煙の街にて プロローグ
西暦2018年 爆発的な蒸気機関の発達によって 街並みは変わり始めていた。
「フシューーー」
至る所で水蒸気が放たれる音と、人々の身につけた金属の擦れる音が都市を囲んでいるようだ。
「不便だよな、絶対」
独り言を煙に溶かしながら俺は人ごみを歩いている、というのも俺はこの世界の人間ではなかった。
いや、この世界線の人間ではないと言った方が正しいのかもしれない。
厳密にいうと俺は「世界線」を移動して来た。
前の世界では電車機器が一般的で皆スマートフォンという携帯型通信端末を持ち歩いて、若者はタピオカに心酔しきっているような文明レベルだった。
なのに、常識は必然と変わった。
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「…っす、おはよ」
誰もいない孤児院で目を覚ました時、いつもの癖で挨拶を無に帰す。
転生物の小説と違って家族もいない、チートも武器も無いため俺は孤児院になだれ込んだ。
『よく眠れたか』
昨日倒れ込んだ際に手当をしてくれたリゼロアさん、見た目は普通の60代男性ぐらいに見える
髪が青色なのを除けば。の話だが。
「おかげさまで助かりました、リゼロアさん、昨日はありがとうございました」
『食事、名前、あとお前はどこ出身だ』
職務質問のような話し方に気圧され、今までの経緯を話した。
『拝都…これでハイトと読むんだな?』
普通では考えられない転生劇や、文明とタピオカについては全く触れず
俺の名前に興味を示したリゼロアさんは予想通り変わってる人なのかもしれない。
斧田拝都、フルネームで名前を書いてみせた。
『苗字か、いいものだな 大切にしなさい。私はもう思い出せない』
こっちの世界で苗字を把握している人は少ないらしい。
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