レベルアップした!
職業 転移者
異世界から何らかの理由で転移、あるいは召喚された者の事。 特に秀でた能力は無いが豊富なSPで多種多様なスキルを習得することが可能な特殊職業。
「にしたって極端な…」
レベルが2に上がったことでステータスが向上し、スキルを習得する為のSPを1万P手に入れた。
現在の能力は…
寺堂 望人
プレイヤーランク2
職業 転移者
レベル 2
HP 20/20
MP 5/5
攻撃力 12 防御力 10
魔攻力 1 魔防力 1
移動力 4 素早さ 15
筋力 6
体力 6
頑強 4
知性 25
敏捷 12
魔力 0
精神 10
器用 9
信仰 5
魅力 5
運気 5
取得スキル
無し
全体的に向上してはいるものの大幅なパワーアップといった様子はない。 強いて言うならなんだかやたら知性が上がっているくらいか。 魔力は相変わらず0のままだし、信仰 魅力 運気も特に上昇した気配は無いみたいだな…。 何か条件があるんだろうか?
仕方ないので次はスキル欄を見てみることにした。
「お、なんかあるな」
メニューを開いてみると取得できそうなものが3つほど表示されていた。
スルスルとスワイプしながら説明文を読んでいく。
「何々? ダメージ軽減スキル…全属性ダメージを1まで軽減する…。 あまり大したことは無さそうだが…」
確かに1ダメージしか軽減出来ないようなスキルを獲得しても仕方ないかも知れない。 が、たかが1と侮るなかれ、ひとたび1のダメージを受ければ悶絶必至の今現在これはかなり有用なスキルなのではないだろうか。
「消費するSPも10だしこれは獲得せざるを得まい。 しかし残りのやつはコレ意味あるんだろうか…」
画面をタッチして軽減スキルを獲得し、残りのスキルの名前を再度確認する。 そこには…。
取得技能
パンチ
キック
とあった。
「いや今までも通常攻撃で普通に殴ったり蹴ったりしてたし今更パンチとか覚える必要性あるの?」
少々疑問に思いながらも詳細を見てみるとパンチは素手時の通常攻撃の150%、キックは180%ほどの威力補正がありパンチのほうが命中率とクリティカル率が、キックのほうが射程 攻撃範囲 クリティカル時の威力補正 ダメージの上限が高いようだ。 また使用時にどちらもHPを1消費するとある。
ちなみに通常攻撃は本来なら装備している武器による攻撃になるが現在装備している武器が無い為素手時通常攻撃となる、ということらしい。
「つまり今のところ覚えて損は無い、という事か。 なら覚えるしかないよな、 消費SPも少ないし」
「しかし使うたびにHPを消費するのかぁ。 今のHPだと20回、いや20回使ったらHPがゼロになるから19回? あ、待てよ… 敵の攻撃でHPが減ったらもっと使える回数減るのか…」
さらには消費したHPによる身体への影響も気になる。 HPを1使うということはダメージを1食らうのと同義なのではないのだろうかという懸念もある。 まさかパンチを繰り出すたびに悶絶するような痛みを伴うのだろうか…。 考えただけで恐ろしい。
とはいえ現状 強力な攻撃手段が増えるのは急務といえる。 仕方ないのでSPを消費し覚えてみる事にした。
画面に映っている習得ボタンを押すとポンっと音がして体が淡く光った。 どうやらこれで使用することができるようになったようだ。
「まずは試してみるか…」
画面を閉まって振り返り、砂浜をのそりのそりと歩いているスライムに突撃する。
「試しだし 今回は手動で行こう」
コマンドの入力を選び、技の欄からパンチを選ぶ。 すると通常攻撃と同じく身体が勝手に動き始めて…。
バチィィーン!
「お、おぉ…」
殴った。 うん、殴った。 それ以上でもそれ以下でもなく殴った。 強いて言えば通常攻撃のときよりパンチっぽいというか、カッコいい?殴り方のような気がする。
「あ! でもスゴイぞ!?」
見るとスライムのHPバーがほとんど無くなっている。 ログを確認するとどうやらクリティカルが入り6のダメージを与えたようだ。 残りはもうHPバーを見た感じ1か2しか無さそうだ。
「すげえーー! もうあとは通常攻撃でも一撃じゃね!? なんか反動のHP消費も特に痛みは感じないしこりゃもう無敵なんオゴッボォ!?」
パンチの威力に感動していてすっかり忘れていたが、こちらの攻撃が終わったことで相手のターンに移行していたようだ。
それによりスライムの攻撃が発動、望人はおもいっきり腹に体当たりを受けてしまった。
「うぐぐ… 油断した…。 てか軽減はどうなってんの!?」
ステータスを確認してみたところ覚えたらちゃんとセットしないと発動しないようだ。 手に入れたら装備しよう、うんコレ大事。
その後キックも試してみたがこちらは大振りな為、通常攻撃と同じくたまに外してしまうことが多々あった。 が、威力は申し分なく当たれば大半のスライムを一撃で屠ることが出来た。
「外してしまうのはどうやらスライムが近すぎるせいだな。 離れたらキック、近い時は当てやすいパンチのほうが良いみたいだ」
幸い 時間はたくさんあるから沢山試すことができるので、大体の特長を把握することはできたのだが…。
「飽きた…」
いかんせん半年もかけて覚えた技がただのパンチやキックでは致し方ないかもしれない。 ただそれでも…
「もうちょっとなんか覚えられればなあ」
そう思いながら指を振りメニュー画面を眺めていると習得した術技欄の右上にヘルプアイコンが出ていた。
なんだなんだ?と触れてみるとその項目にはラーニングの文字が。 どうやら標的に設定した相手から技やスキルなどを学ぶことができるシステムのようだ。
けっこう便利そうだな… と思いながら手近なスライムに照準を当てる。 コマンドを選択すると???と書かれたスキルと思われるものがいくつか表示されている。
「とりあえずやってみよう」
そのまま戦闘に入り、ラーニングを発動する。 ボワッと目の周りが光りはじめた。
「…あれ?これだけ?」
それ以上特に何かが起きる様子はなかったが、自身のターンが終了し、スライムの攻撃を受けたことでラーニングの効果が発揮され、体当たりの技を覚えることができた。
「なるほど、学習ね。 実際に見たり受けたりしないといけないわけか」
再度スライムをラーニングの標的にすると???だったものの一つが体当たりになっていた。 まだ他にも4つ???がある。
「こーゆーの見るとついつい全部埋めたくなる性質なんだよなぁ」
幸いにもほぼ不眠不休で食事などの制限もなく動ける上にこの小さな島 (無人島?) では他にやることもないためスライムのスキルラーニングに望人は没頭した。
当初はただ攻撃を受けるばかりであったが、数日してそれでは体当たりしかしてこないことに気づく。
スライムのHPを削り尚且つ距離を取ることで放たれた『溶解液』を見ることでそのスキルを得る事に成功。 早速試してみるが思ったよりも『溶解液』の威力が高すぎたことと感覚が掴めずに全身から噴出させてしまったたため、一瞬にして自分を溶かし尽くしその場で復活
数週間も試している内に全身ではなく部分的に出せることに気づいたが、敵にダメージを与えるほどの量ともなると数秒も持っていることができず自分の腕や足が溶けてしまいそのまま死亡、そしてリスポーンの繰り返しとなってしまい上手くいかなかった。
ダメージ軽減スキルと組み合わせることでじんわり手に滲ませる程度ならば可能ではあったが、ダメージを受けない量にするための調整にかなりの集中力を要する上にもって数秒程度、しかも量が少なすぎるので技としてダメージを与えるには程遠いという結果に。
ハイ、努力のわりにはほぼお蔵入りです。 痛いし。
気を取り直して次の???に。
今度は比較的容易に手に入れることができた『軟体』のスキル。 HPの減少をトリガーに何かしてこないかとひたすらに殴っていたらなんか覚えてしまった。
察するに体をスライムのように柔らかくするスキルなんだろうなと思っていたらまぁその通り。 あまりの柔らかさに数日身動きが取れなくなってしまいコレはマズイと意を決して全身から『溶解液』を出し溶かして全身を溶かしリスポーンすることで事なきを得た。
『パンチ』や『溶解液』もそうだがどうやらこの『軟体』のスキルも使用していくことで熟練度のようなものが上がっていき、自在に扱えるようになったり効果が増したりするようだ。
実際使用した当初はそもそも体の形を維持することが出来ず文字通りスライムのように地面に突っ伏した状態であったが、しばらくすると自由に向きを変えたり這いずりまわったりすることができるようになった。
使用回数が500回を超えたあたりから普段の姿を保ちながら動き回る事ができるようにもなった。
その間ももちろん残りの???スキルを埋める研究も抜かりない。
それは『分裂』と『融合』だ。
HPトリガーもそうだが、この二つのスキルは特にスライムの中でも特にレアなスキルのようでそもそも強い個体でなければ使用できず『分裂』はほぼ非戦闘時に岩や草木などの物陰などで行われる為発見が難しい。
『融合』に至っては使われると強力な個体になってしまうためラーニングする前に全滅、リスポーンには時間がかかるためこちらが復活するころにはすでに分裂が進み再度強個体を発見するのが難しいという具合であった。
見た目ほぼ一緒だしね。
その他のスキルと合わせてもスキルの発見、習得にかなりの時間がかかってしまった。
『分裂』
自身を分裂させるスキル。
「そのままの説明で草」
試してみると餅をちぎるかのように分かれて自身の肉体を
形成した。
が、作り出した分身体は大きさもさることながらステータスもほぼ半分くらいになってしまっている。
おまけにHPは本体より4分の1くらいしかない。
「よし、俺B! 挟み撃ちでスライムを叩くぞ!」
「分かった俺A! 回り込んで攻撃だ!」
手近なスライムを2人がかりで攻撃してみるが、やはり能力半減の効果はデカくそれほど大きなダメージにはならない。
とはいえ覚えたパンチ等を使えば1人の時よりはDPSは高そうだ。
そんな事を考えていたらスライムの攻撃で分身体がやられてしまった。
「俺Bーーー!!」
うん。油断禁物。
『融合』
説明文を読むと異なる二つの肉体が融合する事で双方が持つスキルやステータスなどを受け継ぐ強力な個体が生まれる、とあるんだけど。
某悪魔合体ゲームみたいな感じだろうか。
とりま『分裂』で増やした分身体 俺Cと試してみたが特に変化は無かった。まぁ元に戻っただけだから当然?か。
スライムとも試してみたが殴られただけで発動すらしてくれない。なんじゃこれ。
そんなわけで大体のスキルの把握は終わった。 正直言って使えるレベルではなかったのだが成果もあった。
1つは『軟体』のスキルを使っていて分かったが、使い込むと練度が上がっていき、使いやすくなっていく事。
2つ目は『軟体』等の発動中に『パンチ』や『溶解液』を使うことも可能という事。
そして3つ目は同時に発動する事で新たなスキルを得る事が出来る事だ。 例えば『パンチ』と『軟体』を同時に発動させることで任意に軌道を変化させる『ヴァリアブルパンチ』という技を取得することに成功したのだ。
同じく『キック』もひたすらオートでスライム相手に放ち続けていると『ヴァリアブルキック』を取得できた。
「レベルや単純なスキルの取得だけじゃなく使い込めば使い込むほど派生していって強くなれるのか。 …もしかしたら」
どちらにしろ実行回数がモノをいうことは確かだ。 とはいえ1つの戦闘にかかる心身への負担はかなりのものだ。
「はい、そこで登場するのが何を隠そうオートモードです!」
…誰に向かって言ってるかって? 暇なんだ仕方ないだろ。
スキルの試行に夢中になってて忘れていたが、余ってるSPをステータスにも振ってみる事に。
魔力は…うーん? ポチっても反応ないし上がんないな、魅力、はまぁ今は良いか戦闘には関係なさそうだからとりあえずは筋力とかその辺上げとこう。
そーゆーわけで現在のステータスは…
寺堂 望人
プレイヤーランク 5
職業 転移者
レベル 2
HP 20/20
MP 5/5
攻撃力 12 防御力 10
魔攻力 1 魔防力 1
移動力 4 素早さ 15
筋力 99
体力 99
頑強 99
知性 99
敏捷 99
魔力 0
精神 10
器用 9
信仰 5
魅力 5
運気 5
う、うーん??? 上げたけども攻撃力や防御力には特に変化無し? まさか意味が無いなんてことは…。
よ、よし とりあえずスライム殴ってくるか!(酷い
そう思いザクザクと砂浜を歩き出してふと気づく。
あれ? なんか…
足音が少し変???
いやコレはむしろ足が変な感じしてるというか、ん? 太い?
よーく見てみると少しゆったりしていたいつものスウェットがなんだかミチっというかピタッというかキツめに見えるような…?
あれ? 太腿もなんだかすごく膨れあがって股間周りもなんだかちょっとモッコリが強調されてるような…?
いや! なんだこれ腹も胸も筋肉浮きでる程ピッチピチになってないか!?
思わず水辺に駆け寄り姿を写してみる。 するとそこには某世紀末漫画に出てくる拳法伝承者のような男が いや、漢がいた。
「な、なんじゃこりゃ〜!?」