うさ耳くん、二歳になる ①
「にぃに、あそぼ」
二歳になった俺、一歳の頃よりは話すのが得意になった気がする。二歳児に出来る事なんて限られているだろうけれども、ひとまず体を動かそうと思った。とはいえ、二歳児で本格的に体を鍛えるなんてことは出来ないので、兄さんと遊ぶということで鍛えている……つもり。
獣人である影響か、体を動かすことは結構好きだ。前世では体を動かすことそんなに好きではなかったのだが、二歳児とはいえ、思ったように体が動くのは嬉しいものだ。
兄さんは俺の事を本当に可愛がってくれていて、俺が遊ぼうと口にすると俺のことを優先するようなブラコンぶりだ。
俺がこの村の中で一番小さいからか、皆俺のことを良く可愛がってくれる。
なんとなく気分は大家族の中の末っ子の気分だ。俺より下の子供は今の所村では生まれていない。
というか、俺妹か弟欲しい。けどまだ二歳児になったばかりの俺はその言葉を告げられるだけの語彙力がない。もう少し大きくなったら母さんと父さんにねだってみよう。
そういえば、やっぱりうちの村は文字を読める人ほとんどいないようだった。村長とか数名は文字を読めるらしいがそれぐらいである。文字は日本語なんてことはなく、前世の英語みたいな感じでローマ字のような字が使われていた。意味? 全然分からなかった。文字も覚えていきたい。この世界にどれだけ本というものが浸透しているかもわからないけど、本も読んでみたいと思うし。
もう少し大きくなったら村長の所に文字を習いにいってみようと思っている。
そんなことを考えながら走り回った。兄さんは俺についてきてくれている。全力で走っているつもりなのに、兄さんは一切息切れもせずについてくる。兄さん、凄い体力である。
「にぃに、はやい」
「そうか? ユーリはもっと早くなるんじゃないか? 兎の獣人はすばしっこいって話だからなぁ」
兄さんよりも早く走れるようになるかもしれないというのはなんとも朗報である。早く動けるということは、ずばっと相手を一瞬で倒す的なかっこいいシチュエーションを実現できたりするのだろうかと思うと、精神年齢は高いはずなのに無性にわくわくした。
元々すばしっこい兎の獣人なら、鍛えればもっとすばしっこく走れるようになったりするのだろうか。そう思うとちょっと夢が広がった。
兄さんと一緒に外に居たら女の子———ルリィに話しかけられた。
「コーガ!」
ルリィ姉ちゃんは俺そっちのけで兄さんに話しかけている。ルリィ姉ちゃんは兄さんのことが大好きである。いや、ルリィ姉ちゃんだけではなくて他の子達も兄さんが大好きである。
本当に、俺の兄さん、もてる。
俺にはそんな自分を好いてくれている女の子なんていないので正直いいなぁという気持ちになる。この村の女の子たち俺の事は弟のようにしか見ていないと思う。
「ルリィか、どうしたんだ?」
「ど、どうしたって。暇だったから話しかけただけよ! コーガに会いたかったわけじゃないんだからね!」
「ん? そうなのか。俺はルリィにあえて嬉しいけど」
ルリィ姉ちゃんが顔を真っ赤にしている。兄さん、すごい。こんな何処からどう見ても兄さんが大好きですオーラを出しているというのに気付かれないのも、本当凄いと思う。また、気づいていないにもかかわらずルリィ姉ちゃんを落とすようなことをナチュラルにいう兄さん。マジやばい。こういう人間がハーレムというものを作るのだろうなぁと俺は思ってならない。俺には無理な気がする。
「ルーねえ」
心の中ではルリィ姉ちゃん呼びだけど、口からでるのは「ルーねえ」という言葉である。ルリィ姉ちゃんは俺に声をかけられてようやく俺に気づいたらしい。本当に兄さんしか興味がないことで……と思う。
「あら、ユーリ」
とはいえ、ルリィ姉ちゃんは俺に優しくないわけではない。……まぁ、俺が兄さんの弟だからというのが良くわかるのだが。
ルリィ姉ちゃん、子供なのにもう兄さんの番には自分がなるんだって狙いまくっていて正直肉食系女子すぎると思う。
「コーガ、ユーリと遊んでたの?」
「ああ。ユーリは走るのとか好きみたいだからな」
「そうなの、私も一緒に遊んでやらないことはないわよ!」
「なら、一緒にユーリと遊ぼう」
「うん!」
うわ、ルリィ姉ちゃん凄い嬉しそうな顔している。俺も一緒に居れるだけであんな表情浮かべてくれる女の事か将来的に出来たらいいなぁ、と願望を抱く。
それから兄さんとルリィ姉ちゃんと一緒に体を動かしまくった。ルリィ姉ちゃんも狼の獣人だし、俺よりも年上なのもあって身体能力が高い。獣人の子供って本当動き回る能力凄いなと、前世で人間だった身としてはそんなことも考えてしまう。
あと聴力も。人間だった頃は聞こえなかったであろう範囲まで聞こえたりする。あと鼻も。匂いが凄くわかるから臭いところとか人間だった頃より辛いと思う。将来的には冒険する予定だから臭い所でもどうにかできるように対策もしておきたいなと兄さんとルリィ姉ちゃんと遊びながら思った。