うさ耳くんと、本 ②
前世の記憶があるので、計算系の問題に関しては問題がない。
転生して何年も経過しているけれど、流石にそのあたりは覚えている。というか、計算能力に関しては前世の方がずっと発達していたと言えるだろう。この世界だと文字が読めなかったり、計算出来ない人って結構いるし。
歴史などに関しては正直なんとなくしか知らないので、本を読んで勉強することは重要である。
こういう風に本を読んでいると、俺の世界の狭さを実感する。俺は限られた情報しか知らずに生きている。都会的な場所には行ったこともないし。
誰も見たことのないような場所を見に行けたら楽しいだろうなとか、そういうことをよく考える。
折角異世界に転生したわけだけど、俺はまだ子供で外の世界は全然知らないからなぁ。あとこの世界での都会がどんな感じかとかも気になるし、お城とかもあるはずだからいつか見てみたい。いや、でも普通に考えれば平民である俺がお城になんて行けないか?
前世だと観光地になっていたりしていたわけだけど、この世界だと城は普通に王族が住まう場所として機能しているわけで、一般人が入れたらおかしいか。
色んな場所に冒険に行きたいと思っているけれど、許可なく入るのは不法侵入にあたる場合もあるだろうし……、その辺はちゃんと常識を学んでおかないとなと思う。前世と違ってこの世界は命が軽いので、権力者を敵に回して死刑とか、きまりを守らずに犯罪者になるとか……そういうのはちょっと遠慮したいし。
赤ん坊の頃から生きているからそれなりにルールは知っているつもりだけど、あくまで村の中でのルールしかない。
知らなかったでは済まされないこともあるから、この国の法律の本とかないか探してみようかな?
でもあれだなぁ、平民は文字を読めない人も多いし、そういう法律の本って出回ってなさそう……。
あとは国が違えばその法も異なるだろうし、他国に行く場合は考えておかないと……。って、俺はまだまだ村からも出てない身なのに考えすぎかな?
ただこういうことは先に考えておくことは良いことだとは思っている。いざ、その時が来た時に対処できなかったら困るし。
今は俺は親に庇護されて、この村でのんびり暮らしているけれど学園に入学したら親元を離れるわけで。そうなれば自分のことは自分でやる必要がある。
学園に通うのは義務とはいえ、保証されるのは最低限みたいだし。
平民に関しては自分のやりたい暮らしをするためには仕事はしなければならない。貴族に関して言えば家からの援助で悠々と暮らせるっぽいけれど、俺は平民なので入学後どういった暮らしをするかは模索する必要がある。
学園を卒業できればそれだけで箔がついて、魔力があるということで平民の中でも勝ち組にはなれる。
しかしそれだけで満足していたら結局その他大勢で終わるだけだ。
俺はそれだけで満足する気はないし、それだけで満足するような男だったらノアレががっかりするだろう。
ノアレにかっこいいと言ってもらえる俺になるためなら――とそう考えると勉強も全然苦にならない。
しかしこの一冊だけだとすぐに読み終えてしまう。もっと対策本が欲しいけれど、あんまりこの村だと手に入らないのである。
ガガゼさんに学園に入学するまでに役に立ちそうなものは持ってきてもらうように話はしてあるけど、いかんせん俺の住んでいる村は大変田舎である。
魔力があれば学園には入学する権利は手に入るけれど、都会育ちか田舎育ちかで勉強のしやすさって本当に異なると思う。でもだからといって、入学試験で点数が低いのは取りたくないから勉強するしかない。
街に行った時ににも色々探してはいるけれど……あんまりないんだよな。
学園に行ったら図書館などもあるそうなので、今よりももっと本を読んで知識をつけることも出来るのか。うん、それも結構楽しみだ。
そんなことを考えながら俺は勉強に励むのだった。
木の上で変な恰好のまま本読んでいたので、家に帰った後母さんたちには呆れられた。
あと「学園に入学したらあんまり奇抜な行動はしない方がいいと思うわ」とも言われたけれど……、そこまでおかしいかな。確かに村でもおかしなことしているとは噂にはなっているけれど。
ただ人が見てない場所ならば、訓練は続けたいし、こういう行動も俺はしてしまうと思う。
学園でも俺のやっていることって奇抜に見えたりするんだろうか。色んなところから色んな人が来るんだから、俺のやっていることに共感してくれる人だっているのでは? とも思うけど。
あ、でもノアレに「やめて」と言われたら訓練の仕方を練り直すかもしれない。
ちなみに本に書いてあったことを兄さんに「こういうことが書かれていて面白かった」とか言ったら、「意味がわからん」と言われてしまった。
……こういう試験の対策本でも読んだことがないものだったら面白いと思うんだけどなぁ。




