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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

地味キャラ君とド派手な仲間

作者: 瀬瞳 翠

 たまたま、ネットで動画を見ていた時だったか。

 最近巷で話題のゲーム、VRMMORPGの広告が流れた。

 現実では味わえない壮大な世界を、現実と同様に体験できるという謳い文句のそれに少し興味を惹かれ、最近忙しくて使いどころがなかった給料を使って買ってみた。

 とは言ったものの、そこまでゲームをやってきていなかったし、あくまで仮想現実ってのを体験してみて、今の忙しい仕事の合間に雄大な景色とか眺めつつのんびりしてみたいなぁくらいの気持ちだ。


 若干ゲームの値段やらVR機器の値段に引いたものの早速ゲームを買ってみた。が、プレイするためのソフトについてはダウンロードですぐにプレイできるとのことだったが、VR機器は後日配送とのことだった。

 早くて明日、平日ではあるが届くとのことなので、帰宅後にプレイできるよう日時指定をして、ゲームを待つことに。



※※※※※※※※※※



 今日は結構順調に仕事が終わった。定時からはちょっと過ぎているものの、昨日頼んだVR機器が届く時間には間に合いそうだ。

 流石にこんだけ高い買い物早々しないからか、電車に揺られる間も、駅から帰宅する足も気持ち浮かれて早足になったなぁと思いつつ帰宅。

 スーツをハンガーにかけ、風呂にも入って部屋着に着替え夕食も済まし、あとは配送業者を待つだけだ。


 ピンポーン


「お、来たか」


 なんだかあっという間だったが、どうやらVR機器が届けられたらしい。

 玄関を開けると、大人が一抱えするくらいの段ボールを持った業者がいたので、無事にそれを受け取る。


「さて、それじゃあ早速準備するか」


 段ボールを開け、付属している取扱説明書を見つつVR機器をセッティングし、起動できたならば早速ゲームをダウンロードすることに。


「ダウンロードしている間に、どんなゲームか調べてみるか」


 発売からもうすぐ2か月経つとのことで、ネットで検索したら簡単に情報収集できた。

 数多あるサイトから、初心者向けのところをピックアップし、読み進めていく。


「まずは、『キャラクター作成』をして、そこから『名前』を選ぶのか」


 どうも、キャラクター作成というもので、仮想現実内で動かすキャラクターの外見を作成。

 また、それに合わせて数ある『種族』の中から好きなものを選んでいくようだ。

 『種族』というのは結構あるようで、人間やらそれに近い外見、モンスターなんかもあるようで、多種多様な生き物を体験できるというのが売りのようだ。


 まあ、今回はのんびりしてみるっていうのが第一目標なので、ここは人間でいいか。


「で、そこまで選択したら今度は『職業』ってのを選ぶのか」


 『職業』も結構あるようで、なかには『種族』の特性に応じたものもあるようだ。

 そのサイトを見ていると、ゲームがアップデートされていくことでどんどん追加されてもいるし、何よりまだまだ新たな『職業』が発見されているとのことで、2か月経った今でも把握しきれていないのではないかとのことだ。


「『職業』を選んだ次は、『スキル』を選択するのか」


 『職業』にはそれぞれ『スキル』というものがあるらしい。

 『スキル』は最初にもある程度選択できるようだが、ゲームをプレイしていくことでスキルが追加、派生されていくそうだ。


「なるほど、プレイヤーの『レベル』と職業の『レベル』ってのがあるのか」


 レベルも2種類、プレイヤーのレベルと職業のレベルがあり、通常の経験値と職業経験値が別個に設定されていて、プレイヤーのレベルが上がればステータス全般が、職業レベルが上がればスキルの習得や派生、職業に応じたステータスが上がるそうだ。


「ここはそんなに気にしなくていいか」


 最悪、のんびりできる空間があればいいのだ。

 なので、そんなに焦ることなくゆっくりとレベルアップしていけばいいだろう。


「お、終わったか」


 ちょうどきりよく、VR機器がダウンロード終了を知らせてきた。

 飯も食ったし風呂も入った。トイレにも行っておいたから大丈夫だろう。


「それじゃあ、夢のような世界に」


 行ってきますか。



※※※※※※※※※※



 ゲームを起動すると、自分の身体が宙に浮かんでいるような感じになり、そこでアナウンスとウィンドウが表示され、キャラクターを作成するように言われた。

 どうやら、キャラクター作成については登録してある自分の身体情報、身長や体重だけでなく、登録時に行った全身写真を参考に、ゲームのキャラクターを自動で作ってくれるようだ。

 自動でキャラクター作成しますかとのことなので、試しに自動でやってみることに。


「これは随分美形になったなぁ…」


 3Dの俺をアニメやゲームの世界に溶け込むよう、世界観に合わせるために作り出されたのだろうが、その顔はアイドルですと言わんばかりに美化されたキャラクターだった。

 作り出されたそれを、前から後ろから、下から上から色々と見てみるが、


「うーん…なんかなぁ…」


 何かが引っかかった。

 俗にいう『不気味の谷』現象だろうか。


 身長や体重なんかは、登録されているデータから来ているのでほぼ同じだから別に問題はない。

 が、どうしてもその顔の造形だけは気になった。

 傍から見たらカッコいいキャラだなと思うし、10人中10人がカッコいいと声をそろえるだろう。

 でも、ゲーム内だから当然、他のプレイヤーも似たようなものになっているんじゃないだろうか。まあ、種族が人間じゃない奴はどうなのかわからんが。


「うーん、どうするかなぁ…」


 あくまで現実じゃ体験できないことを体験したいのだ。

 ならキャラクターくらいどうでもいいじゃないかと思うが、それを体験する俺がこの顔に違和感を覚えてしまった。

 ほんのちょっとの違和感だが、それをずっと引きずりながらゲームをするってのもちょっと嫌だな。


「たしか、手動で作るってこともできるんじゃなかったか?」


 自動でキャラクターを作成するだけじゃなく、中にはそこから手を加えたい人もいるとのことで、どうやらキャラクター作成を手動でできる機能もあるようだ。

 多重起動で攻略サイトを立ち上げてみると、どうやら手動で作成する機能では、細部にこだわって作ることができるようで、結構作り込んだという報告がちらほらある。


「すぐにゲームをやってみたいけど、ここで妥協するのもなぁ」


 自動でサクッとゲームをプレイするか、それとも手動でちょこっといじってみるか。

 少し悩んでみたが、


「…よし、手動で作ってみよう」


 これからたっぷりゲームの中に浸ってみるのだ、ちょっと手を加えれば違和感はなくなるだろう。

 そうして俺は、キャラクター作成を手動で行うこととした。



※※※※※※※※※※



 今日も攻略サイトを見てみる。相変わらずゲームはアップデートが入って、どんどん行ける地域が増えていき、そこでいろんなモンスターやら人やら町やらが見つかっているらしい。

 プレイヤーもプレイヤーのほうで、どうやら職業が色々進化しているようだ。最前線のプレイヤーなんかは職業レベルがカンストするのではないかという話題も目に入る。

 そんな中、俺はと言えば


「よし、じゃあ今日もキャラクターいじっていくか」


 まだゲームの世界に飛び込む前段階であった。


 ゲームを起動し、キャラクター作成を自動で行ってから早4か月。

 当初、手動でちょちょいとやったら違和感がなくなるだろうと思ったが、どうもこの造形は一筋縄ではいかないようで、一部をいじるとそれにひっぱられて別の部分まで影響がでているようだ。

 最初はこれでいいと思って上下左右から見てみたのだが、前からみたらいいものの、横や下から見ると変に見えたりすることが多々あった。

 そこからは顔の造形ってどうなってるんだと思ってネットで画像検索したり、美術系のサイトで昔の石膏像やらを参考にして、いろいろといじっていた。


 そうしたらなんというか、キャラクター作成にドはまりしてしまったのだ。

 少しずつ少しずつ、口を変えつつ鼻を微修正し、それに併せて目元をいじったり。

 かと思いきや、頬骨を削って輪郭を整えたりと、手を出したらきりがなかったのだ。


 だが、それがなかなか面白い。


 自分で1つの作品を作っているという感覚が芽生えたのか、いろんなことを試しては失敗し、新しいことに挑戦しているような感じだ。

 が、それも今日までだろう。


「…できた。できてしまった」


 作成期間4か月。仕事もあったしいろいろな付き合いで触らなかった期間もあったが、それらと並行して作っていたキャラクターがいよいよ完成した。


「…すっごい、なんというかすっごい地味」


 見た目、地味。

 地味オブ地味。

 パッと見ても、モブキャラじゃないかと思えるくらい地味。

 『あれ、NPCじゃね?』ってくらい地味だし、むしろ現実の一般市民が紛れ込みましたっていうくらいの造形になったが、どこから見ても違和感がないような見た目ができた。

 それに何より、ここまで丹精込めて作ったのだ。

 なんというか、愛着が出てしまった。


「これで完成ってなると、ちょっと寂しいな…」


 完成した、ということは、このキャラクター作成の世界から抜け出すということだ。

 長い時間見慣れた世界ではあったが、こことも今日でお別れとなるとちょっと寂しさがある。

 が、本来の目的を忘れてはいけない。

 あくまで、現実でできない体験をするためにゲームを買ったのだ。

 ここでいつまでも顔をいじっているだけってのもおかしな話だろう。


「さて、それじゃあいよいよ次の設定にいってみますか」


 ついぞ押すことがなかった『キャラクター作成完了』ボタンを押下し、俺はキャラクターの設定を終わらせることとなった。



※※※※※※※※※※



 キャラクター名は名前をもじってつけ、『種族』もそのまま『人間ヒューマン』というものにした。

 職業は迷ったが、どうやらこの世界にいるモンスターを仲間にできるということで、『テイマー』というものにしてみた。

 最初は弱いモンスターしか仲間にできないらしいが、これも職業レベルが上がることで色んなモンスターを仲間にできるらしい。

 モンスターの中には、現実で飼われているペットのような見た目もいるようで、現実で飼えない人がテイムしたりするようだ。

 のんびり世界を見て回ってみたい俺としては旅のお供がいるとちょうどいいだろうし、何よりペットを飼ってみたいと思っていたのでちょうどいい。


 こうして職業を選択し、いよいよゲームスタートというところで、『ピコン』という音とともにウィンドウが目の前に現れた。


「ん、なんだ?えっと…『称号:造形愛の塊を入手しました。』」


 なんだこれ?

 説明文がウィンドウにつらつらと書かれているので、目を通していく。


「『ユニーク称号。キャラクター作成に途方もない時間費やした方に贈られる称号。選択した職業に応じてアイテムを付与。』か…」


 なんか、ゲームを始めてすらいないのにアイテムをもらったのだが?

 そしてユニーク称号とは一体何なんだろう?

 ゲームを始める前から色々と疑問点が浮かび上がったが、どうももらえるアイテムはゲームをスタートしないと確認できないし、今から調べようとしても一時的に多重起動が不可能なようなので、そのままゲームをスタートする。


「おぉ…」


 ゲームをスタートしてみると、まずOPムービーが流れた。

 OPムービーからどうやら一人称で見れるようで、俺の周りにはこのゲームの世界であろう風景が前から後ろに次々と流れていった。


「こんな世界を体験できるのか…」


 雄大な山々はもちろんのこと、広々とした草原、荒々しい火山、寒々とした雪原、荒々しい海など、自然の壮大さを感じさせる映像が次から次へと流れていく。


「っと、まぶしっ」


 映像の最後、白い光が俺を包んだため、思わず目を細める。

 徐々に白い光が薄れていったので目を開けると、俺はどこかの町の中にいた。


「おぉ、これがゲームなのか…」


 あたりを見回すと、町の中央の噴水のある広場なのだろう。

 周囲には人がいて、会話をしたり買い物なんかしたりと、町を自由に闊歩している。

 まだなんの説明も受けてないから、どれがNPCで誰がプレイヤーキャラクターなのかわからないが、パッと見ただけではこれが現実と言われても違和感がないほどだ。


「お、なんかアイコンがあるな」


 視界の隅に『!』が映ったので、『メニュー』と声に出してみると、メニュー画面が開いた。

 メニュー画面には『アイテム』『装備』『ステータス』『スキル』『インフォメーション』とあり、その全ての項目に『!』がついていたので、とりあえず上から順に見ていくことに。


「そっか、さっきアイテムもらってたな」


 『アイテム』に視線をやると、どうやら所有しているアイテム一覧が開かれるようで、そこは通常空っぽなアイテム欄が表示されるのであろう。

 チュートリアルなのか、アイテム欄を説明するウィンドウが端っこに表示されているが、俺はそれよりも1個だけぽつんとあるアイテムが気になった。


「これがさっき言ってたアイテムか…」


 1つだけあるアイテム。それは『造形愛の塊』という称号獲得に併せてもらえたアイテムだ。どうやら職業に併せたアイテムという説明どおり、テイマーである俺には『卵』が贈られたようだ。

 この『卵』というものは、中にモンスターが入っているらしく、『卵』が孵化することでモンスターを連れていけるようになるらしい。

 もっとも、『卵』は通常、モンスターの交配でしか手に入らないとは攻略サイトの情報だ。

 ちなみに『卵』の名称は『造形愛の卵』というまんまなものだった。


「えっと、『アイテムを使用するにはアイテム名を唱えることにより使えます。』か。なら早速使ってみるかな」


 たぶん、初心者用アイテムなんかを最初に使うときに見る文言なんだろうが、今回のこれでも大丈夫だろうか。


「じゃあ…『造形愛の卵』」


 説明通りにしてみると、目の前に拳大の卵が現れた。と思ったら、それが早速ひび割れる。


「って、うぉっ!?」


 ひび割れたと思ったら、突如として隙間から強烈な光が漏れる。

 思わぬ眩しさに手を翳すが、それでも『卵』からの光は陰ることなく、思わず目をつぶった。

 瞼の裏にも届く光が数秒間『卵』から発せられていたが、徐々に徐々に光が弱くなっていったので、ようやく翳した手を下ろして目を開けれるようになった。

 よくよく考えたら、これって迷惑だったんじゃと思ったら案の定、周りでは結構ざわついているらしく、そこかしこから『なんだあれ!?』『眩しすぎ!!』『誰がやってんだ!!』なんて声が聞こえてきた。


「やっば、これが終わったらさっさと逃げるか…」


 光も収まったので、目を開けて『卵』があったほうを見たが、そこには何もなかった。


「あれ、何もない?」


 目の前に出てきた『卵』のところには何もなく、思わずきょろきょろと周囲を見てみた。

 ちなみに『卵』の殻も地面にはなかったので、中身はどこにいったのかと思ったが、周囲の様子で気づいた。

 なんか、周りの人が、俺の頭上を見て口をあんぐり開けてる…


 ちょっと、いやかなり気は進まなかったが、恐る恐る視線を上げていくと、


 女神がいた。


「…は?」



※※※※※※※※※※



 真心こめて作った地味キャラ。

 周りからはNPCと勘違いされてもおかしくないような見た目。

 騒がれることなく、静かにのんびり、ゲームの世界を回ろうとした俺は、初っ端から軌道修正することとなった。


「おはようございます我が主―――」

お読みいただきありがとうございました。


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