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うさ耳くんと、街のイベント ⑤

 剣を手に向かっていく。俺のような子供がこうやって大人に向かっていくことはまずないからか、驚いている。こうやって怯ませると、相手に隙が出来るからいいんだよな。

 兄さんは俺が飛び出したのを見て慌てていたけれど、女の子の方を優先してくれたみたい。人質にでも取られてしまったら大変だからな。なんというかこういういかにもな男達って、そういう人質とかすぐに取りそうなイメージ。あくまで俺の印象だけど。

 手に持っている小さな長剣では、結構対処が難しい。

 俺がもっと強ければちゃちゃっと、こういう相手をどうにかすることが出来るのにとその点は残念に思う。

 あとは俺がもっと見た目で威圧をかけられたりするタイプだったら、こういう争いごとにはならずにその前に解決したんだろうけれど。

 武器が、向けられて避ける。拳での攻撃も当たってしまえば正直言って一たまりもない。対格差はあるから。

 そういうわけでひたすら、俺は目の前の男性に対応し続ける。

 兄さんのことを確認する暇は正直ない。……これで兄さんが大変な目に遭ったりするのは嫌だ。怪我などをされるのは悲しいし、俺が飛び出して巻き込んでしまったわけだし……。

 そうやって対応を進めることしばらく……、その場に「何をやっている!」という声が聞こえてくる。

 人が駆けつけてくれたと思うとほっとして、少し気を抜いてしまった。その隙に、剣が俺をの頬を掠めた。やばいやばい。血が出てしまった。なんとか避けられて良かった。というか、人が駆けつけたからって、こんなところで気を抜いたら駄目だ!

 改めてそう思った。

「ユーリ!! 大丈夫か?」

 駆けつけた大人たちが俺と対峙していた男たちの対処をしてくれている間、兄さんが慌てた様子で俺の元へ駆けつけてきた。俺が少しだけ怪我しただけなんだから、こんなに慌てなくていいのになと思う。

「うん。大丈夫だよ。ちょっとだけだし。それにしてもびっくりしたね、兄さん」

「なら、良かった」

 ほっとした様子の兄さんを見て、俺も自然と笑顔になる。

「ユーリ、何を無茶をしているんだ?」

「もう……こんなことに巻き込まれて、心配したわ」

 大人たちと一緒に父さんと母さんも駆けつけてくれる。母さんは顔を青ざめさせて、俺の身体を抱きしめている。母さんの身体が震えている。……本当に考えなしに俺は動いてしまっているなと反省する。なんだろう、俺がもっと強ければ母さんにこんな風に心配をかける必要も全くないのにな。

 結局俺は戦うことをやめないし、この先強くなるたい必死になるだろう。家族には心配をかけてしまうし、悲しませてしまうかもしれない。けれども――俺はノアレに追いつきたい。

 俺が此処で強くなることを諦めたら、ノアレに失望されたら嫌だ。

「ごめん、母さん」

 俺がそう言って謝ると、母さんは仕方がないなとでもいうような笑みを浮かべてくれる。

 俺は母さんのこういう笑みが好きだなと思う。息子である俺のことを本当に思いやって、可愛がってくれている様子。

「事情を聞きたいから一緒にきてもらえるか?」

 俺が家族と話していると、騎士にそう言って声をかけられる。

 その後ろには俺達が助けた女の子が保護されている。無茶はしてしまったけれど、女の子が危険な目に遭わなくて良かったとは本当に思う。だって大怪我をしたり、死んでしまったりしたら取り返しのつかないことになってしまうから。

 特にこの世界だと、医療技術が地球に居た頃より発達していない。それに怪我人を移動させたりすることも難しい。だからこそ何かあったら割とすぐに死んでしまう。

 俺は騎士達についていきながら場所を移動する。

 不謹慎かもしれないけれど、こういう状況が初めてなので少しだけ気分が高まっていた。いや、本当になんというか、こういう荒事は出来ればない方がいいのは分かっている。誰かと争いあうことなんて良い事は全くない。とはいえ、やっぱり経験したことないことを経験出来るとそれはそれでワクワクする。誰も怪我人は居なかったしな。

 そういうわけで俺達は騎士団の詰所へと移動した。

 騎士達の姿もちらほら見られて、かっこいいな! とそんな気持ちでいっぱいだ。騎士服を着た人って見ているだけで嬉しくなる。

 俺が強い人に憧れを抱いているからというのもあるけれど。

 俺よりもずっと背が高くて、ガタイが良い人が多い。そういう人は見るからに力が強そう。だけど細身ですらっとしたタイプの人もいる。ああいう人は動きが素早いとかそういう感じなのかな?

 俺は……かっこいい大人になりたいとは思うけれど、どちらかというとひょろっとしたまま成長しそう。背も伸びるか分からないし。だからこそ俺が参考にするならすらっとしたタイプの騎士かなぁ。そういう騎士を参考にしたら俺も戦い方をもっと学べたりするかな。

 話をするための部屋へと向かう最中に、俺はずっとそんなことばかり考えているのだった。



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