新人
テレシアは大敗を喫した。
国王のジョージ3世は激昂。アシュカーとハルンゲストを処刑してしまい、諸将に緊張と猜疑心を作らせてしまった。
挙句、大量の負債を抱えてしまったヴォロイ王国に対
して苦し紛れの同盟破棄をした。
ジョージ3世の勇将たちはテレシアを見限りどんどんと出奔していった。アイン帝国に行く者、ヴォロイ王国に行く者など各国に散り散りに去っていく。
カール・リュッケは平民の出ながら内政面における数々の功績により、出世した人物だった。法律案の提出、農業書の発行など数々のことに手を出していた。
友人であるアシュカーが処刑され、この国にいることに嫌気がさし、最初ヴォロイ王国に向かうつもりでいた。だが、その前に大勢の諸将が出奔したせいか西のヴォロイ方面の警備は厳重だった。
北西のアインは性に合わない。北のレゲードンは共和国で慣れない。慣れない水を飲めば腹を下すというから、選択肢と外した。
残るは南の魔王の国カルンだけだ。流石に人間が魔物の国に士官するなど不可能だろう。いや、アシュカーは死ぬ前に言っていた。我々を誑かす情報を流したのは人間だったという。まさかとは思うが人間がいるのか?しかし、魔王の国だぞ!人間に対する裏切りにはならないだろうか。
いや、そもそもこの国を裏切っているのだ。今更体裁を整えたところでどれほどのことか。
一か八か魔王の国にかけるか。
カルンの領内に入るとすぐにオーガたちに囲まれた。
そして雁字搦めに拘束され、魔王の城まで運ばれた。
魔王は尊大に言った
「ここに捕縛されてやってきた人間は二人目だな。な、カイン」
「はっ」
答えたのはやはり人間だった。アシュカーの言っていたことは本当だったか。
「で、貴様はなぜこの国に武器も持たずにやってきた?意図がわからない」
私は明瞭に答える以外方法がなかった
「私はカール・リュッケと申す者。貴国で仕官させていただければと思い馳せ参じました」
「怪しきことこのうえないな、、、。だがいい、カイン、こいつをうまく使ってやれ。卿に委ねる」
リュッケは魔王に気圧されていたことや、この国にいる唯一であろう人間のカインのもとに配属された安心感もあり、失神してしまった。
うーん、厄介な奴を押し付けられたな、、、。こいつが裏切ったら俺ももろとも、か。まだヴィルヘルムも俺を信用してないらしいな。
そんなことを考えていると
やってきた人間が目を覚ました。
早速いろいろ話を聞いてみることにした。するとかえって押し付けられたことがよかったと思えた。何しろ内政に関する人材に困っていたところだ。
どうやら農業にも精通しているらしい。こいつは使える!
早速リュッケには内政面の顧問をしてもらい、農業関係のアドバイス、法律案の改善、痩せた土地でも育つ食物を民にレクチャーしてもらった。
最初は住民もリュッケも慣れないようで困っていたがしばらくするといつのまにか仲良くいろいろ話し込んでいて安心した。
うまくすれば、この先の内政をうまくいかせることが可能に!
とすればより、俺は安心していられる!もとより内政は得意ではないからな。
そもそも働くのが得意ではないし。好きだから戦術戦略を学び、歴史を学んでいるんだがな。
俺はそういう意味では創造性に乏しい。これから先は創造性に富んだ人材も必要だろうな。




