うさ耳くんと、続く別れ ①
ノアレとしばらく会えないことに、俺は寂しい気持ちでいっぱいだ。
今まで毎年、ノアレと会えていた。けれどもノアレと三年も会えない。ノアレはきっとその三年の間に美しく変化することだろう。
ノアレに相応しい男になれるように頑張らないと。
ノアレのことがが俺好きでたまらないから、ノアレと結婚したいから。
今日も今日とて、俺は鍛錬に励んでいる。
ちなみに俺がノアレに勝てるぐらい強くなっていることや、狩りで少しずつ成果を出しているのもあって少しずつ周りの目も変わってきている。冒険者に連れられてやってきた女の子に声をかけられたりしたけれど、もちろん靡かなかった。というか、俺、ノアレと結婚するって決めてるもん。
だからそういう他の女の子は俺には必要ないし。
それにしてもノアレにしばらく会えないのは仕方がないけれど、ノアレに再会した時にノアレが俺に惚れてくれるように強くならないといけない。
ノアレからほっぺたにキスにされたのを思い出しただけで口元が緩む。これ、実際に口にされたらどうなるんだろうか。俺、幸福すぎてやばそうだ。
「ユーリ、今日も訓練しているのか? 前より必死になってないか?」
「だって仕方ないじゃん。ノアレに追いつかないとなんだよ!」
兄さんに呆れた目で見られても、俺はそう言い切った。
ちゃんと家の仕事を手伝ったり狩りで活躍したりというのはしているよ。ただそれ以外の時間はやっぱり遊ぶではなく、俺は学園に通うための勉強をしたり、訓練をしたりとそういうことばかりしていた。
それにしてももうノアレに会いたい気持ちになってくる。でも学園では今までと違って、ノアレと一緒にいられるんだよな。うん、制服姿のノアレとか絶対に可愛い。やっぱり可愛いノアレは学園でも人気者になるんだろうか?
俺は関わったことはないが、この異世界では当然のように王族や貴族と呼ばれる存在がいる。そういう人たちは、無理やり権力を使って好き勝手するような人もいるかもしれない。ノアレがそう言う貴族の犠牲になるとか、そういうのがないように力をつけないと。力をつけられたら、そういう人たちにも一目置かれる存在になれるしな。
強いってことは、この世界にとって特別なことで、強ければ平民からだろうともなりあがることが出来る世界だ。だからこそ強いというだけで、好き勝手する人もいるのだ。そういう人からもノアレを守っていけるように、ノアレの横にいられるようにしないと。
でもそういうことを兄さんとかと話していたら、兄さんには「ユーリも気を付けた方がいい」って言われた。俺は可愛い見た目をしているから、同性に異性にも狙われて権力を使おうとしてくる人もいるかもしれないと。
……俺は自分の身を守るためにも、もっと強くならなければならないのだと実感した。俺だって獣人だから普通の人間の子供よりは力が強いけれども、それでも大の男に押さえつけられたらどうしようもないし。
身体能力強化を使えば大の大人をどうにかできるかもだけど、ずっとは出来ないしな。
俺はまだそういう危険思想の連中に会うことはないけれど、きっと此処が異世界だからこそ、そういう人が日本よりもいる。どうにもならないことを前にどうにもならないと諦めるのは嫌だから。だからこそ――やっぱり強くなるのが一番だ。
俺は子供で、まだ守られている身だ。守られている身から、守る存在にならないと!
そういう決意でいっぱいである。
ノアレは俺よりも一年早く学園に入って、ノアレに手を出す上級生とやりあわないと。俺がうさぎの獣人だからって、侮られたくないから。
でも俺の見た目で侮ってきたら、それで勝利することも出来るとも言えるのか。あえて可愛い仕草とかも学んでいたほうがいいか? 本当に危機的状況だと、そういうので隙を作る方がいいし。結局死んだら全てが終わりだから、死なないようにそういうなんでも磨いた方がいいか。
そういうことに関しては、ゲルトルートさんに相談して進めている。耳の強化もゲルトルートさんに相談して進めているし、ゲルトルートさんにお礼を沢山したいなぁ。ノアレにも勝てたのもゲルトルートさんに助けられてきたからっていうのもあるし。
そんなことを考えながら、ゲルトルートさんといつものように話していたら、
「そうだ。ユーリ。私もそろそろ村から出て行こうと思うの」
と、そんな驚くべき発言をされた。
そういう言葉を言われるまで俺はゲルトルートさんがずっとここにいるようなそういう気持ちになっていた。でもそうか、ゲルトルートさんは俺が四歳の時から此処にいて、もう三年もいる。エルフにとっての三年は短いかもしれないけれど、それでも結構な期間いたのだ。
ノアレとしばらくの別れが来たと思えば、ゲルトルートさんとも別れが近づいている。
それもゲルトルートさんとの別れは、次の再会があるかも分からない別れだ。




