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アースウィズダンジョン 〜世界を救うのは好景気だよね  作者: バッド
9章 有名になる企業

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164話 レンタル

 天津ヶ原コーポレーションの本社、最上階のペントハウスにて、いつものリビングルームで大量の資料を読んでいた。新拠点はうまく稼働しているようで安心する。これで食糧問題もなんとかなるか。


「凄え、さすがは兄貴! あの下水道、どうやって作ったんですかい?」


 資料を読んていたので、雑音は聴こえない。聞こえてこないったら聴こえない。ハエでも飛んでいるのかな?


「埃も汚れもなくて、スライムを放流した時に驚いちまいましたよ」


「はぁ〜。……大木君、もしかしてハシゴを降りていったわけ? マンホールの蓋を開けて、放り込めば良かったのに」


 雑音ではないらしいので、諦めて嘆息しながら対面に座る大木君をジト目で見る。


「だって、ハシゴから落としたらスライムなんか死んじまうかもしれないじゃないですか。で、降りたらびっくりしやしたよ。ピカピカのコンクリートの床で」


「真面目だな、大木君。もしかして、周りに凄え凄えと吹聴しながらここまで来たのか?」


「へいっ! 兄貴の魔法凄かったですからね! 俺は周りに兄貴の魔法の凄さを自慢しながらきました!」


「あっはっは! さすがは大木君、ありがとうと言っておく。ほら、これは報酬だ」


 指をパチリと鳴らすと、闇猫が札束を棚から取り出して抱え込むと、2本足でとてちたと可愛らしく歩いてくるので受け取って、そのまま大木君に手渡す。結構大変な仕事だったと思うからな。足組みをして、冷徹な笑みで腕を組む。


「俺の魔法だと、その勢いで吹聴してくれ。これからもよろしくな」


「うほーっ! 了解です。この本多忠勝アサルトバスターに任せてくだせえ!」


「その名前、長すぎるだろ」


 大木君が飛び上がるほどに喜んで、札束を手にすると頭を下げて去っていった。


 まぁ、今回苦労させたしな。頑張って俺の魔法だと周囲に吹聴してくれ。


 大木君の代わりにドアからぽてぽてと幼女が入ってきて、俺の姿を見つけるとパァッと輝くような笑みで俺に駆け寄ってくると膝の上にふんすふんすとよじよじと登って、定位置だよと満足そうに座る。


 苦笑しながら、その頭を撫でて癒やされる中で、幽体の雫がコテンと不思議そうに首を傾げて俺の顔の前に近寄ってくる。


『防人さん、良かったのですか? 精霊石による地形変更を土魔法と言い張るのは無理があります。周囲に防人さんの魔法だと吹聴されるのは面倒くさいことになりそうな予感がしますが』


 怪訝な表情で俺の顔に触れるほど迫ってきて聞いてくるが、近寄りすぎて、くっつきそうだと思いながら、目を細めて口端を曲げソファによりかかる。


『たしかに大木君のやったことは、明らかにまずい。だがなぁ、元から対応策は考えていたんだ。これは幸運だったと思いたい』


 キャッキャッと撫でられて嬉しそうにますます頭を押し付けてくる幼女をちらりと見て答える。


『対応策ですか?』


『そうだ。明らかにコンクリートの新品ピカピカの下水道を魔法で作るなんておかしいだろ。土魔法でそんなことはできないことは明らかだ。と、するとどうするか?』


 人差し指をたてて、説明をする。出来の悪い話のように新品の下水道を作っても誰も不思議に思わないなんてことはあり得ない。


『魔法ではない。ならばスキルかと言われれば、微妙だよな。案内板は無くとも、あそこまで立派な下水道を作ることができるスキルはあるのか?』


『ないですね。そんなスキルがあれば、どんどん要塞を作ってダンジョンに対抗できたはずですので。建築スキルはありましたが、大量の資材は必要でしたし、時間もそれなりにかかりました』


 宙をイルカのように泳ぎながら、雫は自身の知識から伝えてくれる。


『だよな。相手からしたら訳がわからない。常識から考えても下水道を一瞬で建造できるとは思えない。俺が下水道を一瞬で作れるようなスキルを持っているなら、なんで今まで使わなかったのか? との疑問に行き着くだろう。その場合、解決的な答えはなにか? となると』


 まぁ、この考えも無理があるとは思うんだがと、苦笑いをしつつ言う。


『密かに下水道は建設されていたということだ。微かに地面を揺らしてマンホールの蓋が地面からせり上がってくる。おいおい、明らかに既に作られていたんだろ、それ。おっさんが使った魔法だと周囲に自慢している。お前、それは騙されているよ、とな』


『はぁ〜、なるほど。たしかにそうかもしれませんね。魔法だと吹聴しているのは明らかに虚言を広げていると、周囲に思わせるためだと』


 雫がポムと手を打って感心する。そのとおりだ。大木君が得意げに周囲に吹聴すればするほどに、周りは生暖かい目で、それは凄いと棒読みで答えながら、頷いてくれるだろうな。


 土をかぶせて隠しておいたマンホール蓋を、魔法で土を取り除いてみせた。イリュージョニスト防人というわけだ。


 もちろん、地下で工事をしていたのに気づかれなかったのはおかしいとも思う奴もいるはず。だがなぁ、そこらへんは自身の常識から、想像を当て嵌める。その想像は創造だと気づかずに。そうして理屈のつく方法を創造して、納得してくれる。俺が何もせずとも。与えられた情報が少なく、想像できる部分が多いほど、自称名探偵が増えるだろうさ。


『そこで天津ヶ原コーポレーションにはやはり黒幕がいると考えさせるのですね』


「あたち、くろまくになりゅ! むふーっ」


 幼女が興奮気味にちっこい手をあげて立候補するが、幼女に黒幕は無理だぜ。


『うまくいくかはごろうじろ。この策略の代金は大木君に渡した百万だけだ。あいつはきっと酒場でモテるだろうぜ。念の為にあいつの影に闇虎と闇蛇を忍ばせておいてあるしな』


 余程の敵でなければ、大木君は安全だろ。ニヤリとおかしそうに笑ってしまう。


『防人さんの頭の良さに惚れ直します。好感度制限がまた限界突破しましたよ』


 むふふと、頬を手で押さえながら、顔を赤らめる雫と、雫の真似をして、頬に手を当ててキャアキャアと面白そうにする幼女。


『ありがとう。照れるが、さて、下水道の話はここまでだ。そろそろ訪問者が来てくれるだろうからな』


 苦笑しながら、伝わってきた信号に目を細める。


 道路に配置しておいた影猫たちが、接近する装甲車群を確認したと伝えてくる。待っていた者たちが訪れたようだ。お茶の準備でもしておくかね。







 天津ヶ原コーポレーションの前に、装甲車群が止まるとぞろぞろと兵士たちが出てくるのを、配置しておいた闇猫の視界を共有して眺める。


 ちなみに闇猫や影猫。違いがあるのは、マナの消費量が違うからだ。影猫はマナ10で済むが、闇猫はマナ150、闇虎はマナ200と消費量が違うので、作成時に区別して作っていた。


『兵士たちはやけに緊張しているようですね』


『恐らくは、レンタルしたペットの力を知ったからだろうな』


 ククッと可笑しそうに笑ってしまう。兵士たちは自動小銃を背に担いでいるが、手に持とうとはしていない。その表情には怯えが見える。


『レンタルする際にAP弾も防げると見せつけましたからね。玩具を持って危険な場所に来ている気分だと思いますよ』


『まったく怯えを見せない図太い奴もいるみたいだけど』


 装甲車から虎に乗り、首に蛇を絡めて、ふふんと鼻を鳴らして出てきた少女。


「ふふん。あちしがいるから、安全にゃ。大丈夫にゃから緊張しなくても良いにゃよ。にゃーっはっはっ!」


 猫耳をピンとたてて、ゆらゆらと猫の尻尾を揺らす猫娘。風魔花梨が装甲車から出てきた。


 やけに調子に乗って高笑いをしながら。


 久しぶりの花梨はやけに調子に乗っていた。なんだあれ?



 


 本社ロビーはようやく受付ロビーとして稼働しており、受付の闇猫がミャアと鳴いて、手を振って先に進むように案内する。優秀な受付猫に従い、花梨がふんふんと鼻を鳴らしながらエレベーターに進む。その後ろに本命の訪問者がいる。


 金髪が映える彫刻のように美しい顔立ちの少女だ。笹のように耳が尖り、その服装も楚々とした高級そうな服装だ。緑に染められているワンピースは、とても似合っている。


 エルフなので。


 ファンタジーにお決まりの森に住む種族エルフである。


 まぁ、源風香なんだけどな。


 ようやく直ったエレベーターに乗り、花梨たちは登ってくる。俺の家にやってくるエレベーターが動くのを見るのは感動だぜ。


 天津ヶ原コーポレーション本社は新築同然となり、その機能をほとんど取り戻した。発電機による電気復活もそうだが、内部なら電話も使えるようになった。


 いつの間にか修復された箇所がいくつもあるが気のせいということにしておこう。幼女がぱたぱたとご機嫌に足を振っているが、気のせいだろう。たぶん家を守る妖精が修復してくれたんだろう。


「防人、やってきたにゃ!」


 インターホンをぱしぱし猫じゃらしに絡むように猫娘が押して、入ってくるように言うと、調子に乗って入ってくる。出迎えはしない。お茶菓子を用意するのに忙しいし。


「よう、花梨。それと源風香さん、ようこそ」


 我が家とでも言うように、花梨が案内しながら応接間に来る。


「久しぶりにゃ」


 気軽に片手をあげて、花梨がニャンと機嫌良さそうな笑みを向けてくる。


「お久しぶりです、天野さん」


 深々と頭を下げて、風香も入ってくる。丁寧な所作でのお辞儀とは、だいぶ俺に対する扱いが変わったようだ。


 穏やかに笑みを向けて、ソファに座るように手を振る。どっかとソファに座る花梨と、そっと座る風香。


「レンタルさせていただきました使い魔の方々を返却しまふ」


「どうも。役にたったようでなにより」


 風香が噛んだことに気づいたが、大人の対応で見てみぬふりをしておく。だいぶ緊張しているようだ。顔を赤らめるな、大人は気にしないから。猫娘はにまにまと口元を緩めているが。


「闇虎6頭、闇蛇2匹、闇烏2羽で合わせて1億だったな」


 コノハから雫が依頼を受けたように、俺は花梨を通して、源家に使い魔をレンタルした。1体1000万で。どうやら役にたったようだ。


「こちらがレンタル料金となります」


 小さな銀色のトランクを手渡してくるので受け取る。油田攻略を手伝ったと思うと格安だが、レンタル料金としたら高額といえるだろう。


「たしかに受け取った」


 中身は確認しなくても良いや。横に退けておく。それを見て風香はにこやかな笑みを見せて、両手をパンと合わせる。


「実戦での活躍は素晴らしいの一言でした。ダンジョンの攻略において、被害を気にせずに、しかもマミーを相手にしない圧倒的な戦闘力。これほどの力を持つとは想像以上でした」


「あちしが紹介した甲斐があったというものにゃ。風魔花梨大佐であるあちしが」


 にゃーはっはっと笑って胸を張る花梨。なるほど、こいつ大佐となったのか。それで調子に乗っているわけね。大佐……こいつ佐官だったのか。


 諜報員という仕事を忘れたらしいにゃんこはチラチラと首元の階級章を見せてくるのでウザい。おめでとうと言っておくか。かなり嬉しそうだしな。しかし大佐ね……内街でなにかあったのか。


 花梨の様子に風香は苦笑するが、俺に顔を向けて、またにこやかな笑みとなる。


「どうでしょう。油田を手に入れたお祝いをしたいと思うので、ご招待をしたいのですが天野様」


 ふむ……お祝いねぇ。たくさんの裏がありそうだが面白そうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更かも知れませんが、幼女普通に会話というか念話に交ざってませんか。 妖精機だとして、雫さんは正体知ってるんでしょうか?
[良い点] 花梨大佐殿はお調子者でかわいいなあ… うっかり新型に出会ったりしませんよーに…
[一言] ん?幼女って見えて聞こえてたっけ?
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