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シーフの俺がギルドに入れること

添削よければおねがいします!


 まだ日が高いうちに、ジークは盗賊(シーフ)ギルドに来ていた。


 建物の外観は役所のような綺麗な作りだが、敷地内はかなり広く中心あたりに大きな木などが数本生えている。


 扉の前でジークは大きく深呼吸をする。ここへ来るのは2度目だ、一度目は三日前にアレクシス達と三人で来た。


 何しろ、ジークはこういった場とは縁がなかっただけに入るのにも勇気がいるようだ。


 しかし入団手続きももう終わっている筈で、今日からは訓練を受けさせて貰える手筈だ。アレクシスの話も通っているはずだ。


 意を決したように、恐る恐る扉を開ける。広く綺麗なエントランスが目に入る。その奥には更に広い吹き抜けの三階だてになっていて図書館のようにぎっしりと詰まった本棚が目の回るほど置いてある。


 柱には真鍮が豪華にあしらわれており、高そうななシャンデリアが磨き抜かれた大理石の床に映り込んでいる。


 身なりの綺麗な従業員が忙しそうにいったり来たりはしているが、エントランスホールは静かで本をめくる音だけが響いている。


 ギルドメンバーと推察できる多くの者達が、分厚い古書とにらめっこをしている。


「と、とりあえず受付だ…」


 ジークは早くも気押されながら受付へと歩いていく。受付の女性が書き物をしていたが早くもこちらに気付き手を止めた。年齢は近いようだがベテランの動きを見せる。


「おはようございます、本日はどのような御用件でしょうか?」


 受付嬢は軽く会釈をし笑顔を向ける。さすが受付業務だけに可愛らしい顔立ちをしている。薄く素材を生かした化粧をしていて、黒のショートカットに黒縁のメガネは清楚さを際立たせている。


「あ、あの……今日から入団する事になっているジークって者だが…」


 ジークは慣れないようでぎこちなく伝えると、受付嬢は快く受け答えをする。


「ギルドの新規入団者の方ですね! ありがとうございます! 最近は入団する方もめっきり減ってしまったのでギルド一同歓迎しますよ!」


 受付嬢は初めの凛とした雰囲気とは違い、快活で人当たりの良さを感じさせる。それを見てジークの緊張も少し解れた。


「そ、そうなのか…やけに豪華な内装だから景気は良さそうだけどな…!」


 ジークの発言を聞き受付嬢は小さく笑う。


「ふふ、そうですね。盗賊(シーフ)ギルドは専門職を生かした業務(クエスト)を主に請け負いますので、いわば専売特許による独占商法ですから!


何処の業界にも引く手数多な反面、慢性的な人手不足にも悩まされていますが…」


「ほー、そうなんだな…どこも良い面ばかりではないようだ」


 ジークは心配したように呟くと受付嬢はまたクスクスと笑う。


「そうですね、ジークさん確認が取れました。何やらギルドのマスター直々に教えて下さるようですね? もしかして凄い人ですか?」


 ジークはそれを聞き慌てたように直ぐに否定する。


「い、いや、俺なんか何にもすごくねぇよ!凄いのはあいつだ!?」


「あいつ?」


 受付嬢は何やら不思議そうな顔をして立ち上がる。


「そ、それに会話しながら手は作業してたんだな、あんたも…凄い!」


「うふふ、そうですか?お言葉に預かり光栄です! それでは私がご案内しますのでこちらへどうぞ」


 ジークの褒め言葉に屈託のない笑顔を見せると、カウンターを出て通路の奥へと促す。ジークはその後をそそくさと着いていった。


 エントランスから扉の一つを抜けると長い通路を進んだ。窓からは中庭が見える。噴水や花壇が華やかだ。


「これからは長い付き合いになりそうですね、ジークさん」


 受付嬢から急に振られジークは動揺する。


「え、あぁ、そうなのか?」


「ふふ、少くともそうだといいですね! 盗賊(シーフ)ギルドは殉職率も低くはありませんから…」


「あぁ、そういうことか…」


 ジークは納得したように呟く。潜入などを生業にしているのだ、危険な仕事なのは間違いない。すると話を変えるように受付嬢が明るい声で話し出す。


「こうやって出会えるのも何かの縁ですね! 私はシェイラ・グリーンと言います! これからよろしくお願いしますねジークさん!」


「あ、あぁ…よろしく…」


 ジークは頬をポリポリと掻きながら答えると、察したようにシェイラが答える。


「ふふ、馴れませんか?シーフギルド」


「あぁ、なんというか…あまりに想像と…」


 シェイラは笑顔を見せる。


「ふふ、それはよく言われますね! 盗賊(シーフ)ギルドって言うから知らない人には盗賊のアジトみたいな場所だと思われているみたいです! 


でも実際には公的組織ですし、表向きに一般人にもクエスト窓口を設置していますから、誰でも来やすいようにまるで役所のようなクリーンな外観なわけです」


「なるほどな…俺ももっと厳つい男達が昼間から酒を飲んでるような所だと思ったよ」


「あはは、まさか! 確かにそういう考えをもって入団する人もいますが、印象と違いすぎるのか直ぐにギルドを辞めてしまいますね、それも人員不足の一因になってます。


なにしろシーフは勉強しても勉強しても足りないほど知識を必要とする職業ですし、シーフのなかでも専門の知識分野が別れていらっしゃるくらいです。


たとえば貴重品の鑑定からトラップの解除までその分野は多岐に渡ります。想像以上に本ばかり読んでるインテリ集団なんですよ?」


 ジークは説明を聞いて顔をしかめ舌を出す。


「うぇー、俺も辞めたくなったぜ…勉強なんてしたことねーし。それに俺は体で覚えるタイプなんだよ…」


 それを聞いてシェイラはコロコロと笑う。


「ふふふ、そうですか? でも皆さん戦闘訓練も欠かしていませんよ?」


「なんだよ、予想以上に真面目ギルドみたいだな…」


「ですね、それではここでシーフの刻印を入れて貰います」


 シェイラが急に立ち止まった。そこは人一倍大きな扉だった。ジークはすかさず尋ねる。


「刻印?」


「あれ?ギルドの入団登録の後、説明会で聞きませんでした?」


「あー、あれね…寝てたんだ…」


「なるほど…じゃあ説明しますので中へ…」


 シェイラは力一杯に扉を押すと開いた隙間から二人は中に入る。


 中は円形状のそこそこ広い部屋になっており、またしても壁一面に本が並んでいるようだった。ランプの油が切れているのか薄暗く、開いた扉から入る光だけが唯一の光源だ。


 今までの造りと異質なほど違うのは床の石畳に黒い魔方陣の様なものがあるという事だ。一言でいって不気味である。ジークは生唾を飲み込みシェイラに聞く。


「おい、悪魔でも呼ぶんじゃねぇだろうな…」


「あはは、まさか! どのギルドでもする歴とした入団儀式ですよ!」


『そういうことだ』


 不意の暗闇から発せられる言葉に、ジークは身構える。


『そう警戒するな』


 暗闇から現れたのは白衣を纏った細身長身の男性だった。目の下には深い隈が刻まれ、髪はボサボサに乱れている。一目で不健康そうな男は怠そうに言葉を続けた。


「いやぁすまないね、徹夜で書物を読み漁っていたらいつの間にか寝てしまっていたようだ…」


 シェイラは驚いた素振りも見せずに答える。


「すみませんねドクさん…お忙しい中!」


 するとドクと呼ばれたその男は興味深そうにジークを見る。


「それはそうと彼が新しいメンバーかい?なかなか見所がありそうだねぇ…」


 ジークは全身を舐めるように見らればつの悪そうに答える。


「そうか?それはお眼鏡にかなって良かったぜ…それより刻印について教えてくれ」


「くく、そうかい? 説明は大好きだが、書物を読む時間が勿体無いから手短に話すよ…


ギルドの刻印とはいわば身体強化の加護だ、神が勇者に光の加護を渡すのと同時に、弱き人間にも魔物に対抗する加護を与えたのが起源だと言われる。


実際の所、原理は詳しくは解っておらんがね……実に興味深い…もし、これが解明されるたのなら…」


「ドクさん! 話がそれてます!」


 話が暴走しかけたドクをシェイラが止める。


「おっと、そうだな…その加護は強力なうえに無闇に与えると人間同士の争いや犯罪を生むことにもなる、そこで今はギルドの管轄で管理していると言うわけだ、ついてこれているかな?」


「あ、あぁ…眠っちまう前に最後まで頼むぜ」


「ギルドの刻印の加護による身体強化は、ギルドによって異なる術式を使う。


盗賊(シーフ)ギルドは主に俊敏性などだな。素早く柔らかな身のこなし、極めれば体が羽根のように軽くなるはずだ…


それに身体強化ともう一つ、これが根幹になるわけだが『スキル』と呼ばれる物を習得できるようになる。


一部の魔物にある、魔力を扱う器官を刻印が疑似的に役割を果たすという訳だ。興味深いだろう?それにより神聖術や物理法則を超えた技が使えると言うわけだが」


 ジークはそれを聞くと大きく身を乗り出す。


「す、すげぇ!じゃあ俺もすぐに強くなれるんだな!!」


 ドクは人差し指を左右に揺らして眉をひそめるながら制止する。


「ちっちっ!話しは最後まで聞け。刻印にはレベリングがあるんだ」


「れ、レベリング?」


 ジークは心底わからないといった顔を見せる。


「レベリングとは刻印の熟練度の様なものだ、実践経験や戦闘訓練、さらには知識を積む事によって、その精神状態や肉体的負荷が刻印の力を強めていくと言われている。


そういった所謂(いわゆる)、経験値が貯まることによりさらなる身体強化やスキルが身に付くのだ。


実の所は解明されてない部分がほとんどなのだが、実際にそうなのだから仕方ない」


 ジークは項垂れる。


「そんなうまい話はないか…強くなったりスキルを覚えるには地道に修行するしかないと言うわけだな…」


 それを見たドクは楽しそうに答える。


「まぁ、そういうな。ある日を境に別人のように桁違いに強くなった者もいるらしい。そういった凡例があるのも事実だ、詰まるところ精神状況が大きく関係しているのか…解明はまだ先になりそうだ…


それはそうとスキルにも刻印によって得て不得てがある。盗賊(シーフ)の刻印は魔法には向かん、攻撃魔法や回復魔法を覚えるのには絶望的と言えるだろうな」


「そうなのか…まぁ、元から魔法って質じゃねぇしな」


「よし、話も長くなったが刻印を入れようか?」


 ドクが話を切り上げる。


「入れるってやっぱり体に入れるのか?どうやって?」


 ドクは不気味な笑顔を見せる。


「それはお楽しみだ、好きなところに入れてやるよ、痛いぞ~、くくくっ!!」


 それを聞いて一歩後退りをするジークの背中をシェイラが押す。


「ふふ、大丈夫ですよ痛いのは一瞬ですから!」


「ちょ、ちょっとまてシェイラ!!心の準備が!!」


「さて、どこがいい?鎖骨は痛いが欠損しにくくていいぞ~!?よし!鎖骨あたりにしよう!!」


 ドクとシェイラはジークを無理やり魔方陣に引きずり込んだ。


「ちょ、まちやがれ!!」


『アアアアアアアアア!!!』


 刻印研究室にジークの叫び声が響き渡った。


~~


 あとに聞くに心臓から離れた位置、つまり手足の方が痛みは少なく大抵は手の甲や足首に入れるらしい。


 ジークはそれを聞き頭を抱えると共にドクという男にはあまり関わりたくないと思うのだった。


 ジークは刻印を終えると盗賊(シーフ)の記章を貰った。これで晴れて正式に盗賊(シーフ)ギルドに所属した事になるのだ。


 この後ギルドマスターの女に更なる苦痛を与えられることを、ジークは知るよしもなかった。


 


 















 












 


 

ありがとうございました!


よければブクマを!つぎは1日、二日後に!

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