うさ耳くんと、山の中 ②
匂いのする植物などを使って、色々と検証も進めている。けれど俺はそれよりも強くなる方が重要なので、そういう検証に関してはちょっとしかしていないけれど。
それにしてもこういう匂いのするものだと、こう、獣人みたいに嗅覚が発達している魔物に投げつける道具とかにするのもいいかもしれない。多分、魔物だと俺みたいに五感を塞いで訓練をしている連中なんてあんまりいないだろうし。まぁ、山の中の魔物に検証してみたら五感がふさがれた瞬間に暴れた魔物もいたからそのあたりは時と場合によりそうだけど。
それにしても五感がふさがれて暴れる様子ってあれだよな。手負いの獣ほど危険だとかそういう話と似ているのかもしれない。
命の危険に瀕すれば、魔物だってああいう風に暴れるものなのだ。
まぁ、騎士道とか考えている人からしてみれば五感を塞ぐとか何か言われるかもしれないけれど、正直言って勝てばそれでいいと思う。あとは生き残れるかとかそういう話だと思う。だって名誉は守れても命を失ってしまえばどうしようもないし。
あとは盗賊とかそういう人間相手だと、こういうのもアリなのかもしれない。俺はまだ盗賊に遭遇したことはないけれど、村の人から聞く盗賊の話だと手段を問わずに襲い掛かってくるらしいし。
村の大人たちが盗賊の話をよくしてくるのは、外は危険だというのを子供たちに教えるためでもあるらしい。
昔、都会に憧れて村の外に飛び出した女の子が盗賊に捕まり悲惨な目にあった実際のお話とかもあったらしい。本当にこの世界って地球に比べると中々物騒だと思う。
特に俺の見た目は華奢で女の子みたいだから、男でもいいって連中に襲われるかもとか言われているからその辺は気を付けないと。
的確に急所を狙う術っていうのも大事だしな。
俺は男なので、男に襲われる趣味はないし。
魔物をある程度倒した後は、ちゃんと近くの川で血を落としておく。なるべく血を被らないように魔力で自分を覆ったりしてはいるけれど、どうしても俺は集中力が切れるのか血がついたりする。それで帰ると村の人たちに驚かれるし。
でも川で洗うにしても警戒心は大事だ。
だって川にだって魔物がいる。このあたりにはそこまで危険な川の魔物はいないって話だけどどこから流れ込んでくるかもわからないし。魔物っていうのは基本的に神出鬼没である。出ないと思っているところから出てきたりとか、そういう話は結構あるらしい。
俺はまだまだ死にたくない。
ノアレと一緒に一生を遂げるという、そして幸せに過ごすっていう目標があるから。
だから常に周りを警戒しておく。
周りを常に警戒するというのは、最初は疲れたけれど、最近は当たり前みたいに行っているからそこまで疲労感もない。魔力と五感を研ぎ澄ませて、異変がないか確認する。そうしたら魔物の位置も遠くにいても少しずつ分かるようになってくる。
あとはあまり頭のよくない魔物だと、検知した段階で魔力量で強さもある程度分かるっぽい。
とはいえ、強い魔物だと魔力を隠したりも出来るらしいから警戒する必要は当然あるけれども。
今の所、俺は山の麓しかうろうろできない。ついでにいうと野宿も許可されていない。夜に村の外に行くのも駄目だって言われている。
……でもそれだと昼間とは違う夜の様子が分からないし、冒険者をするなら一人で野宿もしなければならないと思う。
どうにかして家族を説得してそういうのも出来るようにならないと。
だって冒険者だと、本当に不測の事態が起こる可能性も高い。道具も何もない場所で生き残るための術っていうのはきっと大事だと思う。お金があれば魔法具でもいいだろうけれど、そういうのを子供の俺には買う術はない。そういうわけで昼間に火を起こす訓練とかもしている。摩擦で火を起こそうとすると結構難しい。あと近くに弱い魔物だけど小さな炎を吐きだす魔物が居たのでその魔物で代用したりした。そっちの方が楽だった。
この魔物、火を噴きだすとはいえ、ちょっとした火傷をする程度なのでそこまで危険性はない。
固いけれど、火で熱すれば食べれもするし、中々便利な魔物だと思う。
ただ焼くだけというのも冒険者っぽいと思うけれど、世界を見て回るならば街に居なくても美味しい料理が食べれた方がいい気がする。山の中に来るようになって俺はそう思うようにもなっていた。
料理はそんなに出来るわけではないので、その辺は母さんたちに習おう。
大きな街とかにいったら、もっと美味しいものがあったりするんだろうか。料理のことを考えていたら、そんなことも思った。
外で簡単に食べられる美味しい料理だと、どんなものになるんだろうか?
そのあたりも学園に入学する前に研究しておきたいな。それでその料理をノアレに作って流石! とか言われたい! ノアレに凄いとか、かっこいいとか思われたいし。
俺の身長はノアレに再会するまでに伸びるかは分からないけれど、その場合は内面を磨けばいいと思う。




