攻略
ミュラーは進軍を早めていた。
テレシアから、もしくはカルンから援軍がやってくるだろう。それがきた瞬間、負けは確実となる。すでにヴォロイ王国との兵力差は歴然だ。これ以上来られてしまえば、惨敗する。
私のクビは簡単に飛ぶだろうな。物理的に。
負ければ逃げるのもありだが、総大将になってしまったがために、逃げにくくなってしまった。
つまり、勝つことが自らの命をつなぐ唯一の方法なのだ。兵数的に劣勢であるにもかかわらず、勝たねばならないとはな、、、。地位が微妙に低いというのは、なかなか大変なものだな。
ヴォロイ攻略部隊は通常よりかなり早く、パーツェバルへと向かっていた。その速さはテレシアの援軍の予想を遥かに超えていた。
結果、テレシアの援軍がヴォロイ王国の領地にすら入っていないにも関わらず、ヴォロイ攻略部隊はパーツェバルについた。
パーツェバル駐在司令官のメルバルトは驚いた。つい数日前、首都から援軍が届いたばかりなのにもかかわらず、すぐに敵がやってきたのだ。
パーツェバルにおいての守りを完璧にできずに敵がやってきた。だが、兵力的には明らかにヴォロイ側が多い。まずまずの戦いができるだろう、とメルバルトは思った。
エリスト・フォン・メルバルト公爵は現在の国王アンドレウス2世の叔父にあたる。ヴォロイ王国の中で最も権力を持つ貴族だ。
だが、その能力は甥を大きく下回っていると、歴史家に言われている。
兄に似合わない弟だ、と同時から言われていたようだ。
だが、それでも国王の叔父ともなれば大きな権力を握る。王国の弱みであるかもしれない。
『不出来な弟』メルバルトは敵を試し、兵数を確認しようと3000の兵を要塞外に出し、敵とぶつけさせた。
ヴォロイ王国とアイン帝国の交戦が始まった。だが、20000近くいる兵に3000の兵をぶつければ、無論殲滅される。大敗し、その3000の兵は700名にまですり減っていた。
挙句、帝国側の兵数はわからないとのことだった。メルバルトは怒り狂った。だが、周りの良識派の軍人に参謀に止められ、しばらくパーツェバルに籠ることにした。
ミュラーは突然出てきた3000の兵を包囲し、多くを仕留めた。そして、逃げる兵の中に自分の部下を50名ほど、潜り込ませた。
その兵達は、パーツェバルの中に無事潜り込めた。そして、要塞内に入った日の夜に食料庫に近づき火をつけた。
翌日
パーツェバル内は火の海に包まれた。完全なるヴォロイ首脳部の怠慢により、消火を怠ったのだ。結果、火を消し切るのに、20000人もの民間人と7000名の兵士たちが焼死、行方不明となった。
火が上がっているところは勿論、ミュラー達に見えた。ミュラーはこの機会を逃すまいと一気の攻勢をかけた。
ヴォロイ兵は火を消すことと、敵襲、どちらにも反応せねばならず、次々と戦死していった。
そして、城門は突破されてアイン兵が雪崩れ込み、パーツェバルは完全にアイン帝国の手に落ちた。
首脳部は皆捕縛され、民間人も抵抗しなければ許されるときき、次々に抵抗をやめた。
わずか2日のことだった。




