『この転生には、いったいどのような意味があるというのか?』

(N0859JS)の前日譚。


彼はいったい何者に選ばれ、なぜ転生することとなったのか?

本編では語られない、神以外の存在による介在の余録。

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挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
願わくばもう少し長いバージョンで読んでみたいです
 観測者 = 読者 と勘違いしておりました。
 観測者、増えるといいですね。
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