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うさ耳くんと、街のイベント ②

 イベントが行われている中での買い物は、なんだか普段よりも気分が高揚する。

 思えば前世でも俺はこういうイベントが結構好きだった。ただ参加をするだけでもその気分を味わえて楽しいなとそう思ってしまう。

 それに何より、普段とは違うものがおいてあったりして新鮮で面白い。

 特に今世だと俺は基本的に村から出ることは少ない。もっと大きくなったら別だろうけれど、まだ子供だから一人で違う村や街を訪れるなんて出来ないしな。だから余計にこう、テーマパークか何かに来たようなそんな気持ちになる。

 まずは専用のタレがかかっているお肉の詰め物。うん、美味しそう。見ているだけで涎が出てくる。

「兄さん、美味しそうだね」

「ああ。ユーリ、食べていいぞ」

「父さんたちの所に戻ってから食べる」

 食べて良いなどと言われても折角家族で来ているのに自分だけ食べるのもなとそんな風に思ってしまう。

「もっと色々買うから、兄さん持って」

「持つよ。それにしてもそんなに買うつもりなのか……?」

「うん。だってこれだけ沢山美味しそうな屋台があるんだよ? 食べずにどうするの?」

 当たり前のようにそう問いかけたら、兄さんは笑った。

 ……なんか俺からしてみるとこういうイベントの時期にしか食べられないものがあるならいくらでも食べるべきってそう思う。

 あとさ、俺は学園に通う年齢が来たら、村を出る。そしてその後は――ノアレと一緒に居ようとする。きっと村に戻ることは少なくなるんじゃないかなって思う。

 父さんや母さん、兄さんと今よりもずっと会えなくなると思うんだ。

 俺は今世の家族のことを大切だなと思っている。だからこういう子供のうちに作れる思い出は沢山作っておきたい。ってそんなことを言っていても結局俺が美味しいものを食べたいだけというのが一番なんだけど。

 そういうわけで兄さんを連れて色々買い込む。

 それから父さんと母さんの元へと戻ることになった。正直言うと俺はもっと沢山買いたいものはあったのだけど、俺と兄さんの二人で抱えてもギリギリ持ち運べるぐらいになったので仕方がない。全部食べてからまた買おう。

「あらあら、沢山買ったのね」

「じゃあ俺はこれをもらおう」

 母さんと父さんは俺達が沢山買い込んできても怒ることはなくにこにこしていた。

 というか二人ともあんまり怒らないタイプなんだよな。本当に良い両親だと思う。俺みたいな前世の記憶があって、色々と奇行を繰り返している存在を普通に可愛がってくれているから。

 両親は仲良しで、俺もノアレとそういう夫婦になりたいなといつも思う。

 ちなみに父さんはお肉系のものばかり食べていた。やっぱり狼の獣人だからだろうなと思う。兎の獣人は草食も多い。俺はお肉大好きだけど。

 俺ももぐもぐと買ってきたものを食べる。

 美味しい。なんだろう、甘辛いタレがよいというか、俺、この味好き!! とそんな気持ちでいっぱいになった。

「ユーリ、その味、気に入ったのか?」

「うん。俺、このタレの味好き。タレのレシピとか聞いたら教えてくれないかなー」

「商売に使うようなものを教えてはくれないと思うが……」

「んー、でも俺、村でもこれ食べれたら食べたい!! ちょっと聞いてくる」

 俺はそう言って屋台で接客をしているお兄さんに話しかけにいく。ちなみに後ろからは心配した兄さんがついてきていた。

「このタレ、凄く美味しかったです! レシピとかって聞いたら教えてくれますか?」

「すまないね。流石にレシピは教えられないんだ」

「そっかー」

 俺はお兄さんの言葉にがっかりしてしまう。村でも食べたいなと思ったのにな。

「なら、このタレ、売ったりしません?」

「タレを売る?」

 お兄さんは俺の言葉に不思議そうな顔をする。あんまりこういうタレを売るとか考えてないのかな。でも凄く美味いから売れると思うんだけど。

 今回はお肉にかかっていたのだけど、野菜とか、あとは米とか、何にでもあいそうだなって思う。魚にかけてもいいよね!! あとはちょっとアレンジしてみるとかもあり。

 タレが売ってあったらそれらの全てが叶うってことだし、欲しい。

 俺に商業的なチートでもあればすぐに販路を確保とか出来たのかもだけど、俺はただの村の子供でしかなく……うん、こう考えると前世で読んだ幼いころから大活躍している転生者ってやばくないか? などと思う。

 幼いころから商売をしていたり、圧倒的な魔法の力があったり……俺にはそんなものないからな!

 まぁ、羨ましがったところでどうしようもないし、俺は俺に出来ることをやるのだけど。

「うん。俺、そのタレ、家に欲しいもん。売ってくれたら自分のお金で買うの」

 俺がそう言ったら、お兄さんは笑って「少し待ってな」と言ってごそごそし始めた。なんだろうと思っていると、タレの入った蓋のついた入れ物を渡してくれる。

「これ、君に売ってあげるよ」

「本当!? ありがとうございます!」

 そういうわけで俺は無事にお金を払ってタレをゲットした。でも保管はちゃんとしておかないと。折角買ったのに駄目になったら悲しいしな。

 お兄さんはただでくれるといったけれど、それは嫌だったからちゃんとお金は払った。



 

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