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シーフの俺が相談に乗ってあげられること

添削誤字脱字直してもらえるとありがたいです!できればこんな表現の方がいいのような添削も歓迎してます!どんどん取り入れます!


「この宿です」


酒場(パブ)から少し歩いただろうか、アレクシスが指差した宿は豪華とまでは言えないが綺麗な普通の宿だった。正面には『ムーンシール』と書かれた可愛らしい看板があり、大きな観葉植物が特徴的だ。


入り口をあけるとほぼ同時に宿の女将が小走りで寄ってきた。


「大丈夫でしたか?」


そう言いながら心配そうな表情をする年増の女将。清潔感のあるふくよかな体型で柔らかい雰囲気を醸し出している。


「なんとかなりましたよ、直ぐに教えていただいたお陰でそんなに大きな騒ぎにはならなかったみたいです。」


アレクシスがすこし困ったように言うと、グレースはそっぽを向いて口笛を吹いている。


「それは良かったです、勇者様一行に何かあったとなってはうちの提携店の名折れですからね!」


女将はほっと胸を撫で下ろす。そのしぐさは心から怪我がなくて良かったという安堵からだろうか。そしてはっと気づいたようにジークを見た。


「こちらはお連れのかたで??」


アレクシスは申し訳なさそうに紹介する。


「彼はジーク、どうやらグレースを助けて頂いたみたいで。あの場ではなんですので来ていただきました」


女将は察したように余計なことは言わなかった。


「それではお茶を淹れますのでごゆっくりどうぞ」


アレクシスとジークは誰もいないエントランスのテーブルについた。グレースはもう寝るからと他人事のように直ぐに自室へと向かった。


「あれで勇者一行なんだな……」


ジークはあきれたように不満を漏らす


「彼女はああみえて良いところがあるんですよ」


アレクシスは優しい声でフォローした


「良いところ、ねぇ……今の所自分勝手な女にしか見えないがな……あの時俺が居なかったらどうなっていたか……」


「あはは、やはりそう見えますか?それでも彼女は人類を守るって決意した人間なんですよ?自分を犠牲にしてでも見ず知らずの人を……あなたは守れますか?」


「……まぁ、そんときにならないと分からないだろ」


「まぁ、そう言われるとそうなんですが私は信用してますよ。何より彼女の魔導の力は一級品ですからね」


アレクシスが自信満々に言うとジークも納得したように首をすこし振った。


「ふーん……やっぱ強いんだな……」


「もちろん勇者の一行に入る為の要素は色々あると思いますが、強さもその資質の一つだと思いますよ」


『お待たせしました~』


女将がティーセットをトレイに乗せて持ってくる。ポットからは白い湯気がふわりと立ち昇っていた。


「お話の途中にすみませんね……」


女将はまた申し訳なさそうにカップを配る。


「ありがとうございます。こちらこそすみませんねこんな時間に」


「いいんですよ、勇者様にとって大切なことなのでしょうから」


そのとき、階段の軋む音と共に高い女の子の声が降ってきた。


「私にも一杯もらえますか?」


水色のサラサラとしたショートカットに水晶のように輝く黒い目。絹のような滑らかな白い肌の女の子がアレクシスを見据えていた。


「リル!まだ寝ていなかったのですね!」


勇者が驚いたように言うと、リルと呼ばれた彼女はすこしほっぺたを膨らませた。


「アレクシス……私は子供じゃないんですよ……」


リルの不服そうな呟きを聞いたアレクシスは苦笑とともに隣の席を引きつつ、ジークに向かって簡単な紹介をした。


「彼女はリル・カーティス、私と同じ修道院の出身で現パーティーメンバーの神官(プリースト)です」


「はじめまして、えと……」


リルは会釈をしながら席に座る。


「俺はジークだ、縁があってここにいるんだが……」


ジークはすこし視線を下におろすと黙ってしまった。


「ジークさんですね、あ、アレクシス……それより記章は見つかったのですか?」


「記章……か……そうでしたね……まだわかりませんね……」


ジークはドキッとした。そういえば、こいつは勇者だった。ということは……


「そうですか……あれがないと城に入れませんよ……」


「そうですねぇ……」


アレクシスとリルはティーカップを覗くようにして頭を抱える。


「あ、ちょっと小便…」


不意にジークが立ちあがると、アレクシスがすこし驚いたように顔を上げて通路の奥を指差す。


「あぁ、突き当たりの右側ですよ」


「あぁ、すまない。」


足早に厠に入る。


「これが勇者の記章ってやつだったのか……」


ジークの手にあるのは細い金属製のチェーンがつけられた掌に収まる大きさのバッジだった。


アレクシスに初めて会ったとき、去り際にいつもの手癖の悪さを発揮してくすねたのだった。助けてもらった恩など関係はない。その時のジークには妹のための金を作ることが最優先だった。そして、そのままどこかで売り飛ばすつもりでポケットに突っ込んでいたのだ。


そのあと色々とあったお陰で自分がこれを持っていたこと自体忘れていた。今の今まで確認を怠っていたのはそのためだ。


バッジをスライドさせて開けてみると、中にはドラゴンと剣の紋章が描かれていた。これはレイグリッチから聞いていたものと似ている。ジークは間違いないと確信した。


それにしても…とジークは思った。今回はアレクシスが勇者と知らないで盗ったものがたまたま探し物だったわけだが、仮に勇者と知っていたとしても、まさか首輪にしているとは夢にも思わなかっただろう。あまりにも無用心だ。


「早いところずらかるか……自然に……」


ジークはなに食わぬ顔でエントランスに戻る、二人は何やら話し込んでいた。


「ジーク、つかぬことをお聞きしますがこのくらいの記章を見ませんでしたか?お昼頃にあなたとぶつかったときに落としたのかもしれません」


アレクシスは人差し指と親指で大きさを再現している。


「……それどころじゃ無かったからなぁ…それにあの大通りだともう誰かに拾われて無くなってると思うぜ。すごい人通りだからな。」


ジークは冷静に返した。怪しまれる素振りは一切見せない。


「そうですか……」


最後の希望だったのかアレクシスは大きく肩を落とした。


「あれがないと勇者の特権がなくなり旅も頓挫してしまいます……」


リルも落ち込んだ声を漏らした。アレクシスはばつが悪そうにしつつ、慰めを口にする。


「はは…まぁ、特権がなくとも路銀は稼げますからきっとなんとかなりますよ…」


「そうは言いますけど、普通では入れない地域だってありますし、アレクシスはギルドに所属している訳でもないので記章がないとただの住所不定の無職ですよ?」


「リルは手厳しいですね……」


「それはそうですよ!アレクシスは人類の希望ですよ!?勇者がいない世界など、闇に覆われ破滅する道しかないのですよ!?」


「それは大袈裟ですよ、勇者の階級がなかったとしても私自身が消えてしまうわけではありませんし。大変にはなると思いますが……魔王は私が倒しますから……」


「でも、魔王の軍勢を止めるのが遅くなるほど街や村が犠牲になるのです!何千……いや何万人もの人々が亡くなるかもしれないのですよ!」


「そうですね……」


エントランスには重苦しい空気が流れていた。ジークは内心で葛藤していた。


ジークの持つ記章があれば勇者一行はいままで通り旅が出来るだろう。


しかしその場合レイグリッチから薬は買えず、妹の命を危険にさらしてしまうだろう。それに仕事を失敗することで自分の身も危険に晒される可能性すらある。


対して、このまま記章がなければ勇者たちは多大な足止めを食らうことになるらしい。

さっきの話が本当なら最悪何万人と犠牲が出てしまう可能性すらあるのだ。


自分達の命と何万人かの命を今ここで天秤にかけているのだ。ジークの頬を一筋の汗が流れた。


今返せば屈託のない勇者だ。きっと咎めることはしないだろう。


しかしジークは記章を返すことが出来なかった。妹は彼にとっての全てだからだ。何万の顔も知らない人々より、たった一人の妹を守る道を選んだのだ。

 

「あ、そうだ……」


急にアレクシスの表情が明るくなる。それを見てリルも表情が綻んだ。


「よい案が浮かんだのですか!?」


「ええ!ジークに協力してもらいましょう!」


ジークは急なアレクシスの提案に動揺を隠せなかった。


「な、なにを!?」


「ジークはこの辺りでは盗人(シーフ)ジークって呼ばれていると言っていましたよね?つまり少しは情報屋などに顔が利くのではありませんか?どのみちあの記章は正規ルートじゃ到底売ることの出来ない代物です。誰の手に渡ったかは分かりませんがおそらく裏ルートに沈んでいくと思いますし」


「しかし、一般人に渡っていた場合どうするのですか?」


リルがすかさず聞く。


「その場合、価値に気づいて売ってしまうような人なら直ぐに足がつくでしょうし、大事にもっていただけるのであれば時間はかかっても見つかると思います。価値に気づかない人が拾って持ち帰った場合が厄介ですが、最悪懸賞金を出すのもよいでしょう!」


「まぁ、それしかないようですね」


リルは冷めかけた紅茶を手に取った。


「ね、ジーク?手伝ってくれませんか?あなたには何か縁を感じるのです!」


アレクシスは満面の笑みを向けながら手を差し出してきた。


ジークは少し戸惑いながらも手を握り返すしかなかった。ガッチリと握手するとアレクシスは嬉しそうに少し笑った。


「あぁ、わかった。だが力になれるかはわかんねーぞ」


アレクシスはそれを聞くと真っ直ぐな目でジークを見る。


「きっと大丈夫です。何故かそんな気がするんです!」


~~


薄暗い部屋は何もないぶち抜きの窓からさす月光だけが照らしていた。ジークはなるべく音をたてないよう忍び込むように窓をまたぐ。

 

風がゆったりと吹き込み、夜はほんのりと涼しい。ジークは妹を労り毛布を深く被せる。するとニーナがうっすらと目を開けた。


「……ジーク…お兄ちゃん?」


消え入りそうな声がする。それでもその声を聞くだけでジークの心は温かくなった。


「悪い、起こしちまったな……」


ジークがほっぺを指でカリカリしながら答えると妹は深く咳き込んだ。


「ゴホッゴホッ!」


ニーナの咳とともに古いベットが軋む。ジークは慌てたように声をかける。


「大丈夫か!?」


「うん、大丈夫だよ…ゴホッ…」


そういうとニーナは咳き込みながらも安心したのか寝息をたて始めた。


「だめだ……」


ジークは静かに窓辺に腰かけた。ニーナの体調は目に見えて悪化している。このままでは時間の問題だろう。


「ごめんな……ダメな兄ちゃんで…ニーナ……」


ジークの頭の中でアレクシスに言われた言葉が響いていた


『自分を犠牲にしてでも見ず知らずの人を……あなたは守れますか?』


ここまできても記章をレイグリッチに渡すかまだ迷っている自分が情けなくて仕方なかった。ジークは膝に顔を埋める。


ニーナにとって信頼をおけるのはジークだけだ。


ジークにとっての世界がニーナだけなのと同様に、ニーナにとっての世界もジークだけなのだ。


その自分が助けるか迷っている。そんな裏切りがあっていいのか。すこし前の自分なら迷わずレイグリッチに記章を渡していただろう。ジークの中で何かが変わり始めていた。


明日は経過報告のためレイグリッチに呼び出されている。


ジークは疲れからか悩んでいるうちにそのまま微睡みに落ちていた。


~~



ありがとうございます!


地味な展開がつづきますね、レビュー添削コメント、こういうストーリーよくない?などのアドバイスも待ってます!


次は一日か2日ごに投稿します!

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