06 復活のＡランク冒険者
「本当にやるのか？」
診療所でドドルの身体を診察するガゼルボは心配する。
冒険者は危険だ。魔物や揉め事で命を落とす事は珍しくはない。
メディカルチェック…
冒険者へ再登録する為の診断書を貰いにドドルはガゼルボの診療所を訪れた。
「問題は無いが…無理はするなよ！現役を退いて３０年だ…幾ら元Ａランク冒険者でも甘い世界じゃないぞ！俺は…仲間だ。お前の死体なんか見たくないからな！」
もし魔物に殺されたら検視される事もある。おそらくギルドと繋がりがある、この診療所に連絡がくるだろう。
…死体が残っていればの話しだが
ドドルは死ぬつもりは無いとガゼルボの胸に拳を当てて診療所をでる。
そしてまた、ボロくさい仮ギルド庁へ足を運んだのだが現役の冒険者達に囲まれてしまった。
この前のお礼参りか？
ドドルは右腕に力を集めて様子を伺ったが冒険者達の目つきに殺気はなかった！
「ドドルさんだ！本物だ！あの爆腕のドドルが帰って来たぞ！」
なんじゃ…これは？
冒険者の強さを測る一番の目安はランクだ。Ｆ〜Ｓまで存在するランク。冒険者の平気ランクはＣだ。Ｂランクまで行くとギルド内での発言力はかなりのものとなるし依頼達成金も段違いで良くなる。
しかしＡランクとなれば世界で数えれるほどしかいない。この冒険者の街エバーダでもドドルが引退してからは誰もＡランクまで登りつめていない。
しかもドドルは金に欲が無かった。こまった人がいればランクなど気にしないで助けた。強面の顔で寡黙…そして世話焼きで優しい男。見た目のギャップがドドルを人気冒険者へと押し上げた。
だからギルドで暴れた男があの爆腕のドドルだと知った時に殴られた冒険者は喜んで仲間に自慢したそうだ。
「儂はジジイじゃ…お前らには勝てん！」
なら私が看病します。と若い女性医療班がドドルを囲みだした。
「あん！素敵な腕ね…」
ドドルの腕を触り頬刷りをする女性達を見ていたマナは無性に苛々してきた。
「私のドドじいに触るな！」
こいつらからは略奪の臭いがする。妖精さんが言っていた…人族は略奪を好むって！
「な〜に？ちびっこちゃん！」
ちびっことは私の事かな？貴女達は何も知らないのよ。自分達の方がちびっこだと言うことを…
私は世界樹…誰よりもこの世界で大きいのよ！
マナと医療班の女性達が睨み合っている隙にドドルは受け付けを済ました。
黒いプレートがついたネックレスを、首につけるドドル。
３０年ぶりに、このエバーダの街にＡランク冒険者が現れた。冒険者達は英雄の帰還を歓迎した。まさか自分が冒険者へ戻るとは考えていなかったドドル。
全てはマナと出逢ったから…裸で現れた謎の少女との出逢いが儂の…
「ドドじい！私も冒険者になる！」
ひとり思いに耽るドドルの袖を引っ張るマナ。鼻血を流しながら笑っていた。
「あの子…破壊少女だよな？」
鼻血を流したのは医療班の女性達と喧嘩をしたからだ。
その一部始終を見ていた冒険者達は少女の体術に驚いていた。
ギルドを破壊したやばい少女。彼女は何ものだ？
冒険者達のざわつきは薄い壁の建物内に響いた。そして医療班の女性達は恥ずかしくも恐怖し下半身から何かを漏らしていた…
模擬戦？
ドドルはマナが冒険者になる事を反対した。冒険者になるには幼すぎる。危険だ…
しかし、周りの冒険者達がマナを推す。ドドルの心配をかき消す様にマナは冒険者達に促され広場に向かう。
「試験官は誰がやる？」
中年冒険者の言葉に冒険者達は互いに顔を見合う。やるのは良いが…万が一負けたらどうしよう？
強い新人は何時の時代にも居る。ドドルもそうだったし、デコルギルド長も該当する。
しかし、今回は少女だ。勝っても負けても何か後ろ指をさされそうな気がする。
冒険者は顔を売る事も重要だ。もちろん良い意味での話しで悪評は御免被る。
「アタシがやろうか？」
冒険者達から少し離れた場所から見ていた赤髪の女性。腕組みをしながらこちらを見ている。
雷剣姫レナ・バース…
彼女は、エバーダで最もＡランクに近いと言われているＢランク冒険者。細見の腰に装着された銀細工が施された鞘が輝いている。
レナとマナは広場の中央で向かい合う。
ドドルは辞めさせたいが、この異様な熱気が妨げる。
「貴女は誰？」
「アタシはレナ…レナ・バースだ。よろしくな！お嬢ちゃん！」
ドドじいと同じ事がしたいマナ。周りに唆されて模擬戦を行う事となる。
果たして勝負の行方は？
