うさ耳くん、世界を知っていく ③
俺は「まほー」、「まほー」と何度も口にしていた。
魔法について俺は知りたくて何度も何度も口していた。母さんも父さんも困った顔をしていた。
だけど、「そうね、理解出来ないかもしれないけど」と口にして、母さんは俺を膝に座らせて、説明をしてくれた。とはいっても本とかで学ぶとかではない。というか、本がうちの家にはない。そもそも文字を書いているのもあまり見ないので、識字率も低いのかもしれない。
母さんは少しずつ口で教えてくれる。
魔法の種類は赤、青、黄、緑、黒、白、無などといったものがあるらしい。それぞれ火、水、風、地、闇、光、無と対応するらしい。ちなみに無というのは属性関係なしに使える魔法らしい。魔力さえあれば誰でも使える魔法というのもあって、無属性だけしか持たないものは色属性もちに馬鹿にされたりするといった大変なこともあるそうだ。前世で読んでいたネット小説とかだと、無属性で無双系とかあったけれど、そういうの目指したり出来るのだろうか。しかし、あれだ。残念なことに獣人って、身体能力は高いけど魔力がほとんどなくて魔法が使えない人ばかりなのだという。
なら、俺も魔法使えないのだろうか。ちょっと残念。いや、しかし獣人の中でも魔法が使える存在が少なからずいるらしいといっていたし、俺は諦めない。というか、もし魔法が使えなかったとしても俺は冒険者として冒険をしたい。その際魔法が使えなくても魔法について知っていれば何かしら楽だと思う。
そのため俺は「まほー」「まほー」とずっと連呼し続けた。魔法についての興味があって仕方がなかった。だけれど、母さんや父さんの知っている魔法についてのことなんて基本的な事でしかないようで、「ごめんね、あんまりお母さんも詳しくないの」と困った顔をされてしまったのでそれ以上聞かなかった。
あと五歳になったら魔力検査をするのが国で義務付けられているとも聞いた。五歳か。あと四年。四年経って魔法使えたら俺凄く喜ぶんだけど、使えたらいいな。もっと体が大きくなったらひとまず体を鍛えよう。俺は冒険するんだ!
そんな思いで俺は色々な事を知ろうと沢山母さんや父さん、兄さんから話を聞こうとしていた。
「くさー」
母さんは草をよく食べている。俺はくさ、くさといってその草の情報を知ろうとしたりもした。俺も草を食べさせてもらったりしている。結構おいしかったりする。あと母さんと過ごしていてわかったけれど、母さん薬草とか見分けられるらしい。凄いと思った。
前世の俺なんて草の名前見分けるとかも全くできない人間のまま死んでいた。母さんが薬草とか毒草とか見分けられるらしい。あと調合も少し出来るんだとか。調合出来るってかっこいいと思うと、キラキラした目で母さんを見てしまった。
母さんをキラキラした目でみたら母さんは嬉しそうな顔をしていた。母さんって本当可愛いと思う。うん、俺も将来的に可愛いお嫁さん欲しい。まぁ、実際問題お嫁さん作れるかも分からないけど! でも母さんや父さん見てるとこういう仲良い夫婦良いなって思う。
あとなんか母さんが教えてくれたけど、獣人族の中でも力が強い子は獣の姿になれたりするらしい。……俺の場合兎の姿? 獣の姿になれるのかっこいいって思うけれど兎になったところでかっこいいより可愛いになるのではないか…という気がする。でもなれるなら獣姿なってみたい。
願望が沢山増えてくる。一歳児で出来ることはほぼないけど、沢山情報をしって俺の世界が広がっていっている気がする。
そのことが嬉しくて仕方がなくて、俺はいつも笑ってしまう。子供だから泣いてしまう時もあるけれど、母さんや父さんや兄さんに迷惑かけないようにしたいと俺はいつも思っていて、基本的におとなしい子供だと思う。まぁ、家族の耳とか尻尾触りまくっているからただのおとなしい子供として家族は認識していないけれど、でも兄さんの子供時代より手がかからないという話になっているらしい。
そりゃあ、前世の記憶あるのに兄さんより手がかかったらすごいよなと思う。あと兄さんが俺を可愛がって良いお兄ちゃんになろうとしているんだって母さんが笑顔でいっていた。
兄さんは俺にとってとっても良い兄だ。兄さんかっこいいし、優しいし、同年代の女の子に好かれている理由がよくわかる。俺も将来的には兄さんみたいに……狼耳と尻尾は真似できないけれど、人にやさしくすることを目指したいとは思っている。あと父さんみたいに戦う力も欲しいと思う。
って、思っていたんだけど兎の獣人って戦闘には向かないそうだ。薬草を探したりとかそういうのはとても得意らしいけれど……でも向かないっていうのは諦める理由にはならないと俺は思う。無理かも知れなくても俺は強くなれるようにしていきたい。
そう、強く願った。