うさ耳くん、世界を知っていく ②
耳や尻尾を触るのに特別な意味があると分かったので、俺は家族以外の耳や尻尾を触りたくても触らないように気を付けている。母さん、兄さん、父さんのは触りまくっているけど。だって家族は良いっていってたし。
ちゃんと理解して触りまくっているのを、兄さんは理解したのか何とも言えない顔をしていた。そして母さんと父さんが「ユーリは番のことも沢山さわりそう」とかいっていた。うん、俺、触っていい人は凄く触る自信ある。もふもふを触るのは凄い気持ち良いし。
まだ一歳というのもあって、一人で家の外には出られない。一人で無理やり外に出るなんて真似も俺はしないので、おとなしく父さんと母さんが家の外に出してくれるのをいつも待っている。俺が外に出られると嬉しそうにするのを父さんと母さんも分かってくれているからか、よく俺を外に連れ出してくれる。とはいえ、一歳という年齢だと色々危険もあるからそのあたりもちゃんと考えてだけど。
外に出られる、それだけでも俺にとって嬉しいことで、新しい世界が広がっていったと言えることだった。赤ん坊の世界なんて、外に出るまでは家の中だけなのだ。この世界には何があるのだろうか。前世とは違うものが沢山あるだろう。そう思うと、沢山のものを見てみたいという好奇心がわいてくる。
そういえばこの村には丁度俺と同じ年の子供はいないらしい。一番近くて三歳上らしい。同じ年の幼馴染とかちょっと憧れていたのに残念。ちなみにその子は兄さんに惚れているのが一歳児の俺にもわかるぐらいだった。時々、兄さん爆発しろという気分になるのは、外の世界に出れば出るほど兄さんってもてもてだというのがわかるからである。
兄さんは、俺にいつも構っている。兄さんと親しくしている子供たちもよく俺の事を覗き込んでいる。俺の事を可愛がってくれている兄さんと、俺によくしてくれている兄さんの友達たち。俺は彼らのことがとても好きだ。
兄さんの友達の子供達には、いろんな種族が居る。個人的には、羊の尻尾とかも凄く触りたかった。でも俺我慢したんだ。手を伸ばしそうには何度もなっていたけれど。家族しか触れないっていうのならば、俺はもふもふの奥さん欲しい。そしたらめいいっぱい触り放題だと思う。そんな願望が沸いた。
それにしてもこの世界って、一夫一妻制なのか、一夫多妻制なのか、それとも多夫一妻制とかもあったりするのだろうか。ファンタジー世界だと、ハーレムとかありそうなイメージ。この村の中では、一夫一妻が主な気がするけど、権力者とかは一夫一妻だったりするのかな。ハーレム……憧れる響きだけど、そんな甲斐性俺にはないだろうし、可愛い奥さん一人でも将来もらえたらそれでいいと思った。
「ユーリ、俺も狩りに参加するんだ」
兄さんがある時きらきらした目でいっていた。兄さん、五歳とかぐらいだと思うのだが、そんな年で、狩りに参加する? と俺は驚いたが、この村では幼いうちにか狩りに参加するようになっているそうだ。でも、俺は多分その年になっても参加しないらしい。……兎の獣人だから、だということがひしひしと伝わってきてなんとも言えない気分になった。俺は狩りにも将来参加していきたいのだけど、難しいのかな。でも、もし兎の獣人が狩りに向かない種族だったとしても折角ファンタジー世界に転生したんだから、俺は強くなりたい。冒険とかにも興味があるし。
「にぃに、がんば」
「俺、頑張る!」
俺の言葉に兄さんは、笑みを零した。笑った顔が父さんにそっくりだ。本当に、兄さんも父さんもイケメンな笑みだ。
狩りからかえってきた兄さんは少しだけ怪我をしていた。村に住んでいる薬師の所できちんと手当はしてきたらしい。その時、母さんがぽつりといっていた。
「白魔法が使える人が居たらよかったのだけど……」
「母さん、小さな怪我だから大丈夫だよ」
白魔法? それは回復魔法みたいなものだろうか。
この世界、やっぱり魔法があるんだ! そう理解して、何だか興奮した。魔法、生で見てみたい。俺も魔法、使えたりするのだろうか。獣人という魔力が少なそうなイメージの種族だから、期待はするべきでもないかもしれないけれど、魔法……使えるのならば使ってみたいってそう俺は思ってしまう。
「まほー」
「まほー」
と、何度も気になって口にしていたら、「あら、魔法って言葉が気に入ったの?」と母さんがにこにこしていた。
気にいったというか、見たいし、使いたいんだ。でも、母さんなら使えるなら俺の言葉に使ってくれそうな気がするし、母さんは魔法が使えないのだろう。この村、魔法使える人いなさそうだし、魔法、しばらく見ることが出来ない気がする。でも魔法ってものがこの世界にあることが分かっただけでも、俺にとって大きな発見だ。
魔法をいつか見て、出来たら使ってみたい。
そんなこの世界での目標がまた増えた。