動揺
よし、作戦が認可された。
すぐに行動に移るか。
俺はボルテにホランの住民を避難させ、敵軍の後ろへ迂回し、あることを命令させた。
そして、俺はさっきの偵察兵から取ったテレシアの鎧や服を着て単騎でテレシア軍へ向かった。
ベルン伯爵はどうにかして他二人を消したかった。
敵首都、ホランは近い。一計を講じて功績を立てさせないようにしようとしていた。しかし、配下の者たちもそのような策は思いつかなかった。
しかし、突然入ってきた兵が彼にとって予測もしなかったが、得になる情報を持ってきた。
「アシュカー伯爵、謀反!」
ベルンは狂喜した。
アシュカーを討伐する名目が手に入ったのだ。
その兵は続けた
「アイン帝国の手のものが、我らの戦力を削ぐため唆したと思われます!」
ベルンは家臣の言うことも聞かず、アシュカー軍のいる方へ布陣させ、いつでも戦闘に移れるようにした。
約30分後
アシュカーのもとに伝達があった。
その兵曰く、
「ベルン伯爵、離反!」
アシュカーは思いもよらぬ好機だと思った。自分をよく思わぬ貴族の筆頭であるベルンを討伐できればその功でまた出世できる。しかし、疑わしくもあった。仲君として有名なベルンが裏切るとも思えなかった。しかし、兵は続けた。
「ベルン伯爵はこちらの襲撃に備え戦闘に移れるようにしています!もし敵意ありとみなされる場合は抗戦せよと、ハルンゲスト伯爵から!」
この時、完全にアシュカーから疑いは消えた。
ベルンが布陣する場所まで戦闘準備をしたまま向かっていった。
そして、厳戒態勢だったベルンを見た途端攻撃を開始した。醜い同士討ちが始まったのだ
約1時間後
ハルンゲスト伯爵のもとに兵がやってきた。
「アシュカー伯爵、ベルン伯爵、離反!」
この時、ハルンゲストは疑いを持たなかった。なぜなら霧で視界が悪いとはいえ、大規模な戦闘が起きていることが音で分かった。ちょうど十分ほど前に偵察部隊を出したところだった。兵は続けた
「ベルン伯爵はヴォロイ王国に調略され、アシュカー伯爵はアイン帝国に唆されたようです!」
ハルンゲストは迷った。国のためとはいえ兵力は2軍団合わされば負ける。加えてまだ確証を持てない。だが国王のために、国のために、反乱を鎮圧せねばならない。
そこに偵察に出した部隊が帰ってきた。
彼らは自分たちの見たベルンとアシュカーに起きていることを正確に伝えた。
ハルンゲストには、戦わないと言う選択肢はなくなった。反乱を見過ごすわけにはいかないし、なによりも政敵である二人を反乱鎮圧の大義名分のもとに討伐できる。
彼は戦場への進軍を命じた。
ベルンは最初、兵力差により劣勢になってしまい焦りを禁じ得なかった。だんだんと打ち減らされていく自軍を見ながらない知恵を絞ろうとしていた。
そこへハルンゲストの軍が近づいてきたと聞き、落ち着きを取り戻した。今現在、自軍は5700程度、ハルンゲストは無傷の6600。併せて12000。アシュカーは兵を撃ち減らし6700程度だ。勝てる!
と思ったのは束の間だった。
ハルンゲストの軍は双方を攻撃し始めた。
ベルンもアシュカーも自軍の味方にきたものだと思っていた。ハルンゲストも誰が敵なのか味方なのか分からず、闇雲に戦っていた。
動揺した兵の減り方は通常の戦闘の数倍だ。
全軍が落ち着きを取り戻して、策にはめられたことに気づくのに、ベルン軍約4200名、アシュカー軍約5100名、ハルンゲスト軍約3400名の被害とベルン伯爵本人も討ち死するという多大なる被害を被った。
約7500の兵をアシュカーとハルンゲストは統率し、撤退しようとした。
しかし彼らをより苦しめる報が入った。
それ曰く、
「お味方の補給部隊、全滅!」