うさ耳くんと、街のイベント ①
「おおおお!!」
俺は今、家族と一緒に街に来ている。
基本的には村で過ごしていて、街に行くことはたまにしかないからこうやって街に行くというだけでも俺にとっては一大イベントだ。
特に今日は街でイベントをやっているみたいで、前に来た時よりもずっと人が多い。それだけでもなんというか凄くワクワクする。
そんな俺の様子を父さんも母さんも兄さんも生暖かい目で見ていて、ちょっとだけ恥ずかしい。どちらにしてもなんというか、俺の感情って耳にかなり出ていたりするらしい。無意識で結構そうだから、かっこいい男になるためにはもっと冷静沈着になりたいって思ったりする。だけど基本的に獣人って、体に感情が出やすいらしいからなぁ……。まぁ、あくまで目標ってことで!
「ユーリ、目を輝かせているのは可愛いが、はぐれるぞ。ほら、手を繋ぐぞ」
「兄さん! 俺はそんなに子供じゃない! ちゃんと逸れないようについていくから!」
心配そうな兄さんからそんなことを言われて、そう叫ぶ。
俺も少しずつ大きくなっているのに、いつまでも子供扱いだ。いや、まぁ、七歳ってまだまだ子供なのかもしれないけれど。それに俺は同年代の男に比べても背が低いしなぁ。
背は低いままだったとしても、ノアレよりは高くなれると嬉しいな……と思ったりする。
そのためにも背を高くしやすいと言われている食べ物とか、飲み物とか結構口にするようにしている。
あんまり母さんも一緒に街に行くことって少ないから、余計に今、自然と頬が緩んでしまう。
そうやって顔をにやけさせすぎると、周りからまた可愛いなどと言われてしまうからもっとキリッとした顔を心がけないと。
ちなみに今日、この街で行われるイベントは街の活性化を目的としたものらしくて、この季節にとれる食べ物を使った料理で屋台が出ていたり、狩った魔物の一部を作った装飾品が出ていたり、色々あるらしい。
そういうのは楽しいことだ。
というか、今、目の前に広がっている光景にも興奮していて何を買おうかなときょろきょろしてしまう。
ただ俺はそこまでのお金は持ち合わせていない。
お小遣いはもらっているし、自分で狩った魔物の素材を売ったりしているから同年代の子供よりはお金を持っているかもしれないけれど。買いたいものを全てかえないかもしれない…! とそう思うと少し落ち込む。
「ユーリ、どうしたの?」
「……なんでもない」
「なんでもなくないでしょ?」
母さんにそう言って問いかけられ、俺はかっこ悪いけれど口を開く。
「こうしてちょっと見るだけでも、食べたいものが沢山だなって思って。俺のお小遣いだと、全部かえない……」
俺がそう口にすると、母さんに笑われる。父さんと兄さんも、俺の言葉に笑っている。
「ユーリ自身はお金を払う必要はないわよ? 欲しいものは私たちが買うから」
にっこりとほほ笑む、母さん。
「そうだぞ。ユーリのお金は大事に取っておいた方がいいぞ? 俺も母さんたちに色々買ってもらう予定だし」
兄さんにもそう言われて、俺は何でも買ってもらえるのかと思わず目を輝かせる。
「俺、いっぱい欲しいものが沢山ある! でも買いすぎたら食べれないかな……。ちゃんと色んな屋台を見て回ってから厳選した方がいいかな」
食べ物の屋台が多くて、どれもこれも美味しそうだな……と俺は何でも買いたいなと思う。
だけど七歳の俺じゃ、そんな大量の食べ物は食べられない。お腹いっぱいになってしまったら、料理を作った人たちに申し訳ないしな。
「ユーリが食べられない分は俺達で食べるから大丈夫だぞ? それに誰かにプレゼントしてもいいしな」
父さんにそう言われて、俺は少し考えてみる。
確かに父さんたちは俺よりも沢山食べられそうだし、多めに買ってもいいのかも……。ただ色んなものを沢山食べたいなと思うからちょっとずつ分ける? こういうイベント時期だからこそ食べられるものだと食べたいしな。
限定ものってより一層、特別なものに感じられると思う。
「じゃあ、俺あそこの屋台に並んでくる!」
「ユーリ、俺も行く」
俺が一つの屋台に目をつけると、兄さんが母さんからお金を受け取って一緒に並んでくれた。
一人でも並べる! って俺は思っているけれど、兄さんとしては俺のことを心配しているらしい。
まぁ、確かにこれだけ多くの人達がいる状態の街に来るのは初めてだからな。俺は背が低いし、こういう人混みを歩いていたら確かにつぶれたり、逸れたりしてしまいそうだ。
「兄さんは、どれが食べたいとかある?」
「どれも美味しそうだからな。ユーリが食べたいのでいいぞ?」
「父さんたちにも何を食べたいか聞いておいた方がよかったかな。俺が食べたいものばかり買いそう」
「それでいいよ」
そう言われて俺は一先ずこの屋台では自分が食べたいものを買おうと決めた。
次の屋台ではちゃんと家族の食べたいものを聞いてからにしよう!




