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勇気の叫び

「あ、あ、あれをどう殴ればいいんですか?」

おじさんに聞く。


「お前をぶん投げる。悪夢まで一直線に

ぶっ飛ばすから近づいたら殴れ!」


ありえない作戦を言い始めた。


「いやいや無茶ですって、それも殴るだけで

あいつは弱るんですか?」

作戦が雑だし、俺の力で殴るだけでは

弱らない気がする。

だが、おじさんはやれやれと

いった感じで肩を竦める。


「あいつは、お前をいじめたやつらが

与えたストレスの塊だ。

つまりは、お前をいじめに立ち向かう

勇気があいつを弱らせる。

いじめと戦う心がお前には必要だ。

だから、殴れて言ってんの。」

真剣な眼差しで俺を見つめる。


「で、でも俺はそんないじめっ子にも

立ち向かえない俺ができるわけ・・わぁ!!」


胸ぐらを掴まれ

弱音が制止される。


「・・・お前、自分に腹が立たないのか?」

目から怒りを感じる。


「お前が苦しんでいる間、いじめたやつらは

ゲラゲラ笑っている。

お前が悲しんでいる間、いじめたやつらは

何も考えず苦しまずのうのうと生きている。

そんなやつらのせいで

あんなブサイクな化け物に

心まで喰われて死んだように人生を送るんだぞ。」


胸ぐらを掴む握力が強くなる。

ギッ軋む音がする。


「お前をいじめたやつにムカツクのは

当たり前だ。でもそのムカツクやつに

刃向かえない自分の弱さにムカつけないのか?」


「・・・俺だって歯向かいたい。

殴ってやりたい。あいつらをボコボコにしたい。

けれど、心が折れるんだ。

端から負けてしまうと思ってしまうんだ。

歯向かったって意味がないって

また、やり返されるんだって

どうしたらいいんですか。

どうしたらいいんだよ!!!!!」


今まで抑えてた気持ちが涙と共に溢れ出す。


「あいつらが間違えてるのに!!

友奈以外のクラスのみんな

が怯えて一緒になって

ゲラゲラ俺を笑って!!

いじめられないように外から見て!

先生も問題になると面倒くさいのか

相手もしてくれなくて!!!

誰も助けてくれないんだ!!!!

みんなみんなみんなみんなみんな

くそがぁぁぉ!!!

あぁぁぁぁ!!!うぅぅぁっ!!!」

涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになる。


「・・・この世界は残酷なんだ。

助けてくれる人なんて僅かしかいない。

もし、自分を助けれるとしたら自分だけだ。」

諭すように俺に話す。


「・・・お前はどうしたい?

そのまま泣き続けるか?

その泣きっ面を変えたいか?」

その言葉で嫌な記憶がフラッシュバックする。


無抵抗な俺を殴ったり蹴られたりする日々

あいらの甲高い下卑た笑い声

周りの人間の嘲笑

情けない泣き顔を鏡で見る日々



「・・・うぅぅっ。俺は、俺は!俺は!!!!

ぶん殴ってやる!!!!

間違えてること全てをぶん殴ってやる!!!

あの化け物だってふざけるな!!!

俺の心を壊させてたまるか!!!!!

あのごみくそたちのせいで苦しんだ人生で

いてたまるか!!!!!

くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

心から出た本音を叫ぶ。


「何だって殴ってやる!!!

だからおじさんが早くここから出よう!」

生気に満ち足りた目でおじさんを見つめる。


「ここから出たら何するんだ?」

ニヤついた表情しながら

おじさんから問いかけが来る。


「決まってるよ!

あのゴミクソどもをボコボコに

してやるんだ!!!!」


「はっ、OKその意気だ。

ならこれから作戦を伝える。

よく聞けよ。」


「ぁあぁぁぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

怪物がこちらを向く。

こっちに襲いかかる準備をしているようだ。


「いいか?作戦通りだぞ?」

再度、俺に確認してくる。

「てかこれ作戦なの?」

おじさんから聞かされた作戦が

雑すぎて作戦なのやら何なのやら。

「うるせぇ。行くぞ!!

せーーーーの!!!!」


おじさんが俺の足を持ち

ジャイアントスイングする。


「ブァブァブァブアァ!!!!」

勢いが強過ぎて口が震える。

辺りに風を巻き起こすほど

回転する。


「いくぞ!行けぇ!!!!」

十分回転させたあと

その回転力で悪夢に向かって

投げ飛ばす。


まさにハンマー投げの要領で

まっすぐに悪夢に飛んでいく。

 

悪夢の顔がどんどん近づく。

手で拳を握り力を篭める。

そして勢いよく殴るために

右腕を後ろに引く。


「おらぁぁ!!!!!!」

殴ろうとしたその瞬間。


「むぁぁぁぁぁぁぉおぉ!!!!!」

怪物が口を開く。


「えっ?」

駿の口から腑抜けた声がでる。


「あっやっべぇ。これマズイんじゃ・・・」

投げ飛ばしてたらまさか口を開くなんてと

思った瞬間。

駿が口の中に入っていった。


「まっずい!!!早く助け出さなきゃ!!」

怪物に向かって駆けだす。


その瞬間


どぉぉぉぉぉん!!!

と丸い形をした全長100mを超える巨体の

上部が針で内部から押されたように膨らむ。


どぉぉぉぉおん!!どぉぉぉぉぉぉん!!!

何度も上に膨らんでは形が元に戻る。

悪夢が苦しそうにしている。

「一体・・・これは??」

足が止まり、悪夢の異変を眺める。


どぉぉぉぁぉぁぉん!!!!!!!!

悪夢の上部を破り何かが飛び出した。


「俺を食べるんじゃねぇぇぇえぇ!!!!!」

駿が叫び声を上げながら

怪物の上部から飛び出てきた。


「え??嘘だろ??」

勇吾は目を丸くした。

「もしかして、使()()()()()?」

余計な考えが頭をよぎる。


「おじさん!どう!?そいつ弱った!?」

駿の声でハッとする。

怪物は、苦しそうにしている。


「あぁ!OKだ!!

ここまで弱ればいける!!!

来い!!豪心(ごうしん)!!」

10mくらいある

棍棒を何も無い空間から出す。

悪夢の下に潜り込む

下から上に思い切り振る 


「おおらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

悪夢が20mくらい中に浮く。

「ガァァァァ!!!!オォァアァ!!」

さっき棍棒で殴った時と違って

苦しそうにしながら口から何か

球体が飛び出す。


「それを殴れ!!!」

勇吾が叫ぶ。

「わかった!!」

空中から着地して、球体に向かって

風のように駆ける。 

もう目の前だ。

「そーーーーれっ!!!!」

球体を殴る。

その瞬間、亀裂が入り

ミシミシッと割れる音がする。

そしてパリーーッンと弾けた。

「ぐぁぁぁぁぉぉぉぁぉぉぁ!!!」

悪夢が叫ぶ。

空中であの巨体が黒い塵に変わっていく。


「・・・おじさん。もしかしてこれで、」

後ろにいるおじさんに聞く。

「あぁ、悪夢壊滅完了だ。」

ニヤリと笑ったような返事が聞こえる。 


「・・・っ!!よっしゃぁぁぁぁぁ!!!!」 

おじさんの返事で嬉しさや

生きて帰れる安堵が込み上げる。


「おじさん、最後の玉みたいなの何なの?」


「・・・最後の玉見てえなもんは、

お前の悩みの核だ。

あれが、ストレスを吸って怪物と化すんだ。

言わば悪夢の種だな。」

と説明される。

「ふぅん、そうなんだ。

意外に簡単に

壊せるものなんだね。」


「馬鹿言うな、人によって壊し方が違うんだよ。

今回殴るだけでよかったけど

もっと面倒くさいやつあるんだぞ。

簡単に壊せるとか言うな。」

と面倒くさそうな顔をしている。


「そんなの俺が知るわけないじゃん。」

と唇を尖らせて俺も返事する。


「こいつ急に生意気に

なりやがったよ、まったく。」

とため息をつきながら俺に近づく。


「でもまぁ、よく頑張ったな。」

俺の頭を撫でながら褒めてくれる。


「へへっ。ま、まぁね〜。」

嬉し恥ずかしかったせいか

生意気に返事をするしかなかった。


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