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檻の中の少女編(6)

 ロシア美女の悪霊から連日攻撃を受けた篝火は、げっそりと痩せていた。


 幸い仕事は楽で、すぐ慣れてしまったが、家に帰ると地獄だった。


 耐えられないという事になり、篝火はついに一人暮らしをしていたアパートの部屋を引き払う事に決めた。


 元々ミニマリストのような生活をしていたので、引っ越しは楽にすむかと思ったが、新居がなかなか見つからない。


 不動産屋を巡ったが、どこも悪霊が見えてしまい、それだけでも疲れてしまった。


「篝火太郎ー、どうしたん? 顔真っ黒なんだけど」


 そんな中、日曜礼拝が終わったら桜に声をかけられた。桜は元々カトリック信者だったが、いつのまにかこのプロテスタントの神谷教会に転会していた。


「そうよ、どうしたのよ。っていうかヤバいじゃない。あなた、ロシア美女みたいな悪霊くっつけてるんだけど」


 悪霊が見えるという直恵はすぐに篝火についている悪霊に気づいた。


「どーしよう。オレ何かやった?」


 他の教会員は帰ってしまったので、篝火は涙目で叫ぶ。なんとも情け無い姿に直恵も桜も深いため息をついた。


 そこへ牧師の悠一がやってきた。


「うん? でもロシア美女の悪霊、教会にいる間はけっこう大人しいね?」


 悠一も悪霊が見えるので、篝火の額、黒目を見ながら注意深く観察していた。悠一によると悪霊は教会が嫌いだそう。特に長年祈りと賛美歌が捧げられた場所にいるとかなり大人しくなるそうだ。


「そうね、今いるロシア美女の悪霊は寝てるみたい。今のところ他の悪霊と連携を取ったりはしないみたい。篝火くん、しばらく教会に住んだら?」

「は、教会?」


 直恵の提案に篝火は目をパチクリとさせる。


「そうね! それがいいんじゃない?」


 桜も賛成だったが、問題は一緒に住むであろう悠一だ。悠一もこの教会に住んでいた。礼拝室は2階にあるが、1階は牧師館だ。風呂やキッチン、トイレ、牧師室、悠一の部屋、それと使われていない6畳の和室があった。滅多にいないが神学生が実習にくるとき、使われていた部屋だともいう。


「いいんじゃない。そのかわり、家事はやって貰うぞ。あとオレは、夜に地域の悪霊祓っているから、その留守番はやって貰うからな」


 意外な事に悠一から一緒に住んで良い許可が出た。


「おぉー、助かったよ! 本当にロシア美女の悪霊に殺されるところだった!」


 篝火は感動して悠一に泣きつくが、本人はとても呆れていた。腕を組み、冷静だった。


「そんな事より、悪霊入った経緯を突き止めるぞ」

「あざーっす! なんでもするからこのロシア美女追い出してくれよぉー」


 こんな篝火と悠一のやりとりの直恵と桜は、呆れていた。


「私、こんな篝火の追っかけやってたバンギャだったなんて超恥ずかしいんですけど」

「桜、それは黒歴史ね」


 直恵と桜からは、白い目を向けられていたが、今の篝火はそれどころではなかった。


 こうして篝火は、悠一と共に京香に住む事が決定した。


 荷物を運び、空いてる六畳間の和室が、篝火の部屋となった。


 せっかく世話になるからと近所のスーパーで食材を買い込み、今日の夕飯は篝火が作る事になった。


 教会の一階にあるキッチンは、いかにも独身男性世帯という感じでろくな調理器具はなかったが、篝火が買ってきた百円均一で買った鍋、包丁、まな板だけでもそこそこ料理ができた。


 メニューはタイ風グリーンカレーだった。見かけは手が混んでいるように見えるが、百均で売っている特性カレーペーストを使うと、そこそこ手の込んでいる手料理に見えた。

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