後悔と自責
あれから、僕と優奈は頻繁に会うようになった。
あの時で優奈へのいじめはぱったりと途絶え、僕は優奈を除く学年の女子全員から距離を置かれるようになった。
ただ、一つ気になることがある。
なんで、学年、いや、学校一の美少女とも称される優奈がいじめのターゲットになったのか、だ。
さすがに本人に聞くことはしなかった。というより出来なかった。
その後、僕たちは中学の卒業式を迎えた。
相変わらず僕と女子たちの間には邪険な雰囲気が漂い、優奈は仲の良い男友達と駄弁っている。
その帰りは、優奈と一緒に帰ることにした。
「一緒に帰ってほしい」と優奈に頭を下げられたのだ。断る理由もなかった僕は、二つ返事で了承した。
───まさか、「付き合ってください」なんてセリフを聞くとは思わなかったが。
そう。告白されたのだ。
僕が、優奈に。
一瞬、頭のなかにはハテナが飛び回った。クエスチョンマークフィーバーだった。
「……え、僕?」
「うん……夢莉くん、私と付き合ってください……!!」
困った。こういうときどうすればいいのだろう。
なんせそういうのとは無縁の生活だったから。
とは言え、特に断る理由もない。今のところ。
自分がノーと言えない日本人である事を自覚しつつも、僕は了承した。
それが、僕と優奈の馴れ初め。
そして、衝撃的だったのはそれだけじゃなくて。
それは、高校の入学式の日。
僕と優奈は同じ電車に乗り、高校の正門を潜り、体育館へ向かう。講堂みたいなものは無く、行事は専ら体育館で行うようだ。
そして、無事式も終わり、優奈に叩き起され、教室へ向かった。
僕と優奈の席は教室の一番後ろで、まさかの隣同士。運がいいのか悪いのか。
と、優奈が僕の肩を叩く。
何事かと優奈を見ると、優奈は前から2列目辺りを指さして、こう言った。
「……ねぇ、あの子……見覚えない…? もしかして、なんだけどさ…」
僕は優奈の指さす先を見る。
それは、確かに見覚えのある顔だった。
そして、その生徒に話しかける男子の声で確信した。
「なぁ、緑夢は緊張とかしねぇの?」
「さすがにするわバカ」
それは、僕の後悔の根源で。
元同級生の───いや、もう同級生か。
男子高校生となった、桐弥緑夢が、そこにいた。