輪廻勇士のやり込み~スピードラン~
漆黒の空間。
ここである男が目を覚ます。
「ここは、またはじまったのかよ…」
「目を覚ましたんですね、勇者様。」
声がした所には神秘的な女性が立っている。
「私は…」
「オーケー、そこまで。どうせいつもと同じ言葉だろ。
早くエイブル村に転移させてくれ。たぶん今度のシフトはあの町だな。あの世界は200年ぶりか。」
「え…?どうしてそれが分かるんですか?!」
「えっ、そういえば別の人が来たな。俺とは初対面だよね、新入女神様?前任者に何の話も聞いていなかった?」
「あの、それが、先輩はあなたと会って、直接話してみなさいとだけ言ってましたですが…」
「ちくしょう、あいつ。引継ぎくらいはきちんとしろって。」
いらだたしそうに頭を掻く男。
「とにかく結局また魔王が現れたんじゃない?早く転移させてくれ。すぐに終わらせるから。」
「え?!でも説明がまだ?」
「いいから早く。俺があんたよりもっと詳しく分かっているから心配するな。この仕事はあきれるほどやってきたんだから。」
堂々としているというか、気だるさまで感じられる勇士の姿に女神は、なんとなく信頼感を感じた。
「それでは転移を始めますね。信じてもいいんですよね?」
「そう。そしてお前の先輩、フローラのやつに伝えてくれ。次の転移や転生まで引継ぎをきちんとしなければ、ストするつもりだと。」
「先輩の名前まで?!あなたはいったい?」
質問するが詳しい答えを聞く前に、すでに転移は始まっている。
「転移する前に名前は聞いておこうか。名前は?」
「私はエイラです。」
「エイラか。何世代の間、よろしくね。俺の名前は…」
男の足下に魔法陣ができて転移が始まる。
「ラウンド。毎回魔王が現れた世界を救いに行くデリバリー勇士だ。」
そして男は消えた。
「今回は転生じゃなくてよかった。そうだったらもっと時間がかかったはずなのに」
ラウンドが立っているところはある森の中の小さな祭壇。
あくびをするラウンド。
「ううん、前の世界で寝ているうちに元になったことなのでまだ眠い。面倒だば。」
何のヒントもない状況にもかかわらず、ラウンドはある方向に向かって歩いていく。
「この世界は今回で3回目。いつもなら裸で始めるのも楽しいけど、この世界はスピードランにしようか?」
そしてまもなく町が見えてくる。
村を見て立ち止まったラウンド。
「では入る前に…」
横にあった岩を持ち上げて移す。
「ある、ある。前の生涯で置いておいたお金と武具。」
お金と武具を持って村に入る。
他の所は気にもせず、すぐ雑貨屋に入る。
「いらっしゃいませ。」
「最高級の体力ポーションと魔力ポーション全部ください。」
「え?全部?」
「お金はあるから早く。」
店長がすぐに箱をいくつか持ってくる。
「これが当店にあるすべてです。ところでこれをどうやって持って行くつもりですか?」
『スペース·オープン』
「収納魔法?!」
「前の生で魔王対策会議が開かれた国がウェルフェアだから今回はメイト国の番か。
その前にS級証明も必要なんだな。200年前の資格が通じるわけがないから」
そして、ラウンドは外へ出た。
村の冒険者ギルドに入る。
「はじめまして。どんなご用件でしょうか?」
「冒険者の資格を」
「それではここの記載を。」
「もう全部書いてきたんだからこれでお願いします。」
「あれ?登録のために来たあなたが、この書式をどうして知っているんですか?」
「この世界だけでなく他のどこへ行っても同じなんだから。」
「え、それは何んの?」
「何でもないです。書式に異常はないでしょうね?早くお願いします。」
すばやく手続きを済ませて出る。
じゃあ、次にやることは…
あいつらだな。
昇級を進めながら、時間も節約するためには。
「じっとしていろよ。殺さないから。」
「少し痛いだろうけど、我慢してくれ。」
「うーん…お前はちょっと困るだろうね。後で仕事が終わって直してあげるから今度は失礼するよ。」
そして翌日、ある都市ではこんな噂が流れた。
「F級から一気にS級に昇級した人が現れた?!」
「S級モンスター素材をそんなに持ってきたなんて、いったい何してる人なんだ?」
「まだS級ではなくて今昇級試験中だ。」
試験相手はダイヤモンド·ゴーレム
ここは廃鉱に作られたダンジョン。
「来たな、欲張りな人間よ。貴様も俺の体が欲しいのか。」
「人をどこの変態おっさんみたいに言うのはやめてくれる?体をほしいって…」
「できるものならやってみろ!」
ゴーレムの拳がラウンドを狙う。
剣を出して正面から受け取るラウンド。
「やっぱり固いね。壊すのはまだ無理か。そうなら…」
剣が赤く熱し、炎がおこる。
「ダイヤってさ、固いけど、思ったより熱には弱いんだよね。そして、それは君たちにも当てはまる。」
『インフェルノ』
火炎がゴーレムを飲み込む。
そして火炎が消え、ゴーレムの体が少しずつ消えて崩壊していく。
「人間なんかがどうやって…!」
「お前みたいなやつを俺が何度相手にするか知ってるかい?これくらいは知らない方がおかしいんだよ。」
この世界に到着から二日後
ここはナラメイト。
そしてそこの王都ベイディア。
ここで各国の要人たちが集まって魔王への対策を講じ、勇士を募集している。
王宮の内側にはすでに世界中の強者が集まっている。
「よく来てくれた。勇士の種たちよ!」
メイトの王が姿を現した。
「よくご存知のように魔王が再び現れた。そのため、このように諸君を招集したのである。」
「でもここの全員がが勇士になるわけにはいかない。伝統にのっとった3つの試練を通過した者だけが勇士になれる。」
人人の声が騒がしくなる。
「では初の試練を発表する。最初の試練は…」
「ふぅ、なんとか間に合ったね。」
人々の耳目を集める声とともにラウンドが現れた。
「ふむ、遠い国から来たのか。早く席に行くように。」
「そうする時間ももったいないですので、まずはこれを見てくれますか?」
『スペース·オープン』
それとともに巨大な3つの物体があふれ出る。
「はじめての試練であるベヒモスの角。二番目の試練であるバシリスクの牙。3回目の試練であるワイバーンの翼」
「全部持ってきたんだから私が勇士ですよね?」
王が驚く。
「この…これらをどうやって一人で?それよりどうやって試練の内容を?!」
「ま、不正行為とかじゃないから心配しないでください。」
すでに各国の要人たちも、互いに騒いでいる。
「試練の内容がわかるなんて!確かに不正行為がある!」
「でもあの試練を一人ですべて処理した実力だなんて…」
「あれもどこかから不正に持ってきたのではないでしょうか?」
「そんなことができない試練じゃないですか。誰があんなモンスターの素材を簡単に出してくれるでしょうか。」
「なによりも収納魔法が使える実力者なら…」
「あの…それ以上時間引っ張ったら、私、やめます。」
「?!」
「早く任命していただくか、他の人を探すか、5分以内に決めてください。」
すばやく会議を行っている。
5分ぎりぎりで、結論が出た。
王がラウンドに尋ねる。
「お名前は?」
「…エインセです。」
「今この時間付でエインセを勇士に任命する!」
「初代勇者ラウンドの名で、勇者に武運と祝福があるように!」
場内の他の勇士候補たちは、呆然とした表情だ。
そんな気配に気づいた王が勇士候補たちに言う。
「がっかりするのはまだ早い!機会はまだあるわけだ。」
「勇士は一人じゃない!各分野の優れた者を集めてパーティーを作るのが目標だ!」
「すでに試練の内容は明らかになったので、一番早く試練を通過する5人を勇士パーティーに…」
「ああ、私一人で行ってきます。」
ラウンドの言に場内がまた静かになった。
「いや、見たところで剣士のようだが、それなら魔法使いや聖職者でも…」
「魔法の方がご心配ですか?さっきご覧になった収納魔法では頼りないんですか?それなら証明と一緒に行ってきます。」
『テレポート』
そして、ラウンドがみんなの目の前から消えた。
「転移魔法?!」
「大魔法使いの中でもできる人が指に入れる魔法だが?!」
「いったい何をしている人なんだ?!」
転移した所は魔王城の入口。
はじめて来た時には、定石の旅路通りだったから多分1年はかかったかな。
位置を探すことから、各種モンスターとの戦闘、回復期間などが合わせて。
「ただ、すぐ内側に入るのができないんだよな。あの結界は本当にどうにもならないのかね。」
つぶやきながら魔王の城に向かう。
「貴様は誰だ?!ちょっと待って、その姿は人間か!?まさか?!」
門番の暗黒騎士か。
久しぶりだな。
「いや、よろいからつやが出るね。この前、俺に割れてから強化したみたいだね。」
「貴様、何を言ってるんだ!」
「だからといって俺を阻むことはできないが。」
飛び上がって、兜のこめかみ部分を素早く突く。
何をする間もなく暗黒騎士たちは倒れた。
暗黒騎士が倒れると、門は自然に開く。
中に入る。
「あいつらの鎧を見たわけで、ちょっと期待してたんだけどさ。いざお城の掃除はしていないのか。 このほこりだらけの彫像もそのままだね」
暗い廊下を松明が照らしている。
廊下を進む。
「勇者か?」
どこかから聞こえてくる声。
「一人で来るなんて、勇敢なのかそれとも愚かなのか。こんなことは歴史でも…」
「そこまで言ってくれる?それ以上聞いたら、 すごく恥ずかしくなると思うんだけど…」
「生意気な!俺の話を切るのか!?」
それと一緒に影がラウンドを突き刺すように飛んでくる。
ラウンドは影には目も向けないまま、スキルを使う。
『クリーヴブレード』
襲ってくる影とは全く違う方向へ飛ぶ斬撃。
壁についたとたん悲鳴が聞こえる。
「おあっ!どうやって俺の実体を一気に…」
「影は全く歓迎。 実体は私を察することができるところにある。
全部知っています。アビスセイドさん」
「だからそれをどうやって…?!」
「うるさいな、お前のおじいちゃんに聞いてみろよ。よく知っているはずだから。」
仕上げをせずに廊下を進む。
「何だ、どうして仕上げを?」
「殺すことになると、その次の奴が復讐だとか言いながらさらにしつこくかかってくるになってさ。それ以降は、わざと戦闘不能になるくらいにしている。
殺すのが性格にも合わないし。」
引き続き進むと、また別の空間が現れる。
床は2つのタイルが長く並んでいる場所である。
「よく来ました。僕の罠の部屋へ。」
ラウンドを迎えるのは工具を持っている小さなコボルト。
「この間来たときは堕落したドワーフだったのに、今回はコボルト?後継者選定はどうしたんだよ…」
「でもこいつの方が外見上はもっと似合うかも?」
「さあ、どうぞ僕を捕まえてみなさい。ここまで来られるとしたらですけど。」
「そのタイルを踏み間違えるたびに罠が働きます。 毒霧、溶岩、金剛石の槍などがあります。」
「飛び越えるのはやめてください。そこにも罠があるから。もし感知されたら自動で作動するようになります。」
「さあ、私に届くための二者択一のタイルの本数は30本! 果たしてどれだけめちゃくちゃになって僕に届くのでしょうか?それとも僕に触れることさえ不可能なのかな!?」
「金剛石槍を追加したんだ。それはちょっと痛いかも。」
「はっはっ、恐ければ今からでも…」
「12122,11211,21221,12221,21112,21221」
「何…?」
順にタイルを踏みながらゴブリンに向かって歩くラウンド。
たった一つの罠も作動していない。
「タイルパターンを変えるためには罠自体を新たに作らなければならないからね。」
「いっそタイルの本数を減らしてでも、新しく作った方がいいんじゃない?どうせ一つだけかかっても致命的な罠だけなのに…」
「あなた、どうやって…?」
コボルトがすぐ前までオンラウンドを見て動揺している。
震えているコボルトを無視して前に進む。
「どうせコボルトだから直接の戦闘能力はないだろうね。
勘弁してあげるからその罠の改善アイデアでも考えていろ。」
進むラウンドを見て、緊張が解けて気絶してしまうコボルト。
三番目の部屋に行き着く。
「ようこそ、私の部屋に。」
半人半獣の形、スフィンクス。
「私は他の奴らと違って暴力は嫌いなのよ。私が好きなのは知恵。」
「これから君の3つの問題で君の知恵を試してみるわ。」
「全部当てたらどいてあげるわ。代わりに間違えたら…」
食欲をそそるスフィンクス。
「それでは一つ目の問題を…」
「時間。刀。筆記具。」
「???」
「前だけを向いて走るもの。使うほどふやけるもの。使えば使うほど全く違うものに変わるもの。
このじゅんばんだよな?」
「全部当たっただろ? 何世代の前からあんなにも更新しろって言ってあげたのに、家柄の強情とか言って、更新し続けないから。」
「それは何んの…?」
「少なくとも何んのことがあったのかくらいは説明してあげろって…」
「え?どうして?謎の答えをどうやって?」
混乱しながらも道を開いてくれるスフィンクス。
「せめて、お前は今回のことで悟ったことがあることを願うよ。」
4番目の部屋。
そして記憶が合ってたら…
「ふん、弱虫どもだ。時間を稼ぐこともできなかったのか。だから、力が最高なんだ。」
「魔王の右腕である、ブロンコーストが相手になってやる。」
丈夫な魔族がいる。
そして魔王軍のナンバー2でもある。
この部屋はナンバー2のために作った場所だから。
「でもこんなに早くたどり着いたというのは力は本当なのか。楽しみだな」
「そうか、俺はあんたに何の期待もしていないのに、あんたがそう期待したら俺がなんかすまなくなるじゃん。」
「貴様、おれを無視するのか。」
「お前ナンバー2だろ。」
頭に熱が上がったような魔族が斧を持って襲いかかってくる。
そのままラウンドを打ち下ろす。
「ばかなやつ、こんな戦闘で相手に対する無視と油断は…」
「それはお前の話だろ。」
「?!」
「お前こそ俺が誰だかわからずに、かかってきたじゃないか。」
斧をパリングして魔族を押し出す。
防御とファーリングに少なからず驚いたようだ。
「じゃ、行くぞ?」
速く連撃を続ける。
明らかに,外見でははるかに強そうな魔族が後ろに押し出される。
「速度だけじゃない。攻撃の重さも俺より…」
「さあ, では済まそうか。」
『クラッシュ·ブレーカー』
剣が斧に当たる。
割れる音とともに斧は粉々になってしまった。
「何にっ?!」
「さあ、勝負終わり。」
またもや進もうとするラウンド。
後ろからで詠唱が鳴り響く。
『ダイナマイト·ナックル』
爆発を伴った衝撃波がラウンドを襲う。
「武器はあくまで道具!俺ブロンコーストの力は強靭な肉体から出るのだ!だから油断するなといったじゃねか!?」
衝撃波で生じた粉塵が収まり、倒れたラウンドの姿が現われる。
「フンッ、武器を壊して期待したのに、たった一発アアアアアア!?!?」
ラウンドが軽く席を立つ。
「人間が、どうやってそれを受けても…」
「ふぅ、確かに無視するほどではないね。この程度なら少し強くしても構わないだろう?」
ラウンドの手が血の色に染まり始める。
「肉体派ならこの程度までは持ちこたえてくれると信じるよ。」
血の色は再び炎に変わり、周囲のすべてを溶かして燃やし始める。
『ブラッディ·ヘルファイア』
火炎が発射され、ブロンコーストが腕を交差させて防御の姿勢をとる。
そして火がついた瞬間、灼熱の音が響き渡る。
「やっぱ。」
火炎を眺めていたラウンドがすごいというような目つきをする。
「それを防ぐなんてすごいね。肌は日焼けしたようになっちゃったけど。」
炎が消えて残ったのは、姿勢を幼稚なまま炭のように燃えてしまったブロンコーストだけ。
そしてその姿勢のまま倒れる。
「死んではいないから…ポーションでも少し飲ませてあげようか。俺も魔力ポーション一つ飲もうか。」
気を失ったブロンコーストの口にポーションをかけて自分もポーションを飲む。
「ふう、すっきりしてるね。じゃあ、おやすみ。」
ブロンコーストを残したまま、再び道を進む。
そして到着した巨大な門。
ためらうことなく門を開けて見知らぬ。
「もしもし、誰かいませんか?」
「きたな、人間」
中央の玉座。
そこで魔王が起きる。
ローブとフードで身を包んだままの姿。
ラウンドが「魔王」に向かって進んでいく。
ある程度近づこう...
バタン!
地面が割れて線が引かれる。
「物怖じしないね。」
「そういう理由があるんだ。」
「そう?」
そして魔王がローブを投げる。
その中から生まれたのは、人間でいえば17歳ぐらいの身体の女性魔族。
人間の基準でも誰もが美しいと言える外観だ。
「それではその理由を直接確認してみようか。」
それと共に手に不吉な魔力が集まり、電気構体に変わっていく。
そのまま私に向かって歩いてくる魔王。
「私、エトナ・ブロネア。魔王として勇者を処断してやろう。」
「話は上手ですよね、子どもの頃、蜘蛛型の魔物を見ただけでも怖いと泣いていた奴が。」
「プフッ!」
魔王が変な音を立てて電気弾を変なところへ飛ばしてしまう。
建物に当たった瞬間、城全体が振動する。
「お前、それをどうやって?!」
「お城にほこりがこんなに多くてもクモの巣は一本もないなんて、まだクモは嫌みたいだね。」
「それを知ってるやつは今この城の中には…」
「というのは子どもの頃に蜘蛛のせいで驚いて、スカートにおしっこしたことを知る奴もいないって…」
「きゃあああっ!」
ものすごい音とともに魔法がラウンドを襲った。
「危ないじゃないか、詠唱くらいは唱えろ!」
「お前は一体誰だ!?それをどうして人間が?」
「クモ以外にも、魔力調節に失敗して、大事にしていた人形を燃やして3日間泣いたことも、豆嫌いで魔物たちの村にある畑に火をつけたことも全部知っている。」
「うわぁぁぁぁぁ、もうやめて!」
しゃがんだまま耳を塞いでしまう魔王エトナ。
「それを知っているのは人間の中で一人も…?」
何か悟ったようなエトナ。
「ラウンドお兄ちゃん…?」
「久しぶりだね、エトナ。やっぱり魔王の血は違うね。その程度時間が経ってもまだこれくらいか?」
「え、本当?でもその姿は?」
その質問に苦笑する。
「昔、言ってあげたよね。あらゆる世界に転生と転移する身だと。君に会って今日ここにまた来る前に転生過程も一度あったんだ。
その時この体を持ち、この体のまま転移することになったんだ。」
「本当にお兄ちゃんなのよ…?
思い出をいくつかもっと話してくれれば信じてくれるつもりかい?」
そしてエトナがラウンドを抱く。
「わあああっ、お兄ちゃん~~~」
「体はこうなのにまだ小さいな。」
エトナの頭を撫でてやる。
「バカのお兄ちゃん、どうしてこんなにわざと攻め込んできたの?!
こんなことしなくても、私の知り合いと言うならいいじゃん。」
「お前はそのままだけど、部下たちは過去のあいつたちじゃないだろ。四天王たちもみんな世代交代したじゃねか。
突然現れて『どうも、魔王様の義理の兄さんです。すみませんが、通ってもいいですか?』と言っても、誰が信じてくれるんだよ。」
攻略法に変わりはなかったけどさ。
「ところで何があったんだ、お前を止めろと言われて、この世界に転移したのにさ。」
「お兄ちゃんとパパのけんかの後、休戦になってたでしょ?そして、その強制力で お兄さんが私たちと暮らしてたし。」
「懐かしいな。あのときの記憶が今も残ってるじゃん。」
「ううっ、その話はもう…」
「とにかくそれ以来、私たちの方では人間との接触を最大限避けてきたのに、そうなると今度は人間の方が私たちをなめてかかってきたのよ。」
「そうなると私たちとしても、やむなく防御のために戦うしかなかったんたよ。」
「私も戦うのは嫌なのに、魔界のみんなが死ぬのはもっと嫌だからしょうがなく…」
それから涙を流すエトナ。
「お兄ちゃん、助けて。実は勇者が来たということを聞いて、どれだけ怖かったのか知ってる?お兄さんのせいでそうなったんだわけだから責任取って!」
「まったくわがままだね。こんな点も変わったのがない。」
ラウンドが立つ。
「ううっ, 面倒だがしょうがない。
じゃ、どういう事情かは分かったから解決しに行ってみようか。」
「今すぐ?!」
「強そうな奴らをちょっと用意させてくれる?人間界の近くに住む奴らで。それと、お前のローブもちょっと借りるよ。」
「?」
作戦を説明し、
『テレポート』
再び人間界に。
メイトの王宮に転移した。
「勇士が帰ってきました!」
「もう?!」
驚いたメイトの王様がラウンドを迎えに来る。
「もう魔王を打ち破ったのか?!」
「魔王のローブです。」
エトナのローブを表示してくれる。
「歴史に書かれているそのローブだ。本当に魔王を一日で…」
「そうなったんですね。」
「君、いったい正体は何にものだ?!」
感謝の言葉より質問が先とは、名残惜しいが理解はする。
「勇者ですよ。魔王に勝ったんですから。」
「だから勇士である以前に…」
「ここまでにしましょう。私の正体より重要なことが残っているので。」
「?」
この時、誰かが走ってくる。
「急報です!モンスターたちの侵略です!」
「なんだと?魔王がいなくなったのにどうして?!」
「魔王という中心を失い、首輪が消えた魔物たちが暴れ回るのです。多分魔王がいた時よりもっとひどくなるでしょう。」
「何という…」
ラウンドの言葉に絶望したような王。
「君以外に頼める人がいない。今すぐ魔物を討伐してくれるか?」
「お断りします。」
「何?!」
王の顔が白くなる。
「モンスターの数がどれくらいいますか?それを私一人でするのは無理です。」
「ならどうすれば。」
「もっと簡単な方法があるんです。これからは魔物たちをそっとしておくのです。」
「何のとんでもないことか?」
「魔物の本能がをわかると簡単なことです。最近人間界で先に魔界の方に進出したでしょうね?」
「そうだが。」
「これに脅威を感じ、もっと強い姿を見せて自分たちを守ろうとするのです。魔王がいなくなった今は、もっと脅威を感じているところでしょう。」
「ということは」
「人間が先に魔物に触れなければ、先に攻撃することは、本当に特殊な場合を除いてはないでしょう。」
王が決心したように尋ねる。
「では今攻め込んできた魔物たちの対処はどうすればいいのか?」
「全員逃げろと言ってください。魔物たちは人間の財物を欲しがって盗んだりもせず、わざと村を壊すこともしません。」
「そうした被害が出ると間違って知られるのは、単に戦闘での付随的な被害のためです。」
「被害補償は国ですると言ってください。どうせ被害がないから補償することはないでしょう。」
そのことを聞いて、王は臣下に命令する。
「今すぐ飛脚を送り、後退せよと伝えろ。」
「感謝するぞ、あんなことまで知っているなんて、君は…?」
王が再び顔を向けたが、ラウンドは姿を消した。
魔王星の前に戻ってきたラウンド。
「もうエトナに報告さえすれば今の世界もクリアか。」
「エトナ、どうなった?」
「たった今撤収させたよ。人間の方でも追撃はなかった。」
うれしそうにエトナが言う。
「そうか、よく解けたね。直前にやったものより2時間短縮か。
ここの2回目よりは、3日短縮だし。」
そろそろこうやってスピードランで解決するのも飽きるよな。
いくら考えても、もっと短縮できる世界もないようだし。
「お兄ちゃん、ありがとう。やっぱりお兄ちゃんだよね」
「それでは部屋でも一つ出してくれ。しばらくの間はここで暮らすつもりだから。」
「え…?」
「転移した以上、異世界に魔王ができるまでは、この世界で生きなければならない。」
「この前にここでの生活がかなり楽だったから。だから今回もここで過ごすつもりだけど、大丈夫よな?
一緒に暮らすという言葉に喜びを隠せないエトナ。
「もちろん大丈夫だよ!お兄ちゃんこそ嘘つくんじゃないよね?」
「もちろん。また転移するまでは俺がお前の甘えは全部聞いてやるから、それで家賃はどうにかしてくれ?」
「ついに夢が…そしてあんな約束まで…」
感激したようなエトナが再びラウンドを見ながら笑う。
「こうだから私が好きになるしかないのよね~」
ラウンドの胸に迫るエトナ。
そのままラウンドを倒して乗り掛かる。
「えっと、これは何のいたずら?好きだって?」
「別の言葉では『愛してる』というの。」
舌を出して唇を舐め始めたエトナ。
「うーん、それは家族愛みたいな愛だろう?俺も君を妹として愛…」
すると、エトナが左手を見せる。
「そんなに記憶力がいいから、これも覚っているでしょ?」
「おまえ、それって!?」
「フフフッ、やっぱり覚えているね。幼い頃お兄ちゃんと結婚するって言ったら、プレゼントしてくれた指輪。」
「いや、それはただ君を癒すために…」
「それより、俺、他の世界も救わなければならないのでさ。いつかは他の場所に転移されて…」
「その点もちゃんと考えておいたよ。」
「?」
「魔王が暴れるところにお兄ちゃんが転移するのでしょ?なら、お兄ちゃんが別の世界に行っても、私が暴れたらお兄ちゃんがまた私がいる世界に転移するってことでしょ?」
「あっ…悪魔的発想!お前は悪魔か?!」
「あの悪魔たちの大将が私でしょ。」
逃げようともがいているラウンドだが失敗だ。
戦いしなかったから、 実感は出来なかったがとりあえず相手も魔王。
力ではラウンドと互角。
簡単に抜けるはずがない。
「もうあきらめろよ! 絶対逃さないから!これからの残りの人生は私とのみ生きるんだよ!」
「ちょっと待って!周りにお前の部下がいるかも!」
「もう準備は全部しておいたよ。周りには誰もいない★」
「テ…テレポート!」
転移魔法を使うが、転移はしなかった。
「あれ…?」
「焦って忘れたの、魔王一族の結界を?兄ちゃんの力でも絶対打ち負かすことができなかった結界♬」
「ウアアアア…!」
「既定事実を作ろうよ、お兄ちゃん♥」
「ちょっと待って、いきなり!どこでもいいから転移させてくれ!」
「ダメなのが決まってるじゃない、ばか。」
「フローラ先輩、あれって本当に大丈夫ですか?勇者と魔王が…」
二人の女神が漆黒の空間で対話している。
「世界のバランスを崩すのができる強大な力を抑えるのがラウンドの任務だから。どんな方法でも世界を守ってくれれば構わないよ。」
「ハワワワ…」
エロい音と悲鳴が空間に響き渡る。
顔がほてったエイラがまた言い出す。
「それで結局あの方の正体は何だったんですか…」
「遠い過去、多くの世界に同時多発的に魔王が誕生したことがある。その状況で勇士を育成したら、結局バランスが崩壊する世界が出てくるかもしれないところだったわ。」
「だからたくさんの世界中で最も優れた勇士だったあいつを送って問題を解決したわけよ。」
「これが思ったより楽で効率的だったのでさ。だからちょっと手に余る世界にはあいつを転生させてるんだよ。」
「それがデリバリー輪廻の勇士、ラウンドの誕生秘話。」
「いつからか、退屈さと面倒くささに漬かって早く済ませたいという思いで、各世界であんなにスピードランをしてるんだけど…」
「今まで私が管理していた世界だけを巡ったから、各世界の攻略法は頭に完全に入力されたんだ。」
「だからといって無理にやらせているわけではない。毎回新しい世界に送る時、医者を聞くのがルールなんだ。」
「私はそんな規則は聞いたことがないんですけど?私が送る時は、それ、問えなかったんですよ!?」
言葉が終わり、変だという表情をするエイラ。
「ということは、ずいぶん長く生きていた方ということなのに、あんなに女に対する耐性がないんですか?」
「自分と同じ時間を歩いてくれる女性がいないんだから。あいつから先に女を避けたのよ」
「……残忍な話ですね。」
「でも今回はうまくいくかもね?女性はもちろん、魔王とあんなになったのは何千年の時間の中でも初めて見るのよ。」
「魔王ならかなり長生きするでしょう。」
「いずれにせよ、今回の世界も難なく解決したわね。めでたし、めでたし」
「あれがめでたしなことですか…?私の目には絞り出されるように見えるんですよ…」
「じゃ、あいつもそろそろリタイアすることになるのかな?次の後継者を探してみようか。」
「先輩も問題なくリタイアしたいなら、きちんとやってください。こんな風に引継ぎしたら最高神様に怒られますよ。」
「わかったわよ。告げ口するな?」
しかしラウンドが引退するのは、また遠い未来の話だ。
最近、連載を始めた作品だけを気にしようとすると、頭が痛くて書いた短編です。
短編に合わせてストーリーを作成したので、連載版への切り替えは難しいかもwww
ただ後で、本物のRPGの2回目のように素手からのスピードランとか、別のやり込み要素で書ってみたい気はあります。
楽しく読んでくださったら、本当にありがたいです。