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07 世界樹の模擬戦

 「何だよそれは!」


雷を纏うレナ・バースの双剣が宙を舞う。バチバチと音をたてながら刀身が消える程、地面に突き刺さる2本の剣。そして尻もちをつくレナ・バース。


 他の冒険者達は開いた口が塞がらない。ドドルも口が塞がらない。


 「何だよって私の枝だよ?」


マナが右手に握るのは、レナ・バースの剣を真似て、自身の身体から具現化した…世界樹の枝。


 自分でも、こんな事が出来るなんて知らなかったが、レナ・バースが鞘から剣を抜いた姿を真似て見たら光の中から枝が現れた。


 「枝は見れば分かる。その強さは何だよ!」


レナ・バースは、まぁ軽くね!と雷を双剣に纏わせて見た目だけ派手にした、ゆる〜い斬撃をマナに放ったのだが、その斬撃を防いだ青白く輝く枝の圧に押されて逆に吹き飛んでしまった…


 「枝は枝なの!枝の強さは枝に聞いてよ!」


 次は手加減なしで行く…


レナ・バースは起き上がり黒艶の革のパンツの汚れを手で払う。そして腕をあげて身体を伸ばし深々と地面に突き刺さった愛剣を抜きとった。


 「全力で防ぎなよ!」


先程の雷とは規模が違う…まるで意思があるかの様に刀身から放たれる雷がどんどん大きくなって行く。


 「紫電…」


速い!雷の放出が止むと同時にレナ・バースの姿が消えた。戦いを見守る冒険者達の何人がレナ・バースの動きをとらえただろうか?


 マナは目の前から消えたレナ・バースに驚く。そして

危険な予感がした。


でも分かる。雷さんは何時も私に意地悪してきたから。

あれは…1万年位前だったかな?私がまだ小さかった頃、黒い雲に隠れて良く私に体当たりしてきたから。痛かった。体当たりされた場所は何時もヒリヒリするの。でも雲より大きくなったら雷さんは悪戯をやめた。だから、今の私が小さいから貴方は空から悪戯する気でしょ!


 「ほら!あたりだ」


 レナ・バースは空中で双剣を重ね両手持ちに切り替え雷ごとマナへ斬りかかる。


 雷を纏った双剣は確かにマナをとらえた。ぶつかる圧力で吹き飛ばされる冒険者もいた。


 ドドルはマナが心配でたまらない。しかしAランク冒険者として断言出来る事がある。


 あのレナ・バースと言う女剣士は間違い無くAランクでも通用する実力があると。


 「だから…何なのよ…その枝は…」


再び、宙を舞うレナ・バースの双剣。そして衝撃で吹き飛ばされたレナ・バース。


 手加減はしていない。


私の全力は、あのお嬢ちゃんの枝に軽々と防がれた。本当に私はAランク間近なのかしら?


 だとしたら…あのお嬢ちゃんはAより上の存在ね…


冒険者達は何を見たのだろうか?レナ・バースはエバーダでソロ最強説がある。その彼女が一撃も当てることなく地面に倒れている。


 「お嬢ちゃん大丈夫?」


地面に倒れているレナ・バースを心配そうに覗き込むマナ。あんなに吹き飛ぶとは思っていなかった。


 「ハハ…お嬢ちゃんは、君だろ?アタシは24歳だぞ。君より歳上だ。」


 レナ・バースの言葉にマナは首を横にふる。


 「私は一万と…二千歳位だよ!正確には数えていないけれど…」


 「ハハ…何だよそれまるで世界樹じゃないか?」


 「そうだよ!私は世界樹…エターナルマナだもん。」


レナ・バースは倒れながら涙を流した。誰にも見られない様に腕で隠しながら…泣いた。


 こんな少女に心配されて冗談話をされるなんて…


 油断?慢心?…エバーダ最強と言われてその気になっていたのかな?


 今日は泣けるだけ泣いてしまおう。そして明日から、もう一度…最強を目指す。


 もう誰にも負けたくないから…


 数時間後…


 マナは冒険者になれた。模擬戦の強さが評価されたのだ。


 ドドじいと同じネックレスを首から下げる。色は緑色で違うけど…形は一緒。Fと彫られたプレートをドドじいに見せるマナは嬉しそうに笑っていた。


 「あのお嬢ちゃんに御礼をしないと!」


広場のベンチでひとり腰掛けるレナ・バース。敗けた彼女に誰も声を掛ける者は居なかった。慰める言葉が無い程の圧倒的な差での敗北。そして、他の冒険者達は分かっていた。自分が戦っても結果は同じだった事を…


 「ありがとう!冒険者になれたよ。」


ベンチに座るレナ・バースの前に緑色の冒険者プレートを見せるマナ。その表情を見て彼女は笑ってしまった。


 「随分強いFランク冒険者が現れたな!」


褒められた。マナは嬉しい。取り調べ室で怒られて、デコルギルド長には叫ばれたのに、彼女は褒めてくれた。


 「貴女も良い人間さんだね!だから御礼するね!」


青白く輝く枝をレナ・バースに渡しドドじいの背中にしがみつくマナ。お腹が空いたとドドじいを急がせ、その場から立ち去った。


 またね!マナのその言葉にレナ・バースは優しい表情をしながらマナの背中を見つめていた。




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