表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

快活童話

と、ここで何気なく振り向いたグリムと目が合う。


最悪だ。


「んお? 夢莉に優奈じゃねーか! お前らも杉川第一(ココ)だったのか!!」


さらに話しかけながら近づいてきた。マジかよ。


「あ、あぁ…偶然、だな」


「? なんでそんなぎこちねーんだよ」


「あ、グリムくん、ちょっと」


優奈はグリムの手を引きながら教室を出ていった。

僕はそれを見送ってから、大きく息を吐いた。そう。僕は彼が苦手だ。それも、最悪の理由で。


僕は1度、いじめに対し、"見て見ぬふり"をした、と言ったと思う。

その時のいじめの被害者が、彼なのだ。


主犯格は当然、蜂篠。


手口はまた違った。

力で男子にかなわないと判断されたのか、机への落書き、上靴への画鋲の仕込み、女子による無視、などが主だった。


僕は優奈の時と同じく、"たまたま通りかかって"、優奈の時と違い、"無視した"のだ。


関わりたく無かったから。


あの時の彼の目は、今でも忘れられない。

もはや、何も見ていなかった、あの目を。


それが、僕の中で1番大きな後悔。


それがあったから、僕は優奈を助けた。

ただ、それだけの話。


僕は、優奈にだけ、それを話していた。

優奈は「大丈夫だよ」と、そう言ってくれたが、僕には全くそうは思えなかった。


そいつとまさか、ここで再会することになるなんて。


そこで、グリムと優奈が戻ってきた。


そして、グリムはまっすぐ僕に近づいてきた。


そして、口を開いた。


「お前、俺になんか後ろめたいことあるだろ」


「…いや、えっと…それは…」


「あるのかねぇのか、その二択だ。さっさとしろ」


「………」


僕はもう、諦めた。


「……………ある」


「嘘つけ、ねーよ」



…………………………………………は?



「お前が俺に対して後ろめたいことなんて1個もねぇ。あんな事気にしてたら生きてけねーぞお前」


そう言うと、グリムは僕の頭を小突く。その顔は、なんと笑っていた。


「まぁ見て見ぬふりってのは悪い事だけどよ? 結果的に優奈(コイツ)助けてんじゃねぇか。全然いい事じゃねぇかよ!」


「え、いや、僕は、お前を見捨てて…」


「気にすんなっつってんだろ? それに俺、親父の用で元々転校する予定だったし」


「あ、え?」


転校はいじめを苦にしてのものだと思っていた。


「まぁそれもあるけどな。別に俺はお前を憎んでねーし。憎むとしたらクソバチの野郎だなー。聞きゃ優奈もいじめられたんだろ? んじゃ夏休みにでもボコりに行こうぜ、な?」


そう言って、グリムは僕の肩を叩く。


「…あぁ、ありがとう」


「いーっていーって、気にすんな! …あ、ところでよ…」


グリムはぽんと手を打つ。


「どした?」


「今優奈から聞いたんだけど、お前ら付き合ってるってほんと?」


「………へ?」


「いやだって、超自慢気味に話してきたからさ」


「優奈、お前後で話がある」


「…………すみませんでしたっ!!!」


腹を抱えて大笑いするグリムに、頭を下げて動かない優奈、そして額を押さえる僕。


高校生活は、中々楽しいものになりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ