うさ耳くんは、寂しさを感じながらも決意する ①
寂しい。
正直感じているのは、そういう気持ちだ。
俺って前世も含めて、こんなに寂しがり屋だったっけ? なんてそんな気持ちになる。
やっぱりうさぎの獣人だから、俺ってそういう感性が前世よりも凄い感じやすいのかもしれない。
それにしてもノアレがいなくなって、そしてゲルトルートさんも居なくなって……そのことに俺は寂しい気持ちでいっぱいだ。
耳がすぐにぺしゃんとなってしまう。
俺はこうやって別れをこれからも経験していくのだろう。
そう思うと、やっぱり寂しい!
「ユーリ、大丈夫か?」
兄さんが心配そうに俺にそう問いかける。
あまりにも俺が寂しそうにしているからか、兄さんは俺を元気づけようとしてくれている。兄さんもゲルトルートさんがいなくなって寂しいだろうに、こういう人だから異性にもてるんだろうなぁって思った。
そういえばゲルトルートさんがいなくなってからも兄さんはゲルトルートさんのことを思っているようだ。
兄さんのそういう一途なところは良いと思う。
家族や村の人たちから元気づけられて、寂しいからと寂しがってばかりではどうしようもないと気合を入れる。
別れと言っても死による別れではないのだから、きっとまた会えるのだと俺は信じている。……前世の記憶があるからこそ、余計にそう思うのかもしれない。この世界はとても広くて、次の再会が絶対ではない別れもきっと沢山ある。
やっぱりずっと一緒に居たい人とは、ずっと一緒に居ないと。
一度手を離してしまったら、二度と会えない……なんてことがきっとこの世界では沢山あるのだから。
ノアレに追いついて、そしてノアレとずっと一緒にいるために――俺は次にノアレに出会えた時、その先でノアレの手を離さないようにしたいなと思う。
今回の別れは、俺もノアレも子供だからこそ、家の都合や親の都合で離れ離れになった。それは本人の意志なんて関係なしに仕方がないことだ。でも大人になって、自分の意志で全てを決めることになるのならば――その時にノアレに嫌だって言われたどうしよう? ノアレと俺はずっと一緒に居たいけれど、ノアレがそれを嫌がったら出来ないわけだし。
うん、やっぱり次にノアレに出会うまでにもっと強く、そしてもっとノアレが惚れてくれるぐらいの男にならないと!
そういうわけでノアレとゲルトルートさんがいなくなっても、俺は訓練を続ける。相変わらず五感を塞いでの訓練は村人たちには「何やっているの?」って見られるけれどずっとそういう訓練をしているから、周りも慣れているけれど。
それにしても今まで次にノアレに定期的には会えていたので、これからしばらく会えないと思うと俺はちょっと悲しくなる。それに訓練もゲルトルートさんが結構付き合ってくれていたから、一人でずっと訓練をするのも少し寂しい。
兄さんもゲルトルートさんに次に会うためにって訓練はしているけれど、兄さんは魔力がないし、そもそもうちの村で魔力を持っている人っていないし。
だから訓練方法も違う。
これ、俺が転生者で目的をもって訓練しているからアレだけど、もし転生者じゃなかったら魔力を持っているのが俺だけだからってもっと村の中で孤立していたかもしれない。もっと驕っていたかもしれないし。そもそも前世の記憶があるからこその今の俺なので、もし記憶がなかったら俺はこうではなかっただろうけれど。
「……一人でずっと訓練するのも、ちゃんと強くなれているのか不安にもなるなぁ」
一人で黙々と訓練をし、少しずつ強くなっていっていると思うけれど……俺は外の世界を知らないから、自分が井の中の蛙のようなそんな感じなんじゃないかなという気にもなる。
俺はノアレと一緒にいるために、ノアレとこの世界で生きていくために強くなりたい。けれども、そのためには俺には力が足りないから。
チート能力なんて欠片もないので、そういう能力を持っている存在でも出てきたらどうしようか?
俺が転生したことを考えると、他にもこの世界に転生者がいるのならばチート能力持ちみたいなのもいたりするんだろうか……。そういう相手がノアレに惚れたりしたらと思うと怖いし。というか、転生者じゃなくてもノアレは可愛いから惚れられるかもだし。
もっともっと――強くならないと。
なんて思ってちょっと無理をしてしまっていた。
「ユーリ、無理しすぎよ。休みましょう」
ノアレに次に会った時までに――なんて考えて無理をしていたらしい。母さんにそんな風に言われてしまった。
確かに考えてみればノアレとゲルトルートさんがいなくなってか訓練ばっかりしていた。
それで親を悲しませるのはあれなので、訓練ばかりじゃなくてもっとゆっくりしたり、余裕を持つことにした。




