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うさ耳くんと、本 ①

 相変わらず夜の山に一人で行くことは許可されていない。

 俺がまだ七歳だから仕方がないかもしれないけれど……、うん、なんていうかやっぱり父さんと兄さんと一緒に向かうと色々制約があるから、一人で行けるようになりたいなって思った。

 俺だって死にたくはないから、ちゃんとするつもりなのだけど……、五感の一部をふさいで魔物と戦うとか、そういう無茶をしている俺が死んでしまいそうなほどに無茶をするのではないかと思われているらしい。

 一度死を経験したからこそ、俺って本当に死ぬかもしれないような無茶はしないつもりである。

 うん、でもまぁ、俺が前世の記憶があることって誰にも言っていないことだし、仕方ないけれど。

 別にいう必要もないと思っているけれどいつか俺はノアレとかにはそういう前世のことを伝えることになるだろうか。ノアレは俺に追いついてきなさいって言っていた。

 学園に入学してノアレと再会が出来たら――、そしたらノアレに隠し事をしたくないし言おうと思う。まぁ、ノアレが信じてくれるか分からないけれど。

 なんだかノアレのことを考えていると、また寂しくなってきた。

 ノアレはきっと、日に日にもっと可愛くなっていると思う。学園に入学した時にノアレはもっと可愛くなっているだろう。俺がノアレに追いついた時に、可愛くなったノアレの傍に俺は似合わないとか言ってくる人もいるかもしれない。

 俺はこの村の中と、近隣の街ぐらいしか知らない。

 学園が実際にどういう場所なのかというのは話を聞いているだけだと分からない。でも同じ年頃の少年少女が揃うのだからそれなりにややこしい場所だとは思っている。

 前世の学校でも集団生活の中では色々と問題も起きていたイメージだし。

 少なからず虐めが起きたりとかあったしなぁ。俺は獣人の住む村に住んでいるからあれだけど、学園に通うなら色んな種族の人たちがいるわけで、それこそ前世の俺と同じ人間の方が多いんじゃないかって思う。

 俺は身長が高くなりたい、もっとかっこいい男になりたいってそんな風に思っているけれど今の所同年代の子供よりも身長が低いし、華奢である。……うん、なんか俺、大きくなっても背が低くて可愛い系にしか育たない未来が見える。兄さんなんてどんどんかっこよくなっているのに! 絶対兄さんは大人になったらかっこいい美形になる。でも俺は小さそう……。

 でも小さくてもうさぎの獣人でもやれるんだってことを示せるように頑張らないと。

 俺の生きている世界は凄く狭いから、もしかしたら俺がどれだけ頑張ったとしても周りからしてみればちっぽけな頑張りなのかもしれない……なんてちょっとネガティブな思考に陥ることもあるけれどやらないよりは全然いい。それに俺も強くなれている感覚はあるしな。

 とはいえ、戦闘訓練ばかりして脳筋みたいに力で解決する! みたいなキャラだとノアレには釣り合わないと思う。ノアレの傍に居てふさわしい俺になるためにも、ちゃんと勉強も頑張らないといけない。

 だって学園では試験とかもあるって聞いているから。

 幾ら戦闘能力があっても頭が悪いだと、ノアレにとってかっこいいといってもらえる俺じゃないじゃん。

 俺はノアレに凄いっていってもらいたいし、会えた時に褒めてもらいたい。そういう俺でいたい。

 そう思っているから、今日は勉強に励むことにした。本を読むのだ。

 学園には魔力持ちは全員通うように義務付けられているわけだけど、入学時にちょっとした試験のようなものはある。それで入学がなくなるとかはないみたいだけど、そこで悪い成績を取ったらノアレに顔向けできないから。

 学園の試験の対策本を手に入れたので、ちゃんと勉強する!

 ただちゃんと自分を強化することは続けておきたいので、座りにくい木の上に魔力を使って飛び乗って、その場にとどまりながら読むことにする。結構筋肉を使うし、こういうバランス感覚も重要だと思う。

 俺はどういう状況でも戦えるようにって、五感をふさいだ訓練をよくしている。これもそれと一緒だ。五感をふさいでいるわけではないけれど、どれだけ足場などが悪い場所でも戦えるようにするというのは重要だから。

 何があっても生き延びるだけの強さって凄く大事だと思う。

 こういう何気ない部分で、コツコツと強くなるために努力することが俺がもっと強くなることにつながると思うし。

 ……まぁ、ぐらぐらする木の上でちょっと変な恰好で本を読む俺を村人たちは二度見していたけれど。ただ俺が皆にとって予想外の行動をするのはいつものことなので、「またユーリが変なことをしている」とそう思われているだけみたいだけど。

 学園に入学しても訓練は続けたいけれど、村にいる時のように行動をしたら変な目で見られたりするんだろうか……? そのあたりは入学してから考えればいいか。

 俺はそんなことを考えながら、本に目を通すのだった。




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