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うさ耳くん、二歳になる ②

 俺は今、村の外には出たことはない。というか、まだ二歳だから外に出られない。兄さんはもう出ているし、狩りの手伝いもしているからもう少し大きくなったら外に出れると思う。

 家の外に出ただけでも、俺の世界は十分に広がっている。前世とは違う光景が沢山あって、家の外にいるだけでも何だか楽しくて嬉しくなる。俺自身も人間から獣人なんてものに生まれ変わって、人間だった頃とは違う音が聞こえ、五感が鋭くなっていて新しい発見ばかりだ。

 村の外——、そこにはどんな光景が待っているだろうか。それを考えるだけで俺は興奮してならない。俺が外の世界に出ていきたいと口にしたら母さんと父さんは悲しむだろうか。そんなことを二歳で考えてしまうのは、俺が前世の記憶があるからだろう。

「にぃに、凄い」

 兄さんは剣を振っていた。その隣には父さんがいる。俺もやりたいっていったらまだ駄目だって言われた。あと一、二年してもやりたいならやらせるといわれた。三歳や四歳児に剣を降らせるのか、と思うけれど、まぁそこは異世界であるとか、獣人であるとかそういうことが理由としてあるのかもしれない。獣人って人間より身体能力が高いわけだし。

 俺は母さんに抱えられている。飛び出したら大変だからだろう。俺は転生者だから剣が危険なものとかわかるけれど、普通の二歳児ならばもっと興味本位で手を伸ばしたりするかもしれない。

 それにしても、こういう場面を見るとわくわくする。なんだろう、父さんの剣って多分我流なんだと思う。洗練されたようなものではない。騎士とかだともっときれいな剣筋だったりするのだろうか。というか、騎士とかこの世界いるなら見たい。この村、小さな村だから現状騎士とか見たことないんだよな。

 騎士だとやっぱりかっこいい鎧とかまとっていたりするんだろうか。

 想像するだけでわくわくしてくる。それにしても、兄さんは将来、どんなふうに生きるんだろうか。兄さんだと騎士とか似合いそう。兄さん、凄いイケメンだし。そんなことを思いながら目の前の様子を見て楽しむ。

 なんていうか、こう、剣を振っている光景が目の前にあるだけでもどうしようもなく興奮する。俺は異世界にやってきたんだなっていうのを改めて実感できるというか。

「ふふ、コーガがとても才能があるのよ。流石私の息子」

「にぃに、凄い、凄い」

 母さんが自慢げに呟いていて、それを聞いて自分の家族が仲が良いことも嬉しかった。

「ユーリも大きくなったらやってみましょうね」

「うん!」

「ただね、兎の獣人だと避けたと思っても耳が長いから耳が傷ついたりするかもしれないから気を付けるのよ。まだ分からないだろうけど……」

 母さんはそういった。俺達兎の獣人の耳は長い。上に長く伸びている。それだけ攻撃する場所が敵対する者にとっては多いということだ。この耳ってやわらかいし、こんなところ切られたら痛すぎる。あと、耳も聞こえなくなってしまうだろうし、この長い耳っていう弱点をどうにかしなければならないと改めて感じる。


 しばらく、俺は兄さんと父さんが剣を振るのを見ていた。



 それから皆で食事をした。今日の夕食は、野菜と肉の炒めものだ。お肉は父さんがとってきたものだと父さんがいっていた。

 火を起こすのも簡単ではない。こういう時、もっと都会だと火を熾す魔法具とかあるんだって。

 時々醤油とか、地球では当たり前に会ったものが欲しくなるけれど、ない物ねだりをしても仕方がない。俺醤油の作り方とか知らないから異世界料理無双とか出来ないし。……他に転生者とかいて醤油普及してくれないかなとか願望が芽生えたりする。

 それにしても俺がまだ二歳児の子供だからかごはん食べている様子も暖かい目で家族に見られるとちょっと恥ずかしい気持ちにもなる。

「ユーリ、いっぱい食べて大きくなるんだぞ」

「でも大きくなりすぎないでね。小さい方が可愛いわ」

 母さんには大きくなり過ぎないように言われたけど、俺は大きくなりたい。いや、でもごついうさ耳になったらなったら視界の暴力的なものになってしまうのだろうか。正直ごついうさ耳にはなりたくないけど、強くはなりたい。

 この世界だとごつくならなくても強くなれるだろうか。ファンタジー世界的には最強の幼女とかもいそうな気もするし、いけそうな気もするけれど。

 ご飯を食べたらまだ二歳だからかどうしようもなく眠くなってくる。今日はいっぱいいろんなことを知りたいと起きっぱなしだった。昼寝するように母さんに言われたのに無理して起きていたのだ。そのためか、凄く眠い。うとうとしてしまった俺を見て母さんがあらあらと優しく笑う。優しく笑って、眠りかけの俺を抱きかかえて、ベッドに連れて行かれた。

 そして気づいたら俺は眠りの世界にとびたっていた。また明日、もっといろんな世界が見れたらいいなと思った。

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