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15 世界樹の憂い

 「ちょっと…マナちゃん。これは消せるの?」


 唇をかみしめて瞳を閉じて首を横にふるマナ。


 今日も二人は依頼を見てエバーダの南に位置する橋に来ていた。


 討伐・長舌フロッグ


朝に冒険者ギルドで見つけた依頼書。街の南方面の通行の際に、必ず通るエバーダ川に架けられた橋。最近この橋の付近で長舌フロッグと言う魔物の群れが通行する人々を襲うらしい。


 マリィ受付嬢がここに来る前に詳しく教えてくれた。長舌フロッグは炎系や雷系の攻撃に弱いと。


 雷剣姫の二つ名があるレナ・バースは名前の通り雷属性の攻撃が得意だ。雷属性を扱える冒険者は稀だ。


 レナ・バースがいれば討伐の確率はかなり高くなる…


そう言っていたマリィ受付嬢。そう言えば彼女は首元に淡いピンク色の宝石が目立つネックレスをしていたが…


 レナ・バースは思った。受付嬢の給与で、そんな高価な宝石が買えるのかと…


 そして二人は街から1時間程歩いて、この橋に来た。

確かに長舌フロッグ達がいた。しかも大量…体長は、マナと同じ位だ。橋の側面や裏に張り付き長い舌を鞭の様にしならせ通行人や荷台を引く動物を襲っている。


 「危ない!!」


二人が到着した瞬間、目の前で自分より大きな荷物を背負う男性が足首を長い舌に絡まれ、川に引き込まれそうになっていた。


それを見たレナ・バースは瞬時に腰の双剣を抜いた。走りながら姿勢を低くし数メートル先の男性へ一足飛びでむかい、身体を反転させながら器用に絡まる長舌を斬り刻んだ。


 「お嬢…かっこいい!」


 マナは、お嬢の後ろ姿を見て感動する。


 あれが妖精さんが言っていた誘惑の女騎士さんね!


 人族は身に着けるものにこだわる。特に雌はその傾向が強い。危険な魔物や敵対する人族と命がけで戦う時でも素肌を見せて戦いたがる。


 雌特有の膨らむ胸部は雄より弾力と柔らかさを兼ね備え、動きが加わると上下に揺れる。その膨らみと揺れは

命がけの最中でも雄の目線を奪うそうだ。


 また下半身も胸部に匹敵する程の誘惑さがあるのだと妖精さんは言っていた。


 雌の下半身は年齢が若いと弾力と張りがまるで希少種の果実の様に瑞々しく雄の視線を集める。そして雌は年齢が上がると、瑞々しい下半身が熟れるそうだ。少しだらしなく見える肉つきが逆に雄を誘惑するらしい。


 「世界樹様、僕はね少し熟れた女騎士が好みだよ!」


あの妖精さんの名前…忘れちゃった。だってずっと私の枝の上で話しながらハァハァしているんだもの。


 名前なんか聞いても忘れちゃう。


 ハァハァ…ハァハァ…うるさいんだもん!


 でも…ハァハァ妖精さんの話しは本当だったんだ。

 

 私は今…お嬢の後ろ姿を見ている。胸部は見えないけど揺れたのかな?


 きっと揺れた!だってお嬢のお尻の肉つきが布を食べる様にくい込んでいるもの。


 私もあのお尻に誘惑されてるのかな?見たら駄目って思うけど…目線が外れないのよ!


 私は雌よね?…でも胸はぺたんこだし…お尻もぺたんこだよ。


 「駄目!戦いに集中しないと。まだわからない事は沢山あるんだから。とりあえず後でお嬢に服を脱いでもらって身体見せてもらうの!」


 男性を助けたレナ・バースは避難させながら、長舌フロッグの舌を次々に斬り刻んだ。


 「お嬢!助太刀だよ!」


マナは世界樹の枝を振り回しながら橋の中央に向かったのだが…毛むくじゃらの魔物同様に長舌フロッグ達はマナを見ると一斉に川に飛び込んで身を潜めた。


 「毛むくじゃら達に続いて…ツルツル達も私の事…」


 マナは震えた。逃げるな!正々堂々と戦え!…お嬢とは戦うくせに…私のなにが嫌いなのよ!


 「お嬢…帰ろう…」


マナは肩を落とし橋の中央から街へ戻ろうとする。その姿を見て長舌フロッグ達は喜んだ。


 ゲコ!ゲコ!ゲコゲーコ!!


 マナは何故か苛々した。耳障りな彼奴等の鳴き声が、私を馬鹿にしている様で悔しくなった。


 「もう我慢できないんだからね!!」


マナは橋を過ぎた所で振り返る。そして地面に両手をついて呟いた。


 「まだ陽を見ぬ白き種よ…私の愛で陽の目を見て!」


 レナ・バースは目の前でしゃがみ込むマナを見て寒気がした。


 また…あれがくるのか?


 「行くよ!六千年の憂い!!」


 前回は三千年と言っていた。……ちょっとまってくれ

マナちゃんは今…六千年と言った。単純に前回の倍の力を使ったんだろ?


 三千年で農村地帯が消えたんだ…今回はどうなる…


 私が構えた所で無力以外の何者でもない。


 住む世界が違う。まだ私は良い方かな?彼女は私を好きだと言ってくれるから………


橋の向こう側が見えなくなった。そしてその橋も消えた。川は有る。確かに川は有るが…現れた巨木達の隙間から僅かに水面がきらめく程度で、つい先程までの姿は確認出来ない。


 そして川の流れに沿って護岸際に広がった巨木達はどこまで広がったのだろう?


 私は目が良い方だけど…駄目だ巨木の終わりが見えない…


 橋の向こう側の人達はどうするのだろう?確か北上したら違う橋があったと思うけど…この規模だと絶望的だろう。


 「まいったか!逃げるとこうなるんだ!」


世界樹の枝を再び振り回すマナ。その顔は私はまだまだ戦えるといった表情をしていた…



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