学校生活
まぁそんなわけで、僕の高校生活は幕を開けた。
そして、今に至る。そういうわけだ。
まぁ今に至るっつっても、入学式は先週か先々週くらいの出来事なのだが。
今日の1時間目は国語。
古典の授業は何かとペアワークが多い。今は優奈が隣だからまだ話せるものの、席替えをすれば知らない奴が隣になると考えると背筋に冷たいものが走る。
まぁ優奈が隣でもペアワークにはならないのだが。
「見て、蛇腹」
「プリントの切れ端で遊んでんじゃねぇ」
小学生か。
優奈は短冊状の紙二枚を使い、蛇腹を作っていた。優奈は早速作った蛇腹を伸ばしたり縮めたりして遊びだす。
そう。こいつは基本教師の話を聞かないのだ。『教師』という人種が嫌いらしいのだが、まぁその理由はお察しいただけよう。僕も教師は嫌いだ。
だがここまで来るとなかなか面白くもある。教師に見つからないのが不思議ではあるが。
「蛇腹って楽しいよねぇ」
その気持ちはわかる。大いにわかる。伸ばしたり縮めたりするのが妙に楽しい。
ただ、時間を弁えてくれ。ほんとに。
当てられたら困るから。僕は答えわかるけど。
「じゃあ優奈さん、この場合のこの単語の意味は」
言わんこっちゃない。
「過去です」
当てんのかい。いや当てるのかよ。
教師も微妙な表情なっちゃったじゃん。
そう。優奈は話聞かないくせに勉強は理解しているという、教師からしたらウザったいことこの上ない生徒なのだ。
そんなこんなで午前も終わり。
午後は体育館に集まっての部活動紹介だ。
僕は将棋部に入るつもりだ。優奈はテニスがしたいだとか。
ちなみに僕は中学時代テニス部で、優奈は帰宅部だった。
そして、ここから1週間、部活動見学が始まる。
まぁ僕は、運動部なんて見に行かないけど。
将棋部では、数名の生徒が将棋盤の前で腕を組んで、必死に頭を回らせていた。
「やぁ、見学の人?」
そう言って僕に声を掛けたのは、黒髪短髪の爽やか系イケメン。サッカー部とかに居そうなタイプだ。見た目で判断するのも良くないけど。
「俺は青貫悠真って言うんだ。君は?」
「鈴木夢莉っす」
「うん、夢莉君ね。さっそくだけど、やる?」
「いやぁ、僕将棋あんまりやったことなくて…」
嘘だ。やったことはある。家で。優奈相手に。
優奈は基本的になんでもこなせるハイスペJKのため、将棋も出来るのだ。大抵僕が負ける。僕が勝つ時もあるのだが、その時は大抵優奈が将棋盤をちゃぶ台返しする。まぁ百均で買ったやつだからちゃぶ台返しというより、ただひっくり返すと言った方が正しいが。子供か。
「そうか…ウチに未経験者が来るのも珍しいな」
まぁ、そうだろう。未経験で将棋と言うのは些か重い。部活なんて言っても、もはや誰も近づかない。経験者であれば別だが。
「じゃあ詰将棋でもやってみる?」
「なんすかそれ」
「決められた駒の配置と持ち駒と手数で詰みを作り出すんだ。簡単なものから超ムズいものまであるぜ?」
「おぉ、面白そうっすね」
「だろ!? よし、早速やってみようぜ! 俺もヒント出すからさ!」