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23話 レアDコア

 外は雨がざぁざぁと降りしきり、電気がない俺の家は薄暗い。薄暗い中でソファに座り、等価交換ストアにゴブリンキングを倒した際に手に入れたレアDコアをガシャコンと投入して、一覧を見て唸る。


「ステータスポーションはこれかぁ……」


『ステータス200アップポーションD(制限1200):レアDコア1』


「今は430だぞ、俺たちのステータス。ソロでのレアD魔物は総合ステータス数値1200というわけかぁ」


 よくキングを倒せたなと、防人は雫がなぜ片腕を失いながら倒したのかを痛感した。猟銃がなければやばかった。それだけ銃は強いということだ。キングのステータス総合値はソロでの行動をとらないから、カンストステータスではないだろうが。それでも1000ぐらいはあるんじゃね?


『ステータスアップは着実に上げないと後々で苦労します。なので、早々にこの状態を解決するべく、このスキルを手に入れましょう』


 幽体雫が、ちっこい人差し指で指差す。その先にはあるスキルが載っていた。


『限定1:逆境成長:レアDコア1。格上を倒すことにより時折ステータスがアップする(ポイントとして保管されます)』


『私の推測したところ、スキルレベルはモンスターのランクに合わせるとですね』


 G:スキルレベル0、F:1、E:2、D:3


『となると考えます。ステータスアップポーションを大量に集めるのは厳しいですからね。逆境成長はポーションを集めずにステータスを一気に上げるスキルです。私たちの能力なら格上の敵を倒すことは可能だと思いますし、格上の敵はある程度のステータスが離れているか、ランクが高い魔物が対象になるので、このスキル、絶対に欲しいスキルだったんですよ』


「まるで全てのスキルを網羅しているような発言ありがとうございます。それじゃ、覚えまーす」


 ボタンを押下するとカシャンと音がして黒い粒子が身体に吸い込まれる。………いつ見ても身体に悪そうな粒子である。


 手をワキワキとさせるが、さっぱり感触がない。まぁ、ステータスを上げるのではなく、倒した際にステータスが上がるスキルだから当たり前か。


『これを持っていた人はすぐに死ぬ。という呪われたスキルとも言われていますが、格上ばかりを狙えば、そりゃ簡単に死にますよね。そこで残機スキルです。このスキルとの相性は抜群で最高なのですよ』


 ふふーんと、雫さんは胸を張って、空中をくるくると後ろ回転しながら得意げな顔を見せる。そりゃ、残機スキルがあれば死ににくいからな。考えられたスキル構成だ。


「まぁ、地味だけど先々に使えるスキルだな。これって、他に持っている人いるんかね?」


『死んでいるから、この一覧に載っているんです。このスキルの持ち主は存在しません』


 ちっちっちっと小鳥が鳴くようにドヤ顔で少女は教えてくれる。謎のタメなども特になく。


「さらっと謎な答えをありがとうございます。なるほどねぇ。限定1は伊達ではないということか」


 雫の謎な答えに、等価交換ストアのヤバい能力の一端を知りつつも、気にすることはないと防人は息を吐く。


「さて、では、階下に行きますか」


 コキリと首をまわして凝りを解しながら、一階に降りてゆくのであった。


 あれから8日経過している。昨日、じゃが芋を収穫したので捌く先を花梨に教えてもらうのだ。





 階下はバリケードがなくなり、階層ごとに影虎シャドウタイガーを配置してある。感知能力も大幅に上がった影虎と以前に作った黒猫も目立たぬ所に隠れているので、不意打ちにも対抗できる配置となっている。黒虎と名前をどちらにしようか迷ったが、海老になるので止めました。


 10階以下には女子供たちが住処をせっせと作っている。ホブゴブリンすらも倒す影虎は、護衛として完璧です。だから、そこの子供たちは影虎に乗って楽しまないで。


 安心して暮らせる住処を手に入れるため、埃だらけ、ゴミだらけの場所をせっせと掃除して、瓦礫を苦労して運び、錆びた机を磨いて、ベッド代わりにして、その上に掛け布団を運び込んでいた。部屋の扉にはダンボールで作った表札をペタリと貼ってある。


 レベル3の使い魔は強えなと思う。こっそりと何体もの影蛇も潜ませているので、銃以外なら攻撃を防げる。


 正直、ちょっとした要塞です。暇な時は延々と使い魔を創造していました。影の中に潜っている奴らもいるんだよ。100人程度の人間が攻めてきても楽勝で撃退できます。


 一階に到着すると、外れた扉は修理されて、一応部屋となっている。玄関ロビーも掃除されており、食堂はこちらと書いてある看板が置かれてある。食堂の場所で食い物を配っているのだ。


 人々が大勢出入りしており、急ピッチで外観を修理もしている。信玄は本気で俺をボスとするらしい。いや、社長か。


 影猫や影虎をレンタルして、魔物を退治しまくり、コッペパンに交換しまくり、子供たちと共に闇市で売り払う。1000人がぎりぎり食べられる稼ぎを出しているが、給金はない。よく、俺の下にいるよな。ボスだった前の方が暮らしは良かっただろ。


 まぁ、それも今日で終わりかもしれないけど。


 応接間の前には大木君たちが門番として立っている。


「社長。もう花梨の奴は来てますぜ」


「お客様を奴呼ばわりするのはやめとけよな。それじゃあ、お邪魔しますか」


 ガチャリとノブを回す。おぉ、久しぶりにノブを回した感じがするぜ。


 中には既に花梨が暇そうにして、布が破れて綿が飛び出ているソファに座って、足をパタパタと振っていた。猫耳をピクピクと尻尾をふりふりと。


「お、久しぶりニャンニャン、防人。なんかいつの間にか勢力拡大しているにゃんね。なんで信玄がここにいるにゃ?」


 対面には信玄が座っており、暇そうに茶をすすっている。それを不思議そうに花梨は見ている。


「防人の奴はスキルレベル3になったんだよ。どうせ知っているだろ? 影虎の力を。こいつスタンピードを一人で終わらせちまったんだ。で、会社を設立したと聞いたから、入社したんだ」


「………その話は既に聞いたけど、本当なんにゃね。信じられない話にゃ。影虎の性能も見たにゃ。あれが量産できるなら、ここらへん一帯は安全になったということにゃよ。何体作れるにゃ? 本当にスキルレベル3で、あんなの作ったにゃ?」


「まるでスキル3の奴を他に知っている口振りだな。いや、それ以上を知っているな? どこのどいつとは聞かねぇよ。どうせ内街の奴らなんだろ?」


 ソファに俺も座りながら目を細めて花梨を見つめる。ギクリと花梨が体を震わす。


「あぁ、なるほどな。そういうわけだったか」


 信玄が口元を歪めながらソファに凭れかかる。ピンと来たのだろう。俺もピンと来たのはこの間だよ。こいつ内街のストアの数を知ってやがったからな。


 内街のストアの数を知るためだけに、内街に潜入するなどは絶対にしない。あそこは半端なく警備が厳しいんだぜ。見つかったら即座に射殺だ。影蛇や影烏なら気づかれないし、気づかれて倒されても痛くも痒くもないが。


「あははは。なんのことやらわからないにゃ?」


 頭を振って、尻尾をハテナに変えて惚けようとする猫娘。


「でだ、このじゃが芋を内街に売り払いたい。外街に売ろうと思ったが、内街の方が高く売れるからな」


 金になるなら何でも良い。外街より遥かに高く売れるだろうよ。数倍の値段で売れるんじゃないかな? そこに拘りは持たない。廃墟街の人々は内街の連中を羨んでいるが、利用できるものはするのさ。


「あの、あちしが内街の連中とのコネクションを持っている前提で早くも話を続けないでほしいんだけど? 外街の連中を通さずに内街の連中と取引をしたら、外街の連中は黙っていないにゃよ?」


「たしかになぁ。外街の連中は銃も多く持っているだろうからな……んん? 奴らって、銃そんなに持ってんのか?」


「抗争に使っているから、もっているはずだけど……そうだな、奴らが大挙して廃墟街に来たら、銃を手に入れるチャンスだな」


 整列して一斉射撃をするほどの部隊レベルでは持っていないだろう。少数でなら、全員片付ける自信あるぞ。


「あー。あちし、外街にここの危険性をたっぷり広めておくにゃ! だから、たぶん黙っていると思うにゃ!」


 大声を挙げて、花梨が両手を挙げて、尻尾も挙げて。尻尾をピンと伸ばしたか。


「まぁ、数人の銃持ちなら鴨になるだけだからな。ここの勢力に銃が大量に入ったらまずいよな? 花梨よ」


 ニヤニヤと信玄が口元を曲げて、花梨を見る。暗殺者が来る可能性もあるが、所詮外街の連中の雇う暗殺者だ。大したことはない。鉄砲玉に拳銃を持たせて突撃させるようなことはできないのだ。今の銃は札束と同じ価値があるからな。


「さて、じゃが芋はこれだ。……種芋って、一つを植えるんじゃないのな」


 部屋の隅に置いてある木箱を持ち上げて、テーブルに置く。花梨の困った表情は無視しておく。どうせ答えは決まっている。


「たしかに儂も勘違いしてたぜ。種芋って、細かく切って植えるんだな。驚いたぜ。じゃが芋を育てた経験の持ち主がいて良かった」


 ウムウム、驚いたよなと、信玄と二人で頷き合う。種芋って、丸ごと植えるんじゃないのね。やけに巨大なじゃが芋だったんだが、芽を中心に細かく切るらしい。


「むぅ……このひと箱だけじゃないんだにゃ?」


「もちろんだ。これが20箱あるぞ。1箱30kg。600kg。改めて見ると凄いな。これ1週間で収穫できたんだぞ。芋がどんな種類か知らんけど。1kg500円で30万円。よろしく」


「既に金額すら決めてるにゃ!」


 花梨がバンバンとテーブルを叩いて抗議するがスルーしておく。


 大きめの芋がぎっしりと入っている。新鮮で美味しそうだ。ストア製で、少し怪しいけどな。


「昔と違って、じゃが芋も高価、だろ? いや、今の内街を知らんけど。外街じゃこんなに新鮮なじゃが芋は買えないし買えても1kg3000円は固いだろ? というか予想以上の量だから外街に売れん」


「うぬぬ……」


「月に4回売り払いたい。2割は懐に入れて良いぞ?」


「のったにゃん! うぅ……きっと悪目立ちするにゃんこ?」


 即座に決心する花梨に、俺は頬杖をつく。


「いいんじゃないか? 手に入れた現金で外街から大量に物を買って市場を廃墟街に作るつもりだからな」


「市場を? 闇市を作るつもりにゃ?」


「あぁ、廃墟街独自の市場を作り、廃墟街に金の流れを作らなきゃならんからな」


 好景気にするにも、まずは経済圏を作るところからだからな。


 ゲームでもそうだろ? まずは市場を作りましょうってな。

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― 新着の感想 ―
市場から作り始める系のゲームは途中から何作れば良いんだっけってなってやらなくなるやつだからあかん
[良い点] もう一度読み直し中。 〉感知能力も大幅に上がった影虎と以前に作った黒猫も目立たぬところに隠れているので、不意打ちにも対抗できる配置となっている。黒虎と名前をどちらにしようか迷ったが、海老…
[良い点] ストアのスキルがチートくせェなぁと思いましたがこれ位のチートが無いと、推定未来人か一週目の人間である雫の世界が滅ぶんだろうなぁと思ってます。 後は主人公自身の努力が報われたとかかな? [一…
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